第402話 魔法研究所(午前の講義)
魔法研究所の構成員
所長 主人公
副所長 レネア(主人公の次女)
職員 リーベ(姉)、ロッツ(弟)
研究生 ジリーネ(ドワーフ)、クーシャ(狐獣人)、
レスティ(ダークエルフ)、ルイーズ(人間)
~レネア視点~
教室で四人の研究生に向けて、講義を開始したが、四人(ジリーネ、クーシャ、レスティ、ルイーズ)だけでは勿体ないと思い、職員であるリーベ・ロッツ姉弟にも少し後ろの席で受講してもらうことにした。彼らも魔法適性が高いし、業務上、魔法知識を向上してもらいたいのもあるが、こうすれば、彼らが講義内容を記録し、今後の教科書作成作業も兼ねてもらえるだろう。
これが父上がよく言う「一石二鳥」というものかな?
言葉の意味は一回の投石で鳥を二羽仕留めることから来てるみたいだけど、父上は「一石二鳥」どころか、「一石三鳥、四鳥」ぐらい平気でやるから、むしろ、これぐらいが標準(当たり前)みたい。う~ん、見習わないと。
ここで重大発表!(なんてね)
レネア「皆さんには将来、ここの教職(先生)の仕事に就いてもらいたいのです」
ジリーネ「えっ! 私達が教職ですか?」
レネア「ええ、現在は研究生という立場だけど、知識と技能を身に着け、それを後進に伝えてもらいたいのです」
クーシャ「それは夢がある話ですね……」
レネア「教員になれば、きちんと王国から俸給も支払われますし、空いた時間は自分の研究に打ち込むこともできます。ぜひ頑張って下さいね」
レスティ「頑張ります!」
他の研究生も頷く。
現在、魔法研究所は研究生(四人)が少ないが、教員(父上と私で二人)はもっと少ない。それで事務職員であるリーベとロッツにも受講してもらい、教えられるレベル(教員)まで向上させようと判断した。数年後には魔法学園からたくさん入所して来ますからね。今のうちから準備しないと。
リーベとロッツもよくついてきてくれてる。最初は私の助手で募集したが、現在は研究所の職員になり、将来は教員も兼任してもらう方向となっている。当然、職員より教員の方が俸給は高いので、彼らもやりがいはあるだろう。
レネア「それでは今日は魔法アイテムについて講義します。そもそも魔法アイテムとは何だと思いますか?」
クーシャ「ええと、魔法を発生させる道具ですか?」
レネア「そうですね。アイテムから魔法が発生してるように見えるから、そう思うのもしかたありませんが、本当はアイテムから魔法が発生してるわけではないんです」
ジリーネ「ええ! そうなんですか!」
ルイーズ「それでは魔法アイテムとは一体何なのでしょうか?」
レネア「魔法アイテムは魔法を発生させる触媒、きっかけなんです。魔法発生には魔力が必要ですが、魔法アイテムの発動でその魔力が集まってくるんです」
レスティ「つまり、魔法アイテムは魔力を集める道具ということですね?」
レネア「その通りです。魔力はこの世界に遍在してます。人でも生物でも物体でも、万物に魔力はありますからね」
ルイーズ「万物に魔力があるんですか……」
レネア「そうなんです。広範囲で微弱ですが、魔力は世界中にあります」
ジリーネ「でも、普通に存在する物では魔法は使えないですよね?」
レネア「世界中に広がっている魔力は非常に薄いものですから、そのままでは魔法は発動しないです。それを魔法アイテムが集めて、力を発現させているんです」
一同「「「なるほど~」」」
本当はこの世界に薄く広がっている魔力だけでは、大して力が出せないので、他の世界からも魔力の供給を受けているのですが、混乱するといけないので、そのことは追々説明していきましょう。
レネア「例えば、この光魔法アイテム(照明器具)も作動させると光りますが、その光の魔力は周辺から集めてくるのです」
レスティ「魔力を周囲から集めるということですが、アイテムを作動させた人には影響はないんですか?」
レネア「ふふ、いい着眼点です。実は魔法アイテムを作動させる時の起動エネルギーは作動させた人の魔力を使います。焚火を起こす際の種火みたいなものですね。でもいったん発動したら、周囲の魔力を使いますから、作動させた人に大きな影響はありません」
ジリーネ「でも不思議ですね。魔法が使えない人でも、魔法アイテムがあれば、使えるようになる。どんな原理なんでしょう?」
レネア「最初に言っておかないといけませんが、世の中には魔力の無い人はいません。魔力は生命力を支えるものでもあり、極端な話、魔力がゼロになると生きられません。そして、一般の人は魔力を持っていても発動できないだけなんです。それを訓練無しで発動させるのが魔法アイテムです。魔法を使うとは潜在的な魔力を表に発現させることと言っていいでしょう」
クーシャ「普通の人が使えない魔法を簡単に使えるようにするのは凄いですね」
レネア「確かにそうですね。しかし、それにより誰でも簡単に強い魔法が使えてしまうと、悪用される危険性があったため、長年、伏せてきたのです。しかし、今回、一定の条件でアイテム化することを認めました」
クーシャ「どんな条件ですか?」
レネア「大きな力を使わない生活魔法に限定することです。これなら先ず安全でしょう。当然、武器や危険物は禁止です。それに魔法アイテムを発動させる際に多少は発動者の魔力を消費しますから、魔力を大きく使わないアイテムが重要なんです」
皆さん、真剣に私の講義を受けてくれている。これまで自分が研究した内容をこうして発表できるのは嬉しいことだ。今までは父上に話してきたけど、あれも話す練習になっていたんだろうな。
レネア「そう言えば、皆さんの服装は随分お洒落になりましたね。本当に魔法研究所の研究生って感じになりましたよ」
ジリーネ「こんな上品な服を頂いて申し訳ないです」
ルイーズ「本当です。でも、ちょっと恥ずかしいかも」
レネア「いえいえ、ここは城の壁の中だから、一目で立場が分かる格好というのは大切なんです。貴族は貴族らしい格好、衛兵は衛兵らしい格好、役人は役人らしい格好という具合ですね。服装で身分を証明してるようなものです。一応、皆さんには身分証を渡してますが、一目で分かるというのは検問でも楽なんです」
ルイーズ「確かにそうですね。私も冒険者をしてた時はそれらしい格好をしていましたし」
クーシャ「レネア先生、質問です」
先生? あっそうだ、私のことだ。つい先日まで学生だった自分が、「先生」と言われ、少し、恥ずかしい。最初は「副所長」と言われたけど、授業中に聞いてて、あまりに固い感じがしたので、「先生」呼びにしてもらってたんだ。
年齢だけで見たら、私は十五才、研究生の皆さんの方が年上だ。職員のリーベとロッツも私より少し上ですからね。しっかりしないと。
レネア「はい、何でしょう?」
クーシャ「現在、私達四人しか研究生がいませんけど、こんな貴重な講義を私達だけでは勿体ない気がします」
レネア「そう言ってもらえると嬉しいです……」
ジリーネ「もっと研究生を増やす予定はないんですか?」
そうだよね。ここは千人も応募があったんだから、せめて十人は欲しいところ。
レネア「前回は一斉募集でしたが、現在は随時募集に切り替えて、魔法研究所の研究生を募集してるところです。いい人がいたら紹介して下さいね」
本当は大陸全土で募集したら、もっと人が集まるんだろうけど、ここは王立機関だから、父上の政治的判断で他国へ配慮してるんだよね。私はいい人材なら他国からでも、どんどん集めればいいと思うけど、父上は「他国目線で考えたら、自分の国の者を引き抜かれたら、いい感じがしないだろう?」だって。
う~ん。外交って難しい。
でも、実際に我が国を動かしてる人材はテネシア元帥、イレーネ宰相、ミア内務大臣にしても元を辿れば、他国出身が多いんだよね。バハナ将軍なんてエルメス帝国出身なんだから。
そう言えば、父上は連邦の元首でもあったんだっけ。
普通なら、そういう地位についたら、地位を利用して連邦全土からどんどん人材を募集しそうだけど、父上は逆に配慮(遠慮?)しまくりだ。でも家族のみんなにこのことを話したら、「それは父上の言う通りだ」「バランスを取っている」なんだよね。ライナスお兄様は我が国の王太子、ミローネお姉様はギルフォード商会の副会長、アレク兄様はギルフォード王国の王太子、だから微妙な政治的判断も分かるのかな?
自分は家族のお陰で好きな魔法研究に打ち込めてきたけど、成人し、今や魔法学園と魔法研究所を経営する立場にまでになっている。でも経営者は好きなことだけやってればいいというわけにはいかないみたい。私もみんなと一緒に経営者として必要なことを学んでいかないとね。
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