第35話 ギース領着任
本日、ギース子爵領、領主邸に到着した。領主邸の使用人だが、全体的に見て、まあまあの対応に見えなくもなかったが、一部、まともに挨拶もできない者がいたため、すぐ人員の刷新をすることとした。一言で言えば、たるんでた。
「バイアス、引き続き、子爵領、領主邸の管理を頼む」
「了解しました」
王都、子爵邸の執事、メイドは優秀だったので、相当数連れてきた。あちらは不在にすることが多く、人員過剰だったため、こちらに移して丁度いいぐらいだろう。王都の旧男爵邸は返しても良かったが、王都での居宅があった方が便利らしいので、今後は王都に出向いた際の宿泊用にしようかな。人数は五人となったが、ほとんど屋敷の管理だけだから大丈夫だろう。向こう(王都)の新しい執事はバイアスの意見を聞いてビスタという若手にした。
「これで領主邸は良しと。それにしても前の領主はどうしたのだ?」
「なんでも怠慢常習者で、引き継ぎも放棄したらしいです……」
そんなことしていいのか? まあ、そんな奴から引き継いでもロクなことはないだろうから、書類と実情を突き合わせていくしかないな。
「ミア、書類の確認と整理を頼む」
「はい、分かりました」
今回、島からミアを連れてきた。実はミアは前にいた国で高い教育を受けていて、臨時代官に指名することにしたのだ。この世界では読み書き計算ができるだけでも希少なんだよね。その代わり、ミアの薬草採取、薬草畑の管理は島のスタッフに任せてきた。緊急時の回復薬の備蓄に目途がたったのも大きい。
ちなみに回復薬の備蓄には【複写】スキルが活躍した。通常なら一本の回復薬を作成するのにも相当な時間を要するが、【複写】スキルなら一本が最大千本になる。このスキルを使用した時のミアの表情が忘れられなかった。
「テネシア、イレーネ、領内を回ろう」
「分かった」
「行きましょう」
<冒険者ギルド>
「ギルド長はいるかな?」
「ご用件は何でしょう?」
「ギース領主、ギルフォード子爵が来たと伝えてくれ」
「えっ! 少々お待ち下さい」
その後、ギルド長室へ通され、挨拶する。
「ご連絡を頂ければ、こちらからお伺い致しましたのに」
「こちらのギルドは初めてですが、状況はどうですか?」
「港町なので、港湾関係の依頼が多いです」
「海賊討伐依頼も来てますか?」
「来てますが、なかなか達成されないですね」
「港町に海賊への協力者はいそうですか?」
「それは何とも言えないですね……」
「治安が良くないと聞きましたが」
「もっと取り締まりを厳しくして頂きたいです」
「分かりました。協力していきましょう」
「よろしくお願いします」
話した感じでは、ここのギルド長は新しい領主に少し警戒してる感じだったが、まともなようだ。依頼掲示版を見ておくか。
「主、海賊の討伐依頼があるぞ」
「達成できてなくて報奨金がつり上がってますよ」
「Aランク、地域災害級の案件か……」
そのうちやるか。三人で目を合わせ、含み笑いをした。
さて、町を回ろう。しばらく歩くと路上で数人の男が喧嘩をしている姿が見えた。通行人もチラ見するだけで、素通りする。こういうのが日常の光景なのだろう。さて、始めるぞ。
「おい、何をしてる?」
「なんだ、テメー、うぎゃ!」
テネシアのケリが腹部に直撃、男がその場に倒れた。
「もう一度聞く、何してる?」
「だから、なんだ、貴様、うぎゃ!」
今後はイレーネの蹴りが男の脇腹に入る。
「俺は領主だ、喧嘩してる理由を言え!」
「え! 領主!」
男達が全員逃げようとしたので、残りも一撃ずつ入れて無力化した。こいつらどうしょうか。とりあえず衛兵に突きだすか。いったん【収納】。
<衛兵の詰め所>
「今日から着任した領主だ」
「えっ! これは領主様」
「どうでもいいが、昼間から酒か」
「いいえ、これは……」
「とりあえず責任者を出せ」
「これは領主様、いかがされましたか? 衛兵隊長のミットです」
「ここは昼間から隊員が酒を飲んでるのか?」
さきほどの赤ら顔の衛兵を目の前に突きだす。
「……すみません」
「町の治安を守るため、ちゃんと仕事をしろ!」
「面目ありません」
「次回、見つけたら牢送りだからな!」
「……」
「それと先ほど町で喧嘩していた男達を捕縛した。ここの牢に入れてくれ」
「了解しました」
その後、一瞬、外に出てから男達を取り出し、牢屋まで連れていった。
「牢屋が空っぽだな。ちゃんと仕事しなよ」
「すみません」
この後、衛兵所で威圧しまくった。彼らの改善を期待しよう。
「また来るからな。しっかり仕事しろよ」
その後、三人で船着き場、市場、商店街、路地を巡回したが、絡む奴、喧嘩する奴がいたので、その度にボコって、収納していった。夕方に衛兵所によると先ほどの衛兵がすっ飛んできた。
「狼藉者がいたから、牢に入れろ」
今度はあらかじめ外で【取出し】していたので、スムーズに回収されていった。
「また来るからな」
夜になるとますます治安が悪くなったが、闇の連中の行動が活発化するので、判別しやすいし、すぐ暴力をふるってくるので、反撃しやすくなった。結局、一晩中、ボコって【収納】しまくったが、百人以上は捕まえただろう。
「主、面白かったな」
「魔物に比べると、人間は遅いし弱いし、手加減に気を使いました」
「さて、荷物を衛兵所に渡して帰るか」
翌朝、衛兵所に百人以上の暴漢達を引き渡したが、牢屋が溢れかえってしまった。衛兵隊長に牢屋の増設と町の巡回を命じたが、一晩で大量に捕縛した事実に驚愕し、僕らに恐れを抱いた。
「領主様はお強いですねぇ。流石です」
「領主様のお陰で港町の治安が良くなりました!」
なんて、衛兵隊長に言われたが、本来それは君達の仕事だからね。しばらくは意識改革のために気合を入れてやる必要があるな。
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