Stage3:集う5人
1年が二人入り、そして2年からも一人が入り、設立することとなった自転車競技同好会。ついにはじめてのミーティングが行われる。
「じゃあこれで自転車競技同好会は設立ということでいいね?」
「はい。ありがとうございました。」
「土谷卓…か。一応入部してもらったけど、実力はどうなんだろうな。見た目では、強そうだったし…」
と石井が呟く。
「まぁ身長こそ低いが、ガタイはいい。おそらくスプリンターだな。」
唐突ですが、これより
〜レグルスのわかりやすいロードレース講座〜
をお送りします。
スプリンターとは、主にゴール手前数100mや、コースの途中に設けられる「スプリント賞」の時、一瞬で大出力を出すことで勝ったり、ポイントを稼いだりする選手のことを言うんだ。陸上でいう短距離走の選手だね。
このタイプの選手の多くはガタイがいいんだ。
よい子のみんな、わかったかな?
〜おわり〜
「でもまぁ良かったな今川!これでやっとお前の夢も叶ったわけだ。良かった良かった!」
「いや、まだ夢は叶ってないぜ。」
「え?」
間が空いた後、今川は口を開いた。
「夢は、全国制覇に決まってるだろ、石井!」
放課後
「よし、部員は全員集まったな。まずは、自己紹介だ。左から、クラス、名前、身長、体重、ロードバイクの有無、レース経験について言ってくれ。」
「1年D組、桜川悠。身長167cm、体重53kg。ロードは持ってます。レースは出たことありません。」
「1年C組、根本靖行。身長175cm、体重75kg。同じくロード持ちです。桜川君と同じで、レースには出てません。」
「じゃ、次は2年だ、土谷から。」
「わかった。2年C組、土谷卓。身長173cm、体重79kg。レース経験あり。スプリンター。」
「じゃ、次は石井。」
「副キャプテンの石井龍夫だ。2年A組。身長180cm、体重67kg。レース経験あり。ルーラー。」
〜レグルスのわかりやすいロードレース講座〜
ルーラーとは、平地を得意とする選手のことを言うんだ。スピードマンと呼ばれることもあるよ。全体的に大柄な選手が多いんだ。平地といっても、ロードバイクはスピードが出るから、空気抵抗は大きい。その抵抗に耐え切るだけの力が必要なんだ。
よい子のみんな、わかったかな?
〜おわり〜
「最後にキャプテンの俺だ。2年A組、今川祐太。身長176cm、体重63kg。レース経験あり。クライマー。」
〜レグルスのわかりやすいロードレース講座〜
クライマーとは、登り坂を得意とする選手のことを言うんだ。主に小柄、軽量の選手が多いけど、大柄でも軽量なら問題ない。高い負荷が長い時間に渡ってかかり続けるので、それに耐えるだけの持久力が必要とされるんだ。
よい子のみんな、わかったかな?
〜おわり〜
「あとは、顧問の先生で、『書類上は』監督も兼任することになる、須藤先生だ。先生、お願いします。」
「須藤だ。これからよろしく。」
「須藤先生は、ロード練習の伴走もして下さる。俺がよろしくお願いしますと言ったら、その後に復唱すること。」
「はい!」
「よろしくお願いしますッ!」
「「「「よろしくお願いしますッ!」」」」
須藤は内心心細かった。彼は、今まで「体育会系」というものに縁がなかった。学生時代はずっと文化部で、教師になってからも、運動部の顧問をするつもりはなかった。それが、いきなり運動部の顧問、しかもあくまで書類上だが、監督にも就任してしまった。
(本当に俺が、彼らの面倒を見切れるのだろうか…)
そんな気持ちだけが募るばかりだった。
「俺たちの最終目標はもちろん、全国制覇だ!うちの茨城県の江川学園や、隣の咲山学院、そして、今高校ロード界のトップに立っている奈良の翔邦、東京の清明大付属、京都の京美も全部倒して、俺たちがトップに立つ!それが俺の目標だ。」
もちろん、一年の二人には、今川が並べた高校の名前はあまり聞いたことはない。だがしかし、相当に強大な存在であることは感じ取れた。
「よって、明日からはロードで通学してくれ。そして明日は午前6時半から朝練だ。サイクルジャージを持っている者は出来るだけ持ってくること。なければ、学校のジャージでいい。ヘルメットはみんな持ってるな。コースは明日の朝説明する。わかったか。」
「「「「はい!」」」」
「よし、今日は解散!ご苦労様でした!」
「「「「ご苦労様でした!」」」」
下校中、今川と石井の二人はコンビニで買い食いしていた。
「今日はやけに張り切ってたな、今川。」
「当たり前だろ、やっと夢が叶うチャンスが来たんだ。今はそれに向かって進むだけ。まぁ、問題は、あの二人が練習について来れるかだが…。」
「大丈夫さ、あいつらだって自転車が大好きで入ってきたんだ。きっとついてきてくれるさ。」
「よし!明日からは練習だ!うちの高校のどの部よりも練習するぞ!」
(こいつ、いつもは「優等生」だけど、自転車のことになると熱いんだよな…俺もだけど。)
夜
今川は自室にいた。
彼はネットで、春の選抜で優勝した選手の写真を眺めていた。そして呟く。
「やっとお前を倒す準備が出来たぜ、山口。」
レグルスです。
次回でやっと自転車が書けます。早くネーム決めないとな。