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第513話 南北抗争10(大型魔獣召喚)

エルメス帝国の兵士達がバルン地方との間で、突然できた壁に驚く。


「なんだ! この巨大な壁は!?」

「朝起きたら、いきなりできてたぞ!」

「昨日は無かったよな?」

「ああ、一晩でできたみたいだ……」

「聖帝国はこんなことが可能なのか!?」

「ああ、聖帝は神の御業が使えるらしいからな」

「俺達、とんでもない存在を相手にしてるんじゃないか……」

「だよな……ははは」


 壁の出現により、バルン地方から北は事実上、聖帝国の統治領域となり、帝国は本国(初期領地)以外で、全ての支配地域を失うこととなった。これにより帝国は大陸の一地域である小国に転落し、兵士達(本国の正規兵)の動揺が急速に広がったのである。


「もう帝国は終わりだ……」

「海も陸も空を抑えられ、俺達はこの場所で封鎖されてるようだ」

「このままだと先は無い。もう、帝国軍から離脱しよう」

「だけど、どこへ行くんだ?」

「聖帝国しかないだろ」


 帝国の威信は完全に失墜し、軍の規律は乱れ、我先にと聖帝国へと鞍替えする者が続出したのである。これまでは地方の兵士(支配地の徴兵)、本国の下位兵士(正規兵)が大部分だったが、ついにに本国、中枢の正規兵(幹部正規兵)にも及んだのである。


 これは事実上の帝国軍崩壊と言って良かった。普通の国なら、状況を判断し、白旗をあげるところだが、帝国は普通では無かった……


――――

――――――


 メス地方、北部の住民達が上空を見上げる。空には百体ものワイバーンが我が物顔で飛んでいる。


「うわあ、空にワイバーンが飛んでるぞ!!」

「あれは聖帝国から飛んできた奴か!?」

「あれだけ大量のワイバーンを操るなんて、力の差は歴然だ」

「巨大な壁の出現といい、ワイバーンの大群といい、聖帝国は圧倒的じゃないか!」

「もう帝国はダメだな」


多くの民も帝国の終焉を口にするようになっていた。


――――

――――――


 ここは帝国城のある帝都である。以前は人で賑わっていたが、今ではすっかり人が減り、寂れてしまった。誰しもが帝国の終焉を予感し、多くの者がこの地を後にしたのである。


 そんな中、残った古参兵士が躍起になって、逃亡者達を捕まえようとする。ほとんどの兵士達はとっくに離脱したが、帝国への忠誠心(?)が強い一部の兵士だけが盲目的に上からの指示に従っている。(実際は、近くに魔賢者の使い魔が飛んでいるので、操られている可能性が高そうだ)


「貴様! 逃亡を企てていたな! 連行する!」

「何か証拠でもあるのか!」

「怪しいことが証拠だ!」


 以前から、皇帝の指示により、民の強制連行は続いていたが、最近は常軌を逸し、疑わしき者は全て連行している状態だ。彼らにとっては、正直、理由などどうでもよく、ノルマ(命令)を果せれば、それで良かったのだ。そして、城に連行された者はその後、二度と出ることは無かった。


――――

――――――


 皇帝城の地下の大広間、薄暗い部屋で蝋燭だけが怪しく灯り、皇帝キース・サンドラ(魔王憑依中)は下卑た薄笑いをする。


「ふふ、最近は周囲から不安、恐怖の想念がわき起り、いい糧となっている。奴(主人公)もなかなかいい仕事をしてくれることよ」


すると、脇にいた魔賢者エルライナが口を開く。


「ワイバーンを使って、民に不安、恐怖を煽るのは愚策でしたね。我らの糧になるとも知らないで」


「それに供物もだいぶ増えてきた。これなら大型の魔物を召喚できるだろう」


「……一度、お聞きしようと思っていたのですが」


「なんだ?」


「魔王様が直接、聖帝に手を下されることはお考えではないのでしょうか?」


「ああ、本当なら我が手で直接、奴の息の根を止めたいところだが、我が魔体は前回、消滅してしまったからな。あれは長年、魔力を練り込んでつくったものだから、そう簡単にはいかん。今、正面対決したら五分五分ぐらいだろうか? 今、死ぬわけにはいかんのだ」


「魔王様は慎重なんですね……」


「当り前だ。奴のせいで、世界の果てに飛ばされ、消滅する寸前までいったんだからな」


「それで、召喚をされてるわけですね」


「魔王にとっての戦いは配下の魔物を使役し、敵を圧倒するのが王道よ。魔王たる者、のこのこ自分から出るものではない」


「なるほど……」


「……と言うのは建前でな。本当は前回の戦いで配下の魔人がいなくなってしまったから、魔物を召喚するしか選択肢が無いんだがな」


「しかし、これまで魔物を送り込みましたが、うまくいきませんでした。ワイバーンに至っては、逆に敵に操られる始末です。大丈夫でしょうか?」


「ふふふ、今度の魔物は最強レベルだから、心配するな。一体で国を滅ぼす力さえある」


「それは楽しみです。それまで力を蓄えておきましょう」


皇帝と魔賢者は薄笑いを浮かべるのであった。


――――

――――――


~テネシア視点~


 今、ワイバーン軍団と一緒にエルメス帝国領内の上空を飛行しているところだ。最近はこいつらと空の散歩するのが日課になっている。見た目はいかつい連中だし、人間から見たら恐怖の対象だろうが、こうして何度も一緒に空を飛行したり、巣に帰って餌をあげたりを繰り返していると、自然と愛着もわいてくる。まあ私と同じ竜系統というのもあるけどね。


「今では可愛いペットみたいなものだな。ははは」


 イレーネと交代でワイバーンを連れ出しているが、今日はエルメス帝国の中心部まで飛んで行こう。郊外はほとんど人がいなくなってしまったので、面白くないからな。低空飛行でいって、エルメス帝国の住民達を威圧するのが目的だが、その住民達がいないのでは話にならない。


「よし、お前ら、今日はもっと中心部まで行くぞ!」


クアアアアア――! クアアアアア――! 


「おお、分かるのか!」


 あるじから、【魔物使役】アイテムを渡されているが、最近はほとんど発動していない。使わなくても、よく言う事を聞いてくれるんだ。以心伝心という奴かな。魔獣であっても、ずっと一緒にいると気持ちが伝わるのがよく分かる。


 最初は竜系統の種族特性かと思ったけど、あるじとイレーネも似たようなことを言っていたから、気持ちは種族を超えて、伝わるものだと改めて思うようになったんだ。まあ、そうで無ければ、あるじやイレーネと行動を共にすることはないよな。考えるまでも無かった。



 ◇    ◇    ◇



「おいおい、本当かよ……」



帝国の中心部まで来たが、人が全然いない。


 そう言えば、マキシ将軍やイグナス教会代表が会議で言ってたが、もの凄い数の移住希望者が検問所へ押し寄せてるそうだ。防壁に検問所を設置して、帝国の支配地から、避難民を救助するのは、これまでも散々やってきたが、帝国の中心部(本国)からの移住者も受付けたのは、ちょっと心配だったんだよな。


だって、敵の本丸じゃん。いいのかよと。


でもあるじが――


「いや、大丈夫、入る前にだいぶ悪想念は吸っといたから」


と言ってたんで、受入れることになったんだ。


悪想念を吸う?


 どうやら、あるじはスキルで悪想念とやらも吸収できるみたいだ。しかし、そんな物騒なもの吸収して大丈夫なのか?


 あとで聞いたら、「憎しみ」「殺意」を吸収してるとか。確かに検問所で大した混乱もなく、どんどん受け入れできてるところを見ると、本当みたいだな。正確に言うと、検問所は壁のすぐ外側(帝国側)にあるが、ここだと、壁の【認識偽装】スキルにより、聖帝国に敵意がある者を失明状態にしてしまう。だから、あるじはご丁寧に、そこに入る前に、悪想念を吸っていた。だいぶ国境侵犯してたけど、今更か。


しかし――


「本当にあるじの力は底を感じることができないな……。長年、一緒に過ごしているが、本当に凄い人だと思うよ。さすが、私が惚れただけはあるよな……。なんてな(くふふ)」


あるじの凄いところを楽しげに懸想けそうしてたら、目的地が見えてきた。


「おおっ! 城だ!」 


 中心部を飛んでいたら、ついに城が見えてきたぞ。あれが皇帝城だな。聖帝城にそっくりだから、すぐ分かる。しかし、城の近くだというのに、人がいない。まるで廃墟のようだぞ。


「これじゃ、飛行しても、あまり意味がないな。そこそろ引き返すか……」


 そう思って、帰路の方向へ向きを変えると、後方、城のあたりから、変な気配を感じる。


「んん? なんだ、この気配は?」


ゆっくりと後ろを振り返る。


すると――


皇帝城の前に、そいつは現れたんだ。


「な、なんだ、あの巨体は!? あれは魔物か!?」


今までの魔物と比べ、桁違いの大きさだぞ!

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の言動を対立勢力側から見るととんでもない主人公ですね。  主人公    「人の憎しみ、恨み、呪い、殺意等のエネルギーを糧にして魔力を高める」    「その力を俺様に従う者に分け与える…
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