第426話 ライナス王の執政2
~ライナス視点~
会議を続けているところ。海軍の状況は分かった。
次に陸軍について確認しよう。
ライナス「陸軍は何人いるの?」
カイル「四千五百人ほどです」
ライナス「昔に比べると増えたんですね」
カイル「一見、多そうに見えますが、平時は平和維持活動という名目で公共事業、主に土木建築作業を訓練の一環として実施してますので、そこまで多くもありません。特に最近は電気工事の仕事が増えてますので、むしろ不足気味なんです」
ライナス「軍人に土木作業はなんとなく分かるけど、電気工事までするんですか?」
カイル「はい、聖王陛下の方針で、技術力の向上を掲げてらっしゃいましたので」
ライナス「技術力の向上?」
カイル「はい、土木建築もそうですが、電気の仕事も今後、尽きることはございません。軍人がこれらの技術を高めれば、国の発展に繋がりますし、彼らの職能向上にもなります。職能さえ向上していれば、たとえ軍人を辞めても食べていくことができます」
カイル「なるほど……」
やはり、父上は先の先まで考えて行動されていたんだな。
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~ライナス視点~
王宮に戻り、我が子、リベルトを抱く。
「お~よちよち、可愛いね~」
夕方、ぐったりして帰るが、我が子の顔を見ると、疲れが吹っ飛ぶ。
「あなた、お疲れ様」
「ああ、君もお疲れ様」
ラーシャ(王妃)も会議メンバーに加え、同席してもらっているが、これには理由がある。一番の理由は「一緒にいたいから」……ははは、まあ、これは置いといて、お互い早く「国王夫妻」に慣れたいからというのが大きいね。「習うより慣れろ」と父上によく言われたけど、本当にその通りだ。
僕は王にならなければいけないし、ラーシャは王妃にならなければいけない。王冠を被って、玉座についても、それは単なる外見上の話だ。本当の王と王妃になるには、二人で場数をこなしていくしかない。そのためにも今はどっぷり実務に浸かろう。
ラーシャは王妃の仕事以外で、魔法学園の教員(たまに放送学園の教員も)もしてるので、ずっと一緒というわけではないけど、一日の多くの時間を共に過ごせるのは嬉しい。
今後の課題は広い領地運営を分担して手伝ってくれる候補者選定だな。シルエス、タイタス、ディオネはまだ十才、成人まであと五年かぁ。
そう言えば、シルエスの奴、最近、休日になると、ちょくちょく出かけるよな? どこに行ってるんだ? きちんと正装してるから、遊びじゃないのは分かるが? 急に難しそうな政治の本を読みだすし。この前も僕に政治について聞いてきたんだ。
「お兄様、王政ってどう思いますか?」
だってさ。どう思うも何も、その中で生活してきたし、それが当たり前の環境にいたから、二の句が継げなかったよ。考えたこともなかった。当たり前過ぎて。
父上もシルエスとコソコソ話てる感じだし、
あの二人、絶対何か隠してるな……
ふっ、まあ、いいけどさ。
父上の隠密行動は今更だし。
それより、早く領地を分担したい!
「うえええ~ん!」
抱っこしてるリベルトが、少しぐずる。
「お~い、リベルト~お前も早く大人になれよ~お父さんを助けてくれよな~」
するとラーシャが笑みを浮かべながら――
「ふっ、何言ってるんですか、まだ生まれたばかりですよ」
「そうなんだけどさ。今だと父上の気持ちがよく分かるよ」
偉大な父上から引き継いだものは、あまりに大きくて、将来のことを考えたり、今、目の前のことを考えたり、毎日、思案しっぱなしだな。父上の背中はまだまだ遠い感じだ。
父上は見た目こそ、若返り術で、僕と変わらないけど、子供の僕は完全に中高年として、認識している。だって、中身は完全に中高年だからね。ふふふ。
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~アレス視点~
<王都の離宮・応接間>
ここは王都の離宮、ミアとサラ、そして、メルーシャの住まいだ。午後のこの時間はお茶を飲みに、しばしば顔を出すのが日課となっている。まあ、昔からここは僕と側近達の会合場所だったから、特別な空間になってるよな。
僕「どうだい、ライナスはしっかりやってるかい?」
ミア「ええ、しっかりされてますし、一生懸命です」
僕「それは良かった。何か問題は発生してないかい?」
ミア「特に大きな問題は……ああ、そう言えばライナス陛下がシバ領の労役について、指摘されてました」
僕「何をだい?」
ミア「鉄は貿易の主要品で、シバ領の鉱山が要になると。でも、それは囚人の労役で成り立っていて、将来、囚人が減ると、不安要因になるんじゃないかと」
僕「囚人が減る?」
ミア「ええ、治安や生活環境の向上、そして何より教育改善の影響で、悪事を働く者が減って、それにより囚人が減るという予測です」
僕「悪党が減って、囚人が減るなら、最高じゃないか!」
ミア「そうですよね。陛下なら、そうおっしゃると思いました」
僕「本当にそうなるなら、嬉しい限りだが、実際はそう簡単にいかないと思うよ」
ミア「そうでしょうか?」
僕「人は常に悪事を考える部分がある。どんな善人でもだ。というより完全な善人はこの世にはいないな。常に善と悪がせめぎ合っている。それをギリギリでコントロールしてるのが人間だ」
ミア「まあ、そうでしょうね」
僕「だから、悪事はなかなか減らないだろうが、もし囚人が減るなら、それなりの対応をすればいいだけだ」
ミア「どう対応されますか?」
僕「シバ領は意図的に簡単な道具を使い、重労働になるようにしている。それは体で重労働を感じ、反省し、更生につなげるためだ」
ミア「つまり、道具を改善すれば、人数が減っても大丈夫なわけですね」
僕「その通り。農民達の農作業を楽にした農業アイテムと逆のことをシバ領でやってるからね」
ミア「どんな道具を使えばいいんでしょうか?」
僕「さすがに囚人に農業アイテムのような作業を楽にするチートアイテムは渡せないが、魔法を使わなくても、技術力向上で道具の改善はいくらでも可能だろう」
ミア「ふふ、陛下だと答えがあっという間に出てきますね」
僕「他には無いかな?」
ミア「王領の代官から領地内の補修工事の依頼が来てますが、対応が遅いと代官が嘆いてました」
僕「ライナスはしっかり対応してるんだろう?」
ミア「はい、連絡を受けて、土建省に早期対応するよう指示をされたようですが……」
僕「それだと何か月もかかるよな。でもそれが普通なんだけどな」
ミア「ライナス陛下から、代官達に説明されるそうですが……」
僕「悪いが代官達にも意識改革してもらう必要はあるな。僕の時が普通ではなかった」
ミア「ええ、そうですね」
僕「ただ、それだけだと、悪く思われかねないから、ライナスも改善が必要だな」
ミア「? と言いますと」
僕「時間がかかるのは手続きのせいだ。なら手続きを改めればいい。例えば王領内の小規模補修は代官→国王→大臣→役人→役人→補修部隊でなく、代官→国王→大臣→補修部隊にして、後から大臣に事後報告させるとかね。小規模補修で何人も役人を経由するのは時間の無駄だ。それとあらかじめ、地区ごとに補修部隊を決めておいて、現地巡回させたり、すぐ動けるようにするとかね。補修部隊は王軍隊を積極的に使えばいいだろう」
ミア「なるほど、では早速……」
僕「ちょっと待って! すぐライナスに言わないでくれよ。彼はまだまだ若いし、成長する。ここでウンウン唸って頭を使えば、自力で道を開けるようになるはずだ。少し考えさせよう」
ミア「確かにそうですね。助け船のタイミングも考えておきます」
わずかに開いた扉の隙間から視線を感じる。
僕「おっ、メルーシャか。こっちにおいで」
メルーシャ「お父様~」
メルーシャを抱き上げる。
僕「メルーシャの勉強は順調かい?」
ミア「はい、家庭教師の方が来てくださりますので、助かります」
僕「そうか。マール教会にも行ってるんだよね?」
ミア「時間を見つけてマザーの講義を聞きに行ってます」
僕「小さい時にああいう教えを聞くのはいいことだもんな」
ミア「……もし、すべての人が小さい時に、マザーの教えを聞けたら、悪事を働く者はもっと少なくなるんじゃないかと思います」
僕「確かに小さい頃の教育は重要だよな……」
「鉄は熱いうちに打て」という言葉があるけど、教育と教会か……
少し考えておこう。
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