Stage5:問題点
初めての朝練。ついに、アップダウンコースの森林公園に一行が着き、練習が始まった。
「うひゃぁ…」
桜川と根本は唖然としていた。10%を超える斜度の登り。言葉だけ聞くと楽そうだが、実際に目で見るとその険しさに誰もが驚くものである。百聞は一見に如かずとはこの事だ。
「さっ、行くぞ!」
今川の脚質はクライマー。彼は先陣を切って坂を駆け上っていく。登りにおいても、軽いギアで高回転を維持し続ける。それが彼の、いや、登りにおける理想の走り方だ。
石井もそれに続くが、今川の坂におけるスピードには着いていけない。そしてさらに土谷が続く。
土谷の登りにおける漕ぎ方は、グイグイと踏み込んでいく形だった。現在では、古いとされている走り方である。
そして、一年の2人も、土谷をペースメーカーにしながらついていく。桜川はクルクルと、根本はグイグイとペダルを踏む。
「一年にペースメーカーにされるようじゃ、示しがつかねぇ…。だが練習はまだ続くんだ、ここで体力を使い果たすわけにもいかん…」
と土谷は呟く。
今川は、後ろを振り返って、こう思った。
(大体、誰を登りで鍛え上げるべきかわかってきたな…)
そして、やっと今川が登り切り、下り始めた。少し遅れて、石井も登り切って下る。
「…いくぞっ!」
石井は叫んだ。
遅れていた3人が登り切った。そして彼らが見たものは、強烈なスピードで坂を下り、今にも今川に追いつこうとしている石井の姿だった。
「「「はっ…はえぇ!」」」
3人も同時に下り始めた。レース経験のある土谷は、石井までとは言わないまでも、相当のスピードで下っていく。しかし、下りでハイスピードを出すことに慣れていない2人はあっという間に遅れてしまう。
「追いついたぜ、今川。」
「またいつものパターンだな。…ん?」
と、今川が後ろを振り返ると、そこには土谷の姿があった。
「すまん、遅れた。」
「初練の割にはやるじゃねぇか。」
「俺はレース経験者だぞ?石井。」
「しかし、1年がやはり遅れたな。ま、仕方がないか。これから、みっちり鍛えていくしかないな。」
「せいぜいあいつらが辞めないようにしとけ、今川。」
「わかってらい」
こうして、アップダウンを中心とした森林公園のコースを数周した後、彼らは先頭交代をしながら学校へと戻った。戻ったころには、時刻は8:10となっていた。
「よし、まずはあのコースに慣れることから始めないと駄目だな。放課後も練習だぞ!」
「はい!」
「じゃ、始業に遅れないように!ご苦労様でした!」
「「「「ご苦労様でした!」」」」
初めての朝練は、それぞれの問題点を浮き彫りにして終わった。
レグルスです。
斜度10%の坂。数字だけ見ると確かに楽そうですよね。でもこれが、目の前で実物を見るととても急に見えます。この坂を時速数十キロで下るとなれば、恐怖感は大変なものになります。これを読んでいるあなた、実際に自転車に乗って、坂へ行ってみませんか。
何書いてんだ俺…。俺のヒルクライムの血が騒いでしまったようだ。