Stage4:初練
ついに本格的に始動した自転車競技同好会。そして翌朝、初めての練習が実施されることとなる。
午前6時30分
「入部早々朝練かぁ。ま、運動部だからしょうがないか。」
ロードに跨り、まだ慣れない道を走りながら桜川は呟く。そして、昨日と同じように学校に着いた。
「…まだどの部活も来てないなぁ…。もしかして俺一番?」
少々不安になりながらも、彼は、設けられたばかりの自転車競技同好会の小さな部室へと入っていった。
「…今川キャプテン!石井先輩にえーと…土谷先輩!」
「よっ、桜川。根本はどうした?」
「たぶんもうすぐ来るとお…」
と言った瞬間、ドアの開く音がした。
「おはようございますッ!」
大声を張り上げて根本が言った。
「遅かったな、根本。」
と石井が返す。そして、今川が、
「よぉし!じゃあまだ着替えてない者はすぐにジャージに着替えて!ロード練習始めるぞ!」
と言った後、
「はい!」と一同が返した。
全員が着替え終わった辺りで、またドアの開く音がした。
「「「「「須藤先生!おはようございます!」」」」」
「おはよう。」
「先生、ロード練習の準備が出来ました。伴走、お願いします。」
「わかった。」
「さて、コースの説明をしていなかったな。今からはじめる。
今日から練習に使うのは、ここから10kmほど離れた森林公園だ。」
と言いながら、地図を取り出して指差した。
「そして、ここの森林公園の周回コースを数周する。この中には、10%を越える傾斜の坂がある。練習には比較的向いているコースだ。よし、コース説明終わり!行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
こうして、須藤は駐車場、5人は駐輪場へ向かった。
駐輪場で、石井は今川に小声で話しかける。
「おい、あそこのコースじゃ、1年には結構きついんじゃねぇのか…?」
「そりゃ俺だって承知してるさ。だが、あのくらいのコースをこなせないと、話にならないだろう。」
「…いや、俺の心配はそこじゃない。きつくてあいつらが辞めてかないか、心配なんだ。俺たちはギリギリの部員数で成り立っている同好会なんだ…」
「だからって、練習を緩くするわけにはいかない。俺たちは、勝つんだからな!」
(やっぱ、こいつは自転車に関しては強烈に熱いんだよな…)
ペダルを漕ぐ音が、まだ夜の静けさの残る街に響く。
この時間は、まだそんなに車通りは多くはない。かといって少なくもないが…。
だが、森林公園は中心部からは大分郊外にある。そこに向かえば向かうほど、車通りは少なくなっていった。そんな中、今川が全員に聞こえるように言った。
「よし、先頭交代の練習をするぞ。」
そこですかさず桜川が返す。
「先輩、先頭交代って、なんすか?」
〜レグルスのわかりやすいロードレース講座〜
ロードレースというのは、比較的風の影響を受けやすい競技なんだ。だから、数秒〜数分ごとに、風を受けやすい先頭の選手を交代し合うんだ。これは、味方同士はもちろん、たとえ敵同士であっても、ペースを上げるためにやることが多いんだ。ちなみに、これをわざとしないことを「ツキイチ」と言って、そういった選手は優勝を狙わない、という紳士協定も存在するよ。
よい子のみんな、わかったかな?
〜おわり〜
「へぇ…」
「よし、じゃあ俺たちで手本を見せる。石井!土谷!先頭交代し合うぞ!土谷!前に出ろ!」
「おう!任しとけ!」
土谷はスプリンター。一瞬の力を出すのが得意だが、平地も好きである。
「なぁ根本、先輩のスピードが一気に上がったな。」
「でも、普段はこんなスピード、一人じゃ出せないのに、楽についていけるな。」
「ああ。」
二人にとっては初めての体験。驚くのも至極当然と言えよう。
「さ、着いたぞ。」
石井がいつもの優しい口調で言う。
「よし、早速登りだな。石井。」
と、今川が後ろを振り向くと、そこには唖然とした顔の3人が。
「ん?どうした?1年の2人はいいとして、土谷。お前レース経験者だよな…」
一瞬黙りこくったあと、土谷が口を開いた。
「俺…登り苦手というか、嫌いなんだよなぁ…」
偶然見かけて勧誘した男の正体。それは、平地と一瞬の力に全てを賭ける男だった。
レグルスです。
やっと書けたっ!自転車を書くのを心待ちにしていた男レグルス!
さて、次回はヒルクライム特集(嘘)というわけで、さらに張り切ってしまうかも…




