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第351話 軍隊再編

引き続きバハナ将軍回です。


~バハナ将軍視点~


 私がロナンダル連邦に来てから、しばらく経過したが、この国は私が元いた国とは、状況がかなり違うことが分かった。私は元々、エルメス帝国の軍人であり、帝国の命を受けて、前線でずっと戦ってきたが、改めて振り返ると、本当に軍事優先主義だった。そして、軍事力を強化するために、武器の研究にも余念が無かった。その結果、生まれたのが、銃と大砲で、これにより圧倒的に優位に戦えた。


 それと最新の武器は皇帝陛下の発想を基にしているとの噂もあった。皇帝陛下初め上層部は秘密主義であり、謁見の間でも、御簾みす越し、かつ、側近を通してでしか話さないので、そのお姿、お声も多くの者には不明だ。


 またエルメス帝国は人間至上主義であり、亜人等、他種族を蔑視し、もしくは奴隷にしている。私は純粋に軍人として、業務に推進してきたが、このあたりはあまり意識していなかった。だが、ロナンダル連邦に来て、多くの亜人、他種族が普通に活動しているのを見ると、これまでの常識が覆される気持ちだ。私の直属の上官はテネシア元帥だが、彼女は亜人種の竜人だ。エルメス帝国なら、絶対にありえないことだろう。いても組織の末端だ。他にもいろいろ違いがあるが――


両国の違いを比較すると、こんな感じだろう。


ロナンダル連邦 開けた王制 種族平等 平和優先 道徳優先 自然と共存

        連邦加盟七カ国は協調


エルメス帝国 秘密主義 人間優先 軍事優先 技術優先 開発優先

       帝国内は本国と被征服地の上下関係


 私が派遣されたダルト国もエルメス帝国により、武力制圧され、今は属国として、本国に納税している状況である。あのクスル提督も、元々、ダルト国の人間ではなく、本国から派遣されただけなのだ。だから内心はダルト国のことなど、まったく気にかけておらず、手柄を立てて、本国に戻ることしか考えてなかった。


 エルメス帝国側にいた時は、その環境に従っていたが、一旦、出てしまうと、いかに、いびつな体制だったのか、分かってきた。ロナンダル王国、ロナンダル連邦に来られて、本当に良かった。


 あっちは常にピリピリ、緊張状態で、戦闘の世界、こちらはゆるやかで、落ち着いて、平和な世界だ。同じ世界でこの違いは一体なんだろう?やはり指導者の影響が大きいのだろうな。差があまりに大き過ぎて笑いが出てくる。ふふふ。今後とも、こころよく受け入れてくれた聖王陛下についていこう。


 そう言えば、総司令官殿が実は国王陛下と知った時はかなり驚いたが、連邦各国の代表たる聖王陛下でもあると知った時はさらに驚いたものだ。本当に聖王陛下には驚かされてばかりだな。


 ◇    ◇    ◇


普段から気さくに話される陛下なら大丈夫だろう。

今日は陛下に直にお願いに来た。(エルメス帝国なら絶対に無理!)


<ギース領・王城>


「陛下、恐れ入りますが、お願いがございます」

「んん、なんだい?」


「はい、海軍の居場所がギースの郊外、内陸側の王軍隊訓練基地になっておりますが、海軍にしては、あまりに内陸過ぎると思われます。もっと海側に施設があると助かるのですが……」


「ああ、確かにそうだね。王軍隊訓練基地は広い施設だったから、訓練用かつ一時的に考えていたんだ。ん~そうだな。もう海軍もできたことだし、君のような優秀な将軍もいるんだから、ちゃんとした施設があった方がいいだろうな」


「ありがとうございます」

「場所はギースの軍港の近くでいいかな?」

「はい、軍船が停泊してますので、あの付近が最適です」

「なら、ギースの軍港の近くに海軍施設をつくるとしよう」


軍事施設を建造するなんて、莫大な予算に、工期も必要だろう。

それを即決とは……さすが、国王陛下だ。


「施設は王軍隊訓練基地と同じタイプでいいかな?」

「はい、十分でございます」

「ふふふ、なら楽だな」(小声)

「……」(今、楽と聞こえたような)


「では、今から、候補地に行くとしようか」

「?は、はい!」(えっ!今から?)


「手を出してくれ」

「こうですか?」

「【転移】!」


――――

――――――


<ギースの軍港>


「うわあっ!!!」

「ギースの軍港についたよ」


な、なんと、一瞬にしてギースの軍港に!

これが陛下のお力か……す、凄い……


「場所はあのあたりの空き地でいいかな?」


陛下が港から近い平坦な空き地を指さす。


「ええ、そうですね。いいと思います」

「じゃあ、ここに施設をつくるとしよう」

「今からだと急いでも二、三年後ぐらいですかね?」

「はははは、そんなに時間はかからないよ」

「え?そうですか、でも、これだけの広い敷地に大きな施設だと……」



<<「【複写】!」>>



突如、目の前に王軍隊訓練基地と同じタイプの施設が現れる。


「えええええええ!!な、な、こ、これはああ!!!」


「王軍隊訓練基地は【複写】情報が入っていたからね。それを出すだけだから、一瞬だ」


な、なんと数年以上かかると思った海軍施設建設が一瞬で完了してしまった……


「陛下……貴方様は一体……」


「初めてこれを見た人はみんな君みたいに瞳孔を開いて驚くし、言葉も詰まるよね。まあ、しかたないんだけど、でもね。これが、特別な力なんだ。申し訳ないが慣れて欲しい」


「わ、わかりました。私の中の常識が音を立てて崩壊しそうです……」


――――

――――――


 先日の陛下による海軍施設建設の作業(?)はあまりに凄かった。思い出すだけで、動悸が早くなる。このようなお方がいる国を一時とは言え、攻めようと検討していた過去の自分が恥ずかしい限りだ。今日は王都で軍関係の御前会議を開催するということで、呼ばれているが、少し緊張する。必要があれば意見具申していこう。


<王都・会議室>


御前会議、出席者は国王陛下、テネシア元帥、イレーネ宰相、ミア内務大臣、

そして、バンタル軍事大臣、カイル将軍、そして私(バハナ将軍)だ。


アレス「本日は軍関係の制度改革についてだ。先日、バハナ将軍を新規に迎え入れ、海軍が軌道に乗ってきたし、戦力も増強してきた。この機に今後の方針を決めたいと思うが、皆の考えはどうだろうか?意見を求めたい」


 ほう、ここは国王自らが議長で参加するのか、トップの顔が見えるのはやはり健全な感じがする。エルメス帝国では皇帝の顔さえ不明だったからな。部下に対しても一方的命令で終始してたし。


カイル「バハナ将軍の加入に合わせ、私の職位も将軍になりましたが、これを機に全体の役職も改めた方がいいのではないでしょうか?」


アレス「例えば?」


カイル「元帥、将軍はそのままでいいですが、その下位です。以前は私が隊長でしたので、私の配下を隊長、副隊長、部隊長等にしたいと思います」


アレス「うん、それでいいんじゃないかな?皆はどう思う?」


エルメス帝国ではもっと細かい階級制度があったけど、

考えたら、あれもどうなのだろう?

やたら細かい階級分けは上下間の軋轢になるし……

それに上の命令が絶対というのはクスル提督の件で懲りた。

もう少し階級を減らしてフラットにするのもいいかもしれないな。


アレス「バハナ将軍はどうかな?」


バハナ「私のいた国では、こちらと比べると、かなり細かく階級が分かれていましたが、あそこまでする必要はないかと思います。カイル将軍の意見に賛成します」


アレス「そうだな。名称なんて、いつでも変更できるんだから、もし不都合があれば言ってくれ。とりあえずカイル案でいこう」


凄い。国王陛下が将軍の意見を取り入れてる……

エルメス帝国なら、絶対にありえないな……


アレス「次に二人の将軍だが、予定通り、カイル将軍を陸軍、バハナ将軍を海軍とする。それぞれの本部は陸軍が内陸のドット領、海軍が海側のギース領でいいかな?」


一同「「「意義な―――し!」」」


バハナ「一点、お伺いしたいことがございます」


アレス「なんだ?」


バハナ「先日、空を飛ぶ大きな物体を見たのですが、あれは一体なんですか?」


アレス「ああ、あれは飛行船だ。連邦各国の移動手段で使っている」


バハナ「あのような物は見たこともございません。あれの軍事利用は検討されないのですか?」


アレス「……確かにあれを軍用で使えば、一方的に敵地を蹂躙できてしまうだろうね……」


バハナ「やはり陛下はそれがお分かりでしたか」


アレス「うん、だからこそ、飛行船の軍用は禁止してるんだよ」


バハナ「……なるほど」(陛下らしいお考えだ)


思案顔をしていたら、陛下から、さらに聞かれる。


アレス「何か考えがあるのか?」


バハナ「はい、飛行船の平和利用には賛同します。ただ、エルメス帝国は軍事を尊ぶ国であり、強い国が弱い国を侵攻して当然だと教えられます」


私の一言で場の空気が少し重くなる。

でもエルメス帝国の状況も知ってもらいたい。


アレス「酷い教えだな……」


ミア「確かに酷いですね」


テネシア「私も力は尊ぶけど、弱い国を侵攻して当然とは考えないな~」


イレーネ「国によって、考えはかなり違うのですね」


アレス「それは分かったけど、それと飛行船に何か関係があるのか?」


バハナ「エルメス帝国は弱い国には強くでますが、強い国は警戒します。この飛行船の存在を知らせれば、警戒して、攻めてこなくなるかもしれません」


アレス「でも飛行船は軍用で使わないぞ」


バハナ「軍用で使う必要はありません。その存在を見せつけるだけで効果があるでしょう」


アレス「どういうことだ?」


バハナ「もし、再度、向こうから軍船で攻めてきたら、大型の飛行船をその上空に浮かべるだけで、戦意を喪失させると思います。私なら絶対に戦いません」


バンタル「要は威嚇ということですな」


バハナ「その通りです」


今度は陛下が思案顔をする。そして――


アレス「それだけで尻尾を巻いて逃げてくれるなら、確かに楽だな。但し、こちらからは絶対に攻撃しないし、飛行船に武器は持たせないからな」


バハナ「帝国が力押しでくるのは自分の方が強いという自信があるからですが、その前提として、技術の優位性があります。飛行船のような技術は帝国にはありませんので、見たら自信を無くすはずです」


アレス「なるほどな……それなら、海軍に飛行船を渡すので、運用演習してみてくれ」


バハナ「はい、ありがとうございます」


アレス「実は陸軍にも飛行船は渡してるが、せいぜい移動運搬用に使ってるぐらいなんだ。陸海共同で飛行訓練してもいいだろうな」


バハナ「それは助かります」


 私の意見が採用されて良かった。飛行船を初めて見た時は本当に衝撃的だった。いまだにどういう原理で空を飛ぶのか不明だが、間違いなく威嚇効果はあるだろう。あの国が自分より進んだ技術を見て、どう反応するか見物だ。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逆に帝国は飛行船研究して強くなりそう。
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