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第509話 南北戦争6(魔獣召喚)

「どうなっておるっ! また長距離弾ミサイルが消えたぞ!」


「これで何度目だ! 一体、どうなっている!」


皇帝キース・サンドラ(魔王憑依中)は軍事施設内で怒声をあげていた。


「ふざけるな! やっておれんわああああああ!」


流石の魔王も本性あらわにキレていた。


 それもそのはず。最新兵器である長距離弾ミサイルをいくら製造しても、完成したタイミングですべて消えてしまうのだ。これを製造するには貴重な素材と労力を要するし、何より、魔力を集める必要がある。それが全部、無駄になってしまうのだから、憤るのも無理はない。


 しかも、長距離弾ミサイルを製造する度に、傾きつつある帝国の収支をさらに圧迫するのだから、たまったものではない。実体経済で見るなら、国家破綻に一直線に向かっている状況である。


 皇帝(魔王憑依中)にとって、もはや国家破綻など眼中にないが、長距離弾ミサイルの製造が継続困難に状況になり、苛立ちを隠せなくなっている。


「ううぅ、もう、こんな物を製造するのは止めよう……消耗するだけだ……」


すると、後方でつき従っていた魔賢者エルライナが口を開く。


「しかし、それでは、一体、どうしたらいいのでしょうか?」


「我は魔王ぞ。魔王らしく行動することに決めた。奴が人間ということで、この世界の戦い方に合わせ過ぎていたわ」


「…………」


「魔界から魔獣を召喚するぞ。力を貸せ」


「魔獣召喚ですね。一体、何を召喚されますか?」


「ベヒモスとワイバーンだ。ベヒモスで陸上から攻め、ワイバーンで空中から攻めよう」


「おお! それはいいお考えです。ベヒモスの巨体で壁を壊し、ワイバーンの高度で結界を超えるわけですね」


「以前なら、我一人で難無くできたが、この地は負の念が少なく、魔力補給がままならん。召喚の準備を頼むぞ」


「了解しました」


 こうして、エルメス帝国はルカレシア聖帝国への攻撃手段を長距離弾ミサイルから、魔獣召喚へと変更したのであった。一見、前向きに見えるが、これは帝国が戦争継続するための資金、物資、人員が不足し、追い込まれた末の苦肉の策でもあった。


 以前の戦いで魔王は魔獣大群暴走スタンピードを破られており、それゆえ魔獣召喚には積極的で無かったが、この状況では選択肢が限られていた。


 追い詰められると、為政者が勝ち筋の無い玉砕覚悟に走るのは世の常なのかもしれない。


――――

――――――


 それから数日後、ここはバレシア地方とバルン地方の境界にある防壁の上、今日もルカレシア聖帝国の兵士達が南方(エルメス帝国)へ監視をしている。


監視中の兵士達が雑談する。


「前回の検問所襲撃は酷かったよな……」


「ああ、でも、聖帝陛下、テネシア元帥、イレーネ宰相のお蔭で助かったよ」


「本当になぁ。あのお三方は規格外の強さだよ」


「帝国の最新兵器も、魔竜も相手にならなかったしな」


「帝国はどんどん勢いが無くなっているし、もうダメだろ」


「そうだな。こちらに来る避難民が途切れることもないし、もうあの国は終わりだ」


「もう、攻めてくることもないだろ……なっ!」


「んん? どうした?」


「あれを見ろ!!」


「何だああ!!! あれはああああ!!!」


 

兵士達の目の前に魔獣の群れが現れる。

地上に大きな四つ足の魔獣、空に翼を広げた鍵爪と牙のある魔獣だ。

それが大量に現れて、こちらに向かって押し寄せているのだ。


――――

――――――


目の前を、陸と空から魔獣が迫っている。

陸、空ともそれぞれ、数は百ぐらいだろうか。

それが一斉にこちらに来てるのだから、兵士達に緊張が走る。


「大砲を撃て―――!!」


ドオオオオオオオ―――ン!!

ドオオオオオオオ―――ン!!

ドオオオオオオオ―――ン!!


 兵士達が防壁の上から、大砲を魔獣に向けて放つ。普段はスリープ砲弾を実装してるが、魔獣相手のため、殺傷力のある砲弾に装填変えし、次々と火を噴いている。


「あの魔獣は何だ?」


「陸上はベヒモス、空からのはワイバーンだろう」


「ああっ! ワイバーンが境界上空を越えていきます!」


「くそっ! 防壁の結界を超えやがったか!」


「ダメだ! 本部(聖帝城)に報告しないと!」


 空を飛ぶワイバーンがの大群が簡単に防衛ラインを突破したが、その後、ベヒモスの大群が防壁に衝突する。



ドカアアアアアアアア!!!



「ぐおお! 防壁の結界に衝突したぞ!」



ドカアアアアアアアア!!!



「うわああ! 結界は持つのか!?」



 べへモスは四つ足の巨大な怪獣であり、その姿はサイに似ている。見ると全身固い皮膚に覆われており、頭部に大きな突起のようなものが付いている。ベヒモスが結界に体当たりし、頭部の突起で結界を壊そうとしてる。



ドカアアアアアアアア!!!



「至近距離から大砲を撃て!」



ドオオオオオオオ―――ン!!

ドオオオオオオオ―――ン!!

ドオオオオオオオ―――ン!!


「ダメだ! こいつら大砲が効かないぞ!」


「応援を早く呼べ!」


ベヒモスの大群の猛攻により、防壁の結界が大きな衝撃を受けていた。


――――

――――――


~アレス視点~


 マキシ将軍から念話でワイバーンが防衛ラインを超えて、北方に向かっているとの連絡を受け、僕、テネシア、イレーネの三人で対応に向かっているところだ。


 ワイバーンの位置は【探索】スキルで把握してるので、中間地点の上空で退治することになりそうだ。移動は転移一発でも良かったが、ワイバーン程度なら慌てる必要もないと思い、『転移飛行』というテクニックを使った。これは飛行しながら、前方への転移を繰り返す合わせ技だが、テネシアとイレーネがよく使うそうで、僕も真似をしてみた。


「ほう、これは面白いな。ただの飛行より何倍も速く移動できる」


「そうだろ? 慣れたら、もっと速くなるよ」


「よし、【転移】、【飛行】、【転移】、【飛行】、【転移】!」


 凄いな。これ。軽く音速を超えてるんじゃないか? 実際の移動は【転移】の割合がほとんどだから、そこまでの空気抵抗は無いが、昔のアニメで見た連続ワープ航法を思い出すよ。ふふふ。


「ああ、ワイバーンが見えてきましたね」


見たところ、百体ぐらいかな? 


「みんな、やっちまうかい?」


「空中だし、地上への被害も避けられそうですね」


テネシアがワクワクしてるし、イレーネは冷静に状況を楽しんでる感じ。

まあ、ワイバーン百体程度なら、彼女達で十分おつりが来るだろう。


だけど――


「んん? なんだか、あのワイバーンから、あまり敵意を感じないんだけどな……」


 昔の僕なら、ワイバーン百体がこちらに向かっているなら、容赦無く、殲滅対象としていたが、ここ数年、悪想念エネルギーの【収納】を続けたせいか、悪想念に敏感になったのだ。敵意や戦意もこれに該当するが、ワイバーンから、それらをほとんど感じない。


「これは、召喚されて、無理やり使役されているなぁ……」


それなら、『拡声器』を取出して――



<<「【魔物使役】! ワイバーン達よ! 僕の指示に従え!>>


<<「進行を止めよ!」>>



すると、百体のワイバーンが一斉に進行を止め、その場で停止飛行をする。


「おお! ワイバーンが止まったぞ!」


「陛下の言うことを聞くようになりました!」


 さて、止めたのはいいけど、この後、どうしよう? 一番いいのは元に返すことだが、エルメス帝国に返したら、また、こっちに来るだろう。


 実は僕がワイバーン達の敵意に疑問を感じたのは、途中の町や村を襲わなかったからだ。もし襲っていたら、テネシアとイレーネに殲滅させていただろう。ワイバーンは口から火を吐く危険な魔獣だが、火を吐いてすらいない。


「しかたない。ワイバーンはいったんルカレシア地方の空き山に待機させておこう」


 実はこうしている間にも、防衛線(防壁)の結界に、ベヒモスが衝突してるのは【千里眼】でチェックしているが、遠隔で結界を多重結界に強化してやった。僕のスキルは視界の及ぶところであれが、距離は関係無いからね。


【千里眼】で結界を見て、そのまま多重結界にしたが、さしものベヒモスもあれは破りようがないね。一つの結界を破っても、次から次に新しい結界ができるのが、僕のオリジナル多重結界だ。そのうち疲れてダウンするだろう。


「それじゃ、ワイバーンをルカレシア地方の空き山に連れていくから、その後、ベヒモスの方も対応しよう。テネシアとイレーネは先に行って、兵士達を鼓舞しておいてくれ。僕も後からすぐ行く。ベヒモスに実砲弾を使ってるようだけど、スリープ砲弾に切り替えるよう指示しておいて」


「……あるじ、ワイバーンとベヒモスを飼うのかい?」


「いやあ、その気は全然無いんだけど、行先もないし、応急措置だな」


「……アレス様、随分、お優しくなりましたね」


「そうかな?」


「そうですよ」「そうだぜ」(二人とも微笑む)


 昔の僕なら、魔獣イコール処分対象だったろうが、不思議とそういう気持ちは軽減されている。だが、それはテネシアとイレーネも同様みたいだな。



 ◇    ◇    ◇



 その後、ベヒモス達も【魔物使役】スキルで大人しくさせたが、やはり行先に困り、やむを得ずルカレシア地方の空き地に連れていくことにした。ワイバーンとベヒモスには決めた範囲から出ないこと、人や亜人を襲わないこと、大人しくすることを命じたが、これだけの数の魔獣だ。餌の準備が必要だ。


う~ん、えらいものをしょい込んでしまったぞ……


近隣に住む亜人種の住民達にも十分説明をしておかないとな。


ワイバーン百体、ベヒモス百体か……


冒険者ギルドなら、SSランク案件(国際災害級)間違い無しだ。

まあ、ここ(聖帝国)に冒険者ギルドは無いけどね。ははは。



※参考※

SSランク(国際災害級)

 Sランク(国家災害級)

 Aランク(地域災害級)


冒険者ランクの詳細は

第331話(総ギルドマスター来訪)

をご参照下さい。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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