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第428話 タイタス・ディオネの進路

タイタス(テネシアの長男)、ディオネ(イレーネの長女)、シルエス(メリッサの三男)は同じ年の異母兄弟ですが、幼馴染であり、友人のような関係です。

ここは王宮の敷地内、咲き誇る花壇を見ながら、二人が話込んでいる。


タイタス「最近、シルエスの奴、政治の話をしたり、政治の本を読んだり、急に様子が変わったよね」


ディオネ「そうね……何かあったのかしら」


タイタス「父上アレス母上テネシアも忙しそうにしてたし、何かあったのは間違いないね」


ディオネ「そう言えば、母上イレーネも急に領地が増えたとか言ってたわ」


タイタス「領地か……」


ディオネ「どうしたの?」


タイタス「いやさ、急に一番上の兄上、国王陛下から用があるって連絡が来たんだよ。僕と君と話したいって」


ディオネ「えっ、私も?」


タイタス「シルエスは急に政治に関心を持ちだしたし、両親は忙しくするし、国王陛下から呼ばれるし……とにかく会ってみよう」


ディオネ「そうね。それしかないわね」



タイタスとディオネは周辺の動きにいやでも関心が高まるのだった。


――――

――――――


~ライナス視点~


<王城・執務室>


「やあ、よく来てくれたね」


 タイタスとディオネの二人が執務室に来てくれたので、丁重に出迎え、普段は重役達が座る椅子に座らせた。何度か会っているが、こうして面と向かって話すのはあまり無かったんじゃないだろうか。僕は二十六才、向こうは十才、年も離れているし、住まい(王宮)も別棟だ。お互いの父は同じだが、母が違う。異母兄弟とは言え、他人に近い感覚かな。それでも同じ王族という親近感は強くある。


 年が離れた相手にどう話したらいいだろう? こちらが目上なのは当然だが、上から目線というのもな……。ただ命令するなら、それでいいかもしれないけど、今回の目的はそうではない。今後、彼らと良好で長い付き合いをしたいので、その見極めだ。


それなら丁重に対応するのが無難だな。


ライナス「君達とはこういう形で話すのは初めてかな?」

タイタス「はい、そうだと思います」

ディオネ「私も初めてです」


ライナス「今日来てもらったのは、君達と仲良くしたいというのが一番の目的なんだよ」


タイタス「国王陛下と仲良くですか?」

ディオネ「……」


ライナス「僕の父上、君達の父上でもあるけど、前陛下はテネシア元帥とイレーネ宰相という心強い側近を持っていたんだ。僕も二人の事は尊敬している」


タイタス「……」

ディオネ「……」


ライナス「父上がこの国の領地をうまく治めることができたのは、テネシア元帥とイレーネ宰相の力が大きかったのは間違いない」


タイタス「……」

ディオネ「……」


ライナス「それで僕も二人のような側近が欲しいと思っているんだけど、王族で一番、適しているのは君達、二人だと判断したんだ。しかも君達はテネシア元帥とイレーネ宰相の子供だからね。僕にとっても大変心強い」


タイタス「……いいお話だと思いますが、考えさせて下さい」

ディオネ「……私も同じです。両親にも相談したいです」


ライナス「ふっ、当然だよね。君達の進路に関わる話なんだから、じっくり考えたらいいよ。どの道、君達はまだ十才で、成人まで時間がある。その間、検討したらいい」


タイタス「この話はシルエスにもしてるんですか?」


ライナス「ああ……彼は別の進路を考えてるようなので、声をかけなかった」


タイタス「そうなんですか……」


 あれっ? 少しがっかりしたような雰囲気だな。ひょっとしてシルエスと同じ進路を希望してたのかな? でもどの道、卒業後はみんな分かれてしまうだろうに。


ライナス「王立学園は楽しいかもしれないけど、いつか卒業は来る。そして卒業後はみんな、それぞれの道に進むんだ。人それぞれ進む道が違うからね」


タイタス「それは分かってますが……」

ディオネ「……」


 そうか。この三人は仲がいいんだな。シルエスと一緒に王立学園に通っているのは知っていたけど、学生気分が抜けてない様子だな。というか、まだ学生だから当たり前か。でも、それを上から目線で指摘すれば煙たがられてしまう。ここは気にしないでおこう。


ライナス「とにかく、今は学園生活を楽しんで、将来のことを考えてくれたらいい。でも僕が君達と一緒に仕事をしたいという事は忘れないでね」


 本当は領地運営のこと等、言いたいことは山ほどあったが、彼らにはまだ早いだろう。追々、話をしていくとしよう。


――――

――――――


~タイタス視点~


<第二王宮・応接間>


 ライナス王から将来の側近就任について、話をされたけど、まだ現実的でない感じ。将来のことなんて遠い先だと思っていたのに、ああいう話をされると少し混乱する。


タイタス「ディオネはどう思う?」


ディオネ「冷静に考えたら、国王陛下からのお誘いなんて、いい話なんでしょうけど……」


タイタス「なんか、引っかかるんだよな」


ディオネ「それは、ここにシルエスがいないからじゃない?」


タイタス「そうだな。僕らは小さい時からずっと一緒だったからね」


ディオネ「じゃあ、今度、シルエスとも話しましょうよ」


タイタス「そうだな。それしかないな」


ディオネ「両親にはどうする?」


タイタス「もちろん相談するけど、今までの感じから、もう両親にも話が来てるような気がするよ」


ディオネ「……そうかもしれないわね」


タイタス「とにかく三人で話そう」


ディオネ「そうね」


――――

――――――


<王宮の裏庭>


~ディオネ視点~


 ここは王宮の裏庭、人通りも少なく、内密な話をするのには丁度いい場所。学園から帰り、そのまま三人でここに来た。


シルエス「二人ともどうしたんだい?」


タイタス「それはこっちのセリフだよ。お前こそ最近、様子が変じゃないか!」


ディオネ「何かあったの?」


シルエス「……」


タイタス「進路のことだろ?」


シルエス「……まあ、そうだね」


ディオネ「実は私達もライナス兄様から、将来、側近にならないかって言われたのよ」


シルエス「ああ、そうだったんだ……」


タイタス「でも、シルエスは別の進路に進むって聞いたから」


シルエス「まだ、正式じゃないけど、確かにある進路を検討してるところだよ」


ディオネ「それは私達にも言えないの?」


シルエス「ごめん、口止めされてるんだ。でも、いずれ分かると思う」


タイタス「そうか、それならしかたないな」


シルエス「悪いな。でも進路が違っても、君達との仲は決して変わらないからね」


ディオネ「それを聞いて安心したわ」


タイタス「そうだな。三人の関係は大切にしたいよな」



この後、三人で手を取りあてって、友情を確かめ合う。

張り詰めた空気が溶け、いつものように気軽な感じで話す。



タイタス「それにしてもシルエスって、進路の話を冷静に受け止めてるよな」


シルエス「まあね。僕は上に四人の兄弟が一緒に住んでいて、兄弟がそれぞれの進路に進むのを見てきたし、進路が違っても家族の絆が維持されてるのも見てきたからね」


ディオネ「そう言えば、お兄様、お姉様はみなさん、それぞれの道に進んでるわね」


シルエス「進路は人それぞれってことだよ。たまたま僕らは小さい頃からずっと一緒だったから、一緒にいるのが当たり前みたいになってたけど、卒業後は違う進路になりそうだね。でも、住んでる場所は変わらないだろうから、そこまで気にする必要もないよ」


タイタス「住んでる場所が変わらないってどういうこと?」


シルエス「僕らは父上から転移アイテムを頂いてるから、それを使えば、距離の制約を受けないってことだよ。アレク兄様なんて、ギルフォード王国の王太子になっても、ほぼ、毎日、王宮に戻ってくるからね」


ディオネ「父上や母上が転移で遠方を行き来してるのはずっと見てきたけど、私達も練習した方が良さそうね」


シルエス「転移スキルは僕ら王族の必須アイテムみたいなものだよ。これがあれば、三人がどんな進路になっても、いつでも会えるんだから」


ディオネ「そう考えたら、進路の心配が大分少なくなってきました」


タイタス「そうだな。いつでも家に帰れる安心感かな?」


シルエス「そのためには転移の練習をしないとね」



 転移アイテムは父上が開発された物だけど、家族や友情の絆を維持するサポートにもなるのですね。こんな凄い物をつくられた父上に感謝です。取り敢えず転移の練習をしときましょう。こればかりは学校では教えてくれませんからね。それにいくらやり方を教わったとしても、自分でコツを掴まないとダメ。今度、母上イレーネに付き添って練習させてもらおう。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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