第1914話 教育番組~結婚論6~
続きです。
同棲について、さらに論を進めよう。
「同棲は婚約の前後で行うものだが、結婚を前提にする以上、
婚約後の方が望ましい。その方が両家も受け入れやすいだろう」
結婚は両性の同意により決まるものだが、それでも両家の同意を取る方が望ましいのは変わらない。二人がどう思おうが結婚により家と家のつながりができるわけだから。個人同士だけの話じゃ済まない。それに相手を親にも見てもらった方がいい。自分が見落とした点をアドバイスしてくれるケースがある。岡目八目でね。
但し、毒親なら話は別。親であってもろくでもない親なら、話す必要はないし、何なら縁を切ってもいい。縁切りと言っても、わざわざ面と向かってそう言う必要はない。ただ離れ、意思疎通をしなければいい。残念ながら世の中にはそうした方がいい人がおり、それが親というケースはある。
前世の同棲はふしだらなイメージが強かったが、それは結婚の意思を示さず、単に恋愛の延長、もっと言えば色欲を貪るためにするケースがあったからだ。セフレや愛人などはまさにそう。ふしだらな関係ゆえ両家に話していないケースもあるだろう。この同棲と僕の提示する同棲はまったく違う。
前の世界の同棲 色欲を満たす 互いに流される
この世界の同棲 色欲を制限する 互いに引き締める
「同棲で大事なのは互いにより深く知ること、チェックすることだ。お見合いでもある程度知り、チェックできるが、いかんせん表面上のことに留まりやすいからね。綺麗にしつらえた外面だけでは中々本性まではチェックできない。そもそもお見合いでは気に入られることに主眼を置いてるから、相手のチェックは行き届かないだろうし」
先にチェックを始めたら、相手から嫌がられ、「次回はもう結構」になるのが、お見合いだ。お見合いだけではチェック不十分。だが、最初から根掘り葉掘り聞いたら、その時点で相手は嫌になる。それは関係を構築してからの話だ。逆に関係を構築したらチェックを積極的にする。
パネルを提示する。
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お見合い&デート 基本情報の確認と関係構築
同棲 深く知る
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基本情報は、お見合いで相手に渡す釣書(自己紹介書)に書かれている。氏名、生年月日、住所、学歴、職歴、家族構成、趣味などだが、この他、離婚歴や子供がいるなら、それも含まれるし、借金や犯罪歴などのネガティブな情報も出してもらう。ポジティブな情報だけ出し、ネガティブな情報を後出ししたら、それだけで信用を失う。病歴(障害含む)、食習慣、三道楽(飲酒、博打、風俗)なども最初に確認した方がいい。他がどんなに良くても、その一点だけで致命傷になりかねない。
「お見合いと同棲は目的が違うんですね?」
「そう。お見合いで互いの基本情報を知り、信頼関係を築くが、それだけではまだ不十分。より深く切り込んでいくのが同棲だ。ここで本格的に互いのチェックをする。信頼関係ができたとはいえ、チェックすると嫌がられる可能性はあるが、それでも関係を維持できるかをチェックする」
信用してる相手なら、チェックを受け入れる。
チェックを受け入れないとしたら、まだ、そこまで信用してないということ。
チェックは不信だが、不信を乗り越えて信用を得、高めることができる。
信用という善想念は不信という悪想念を経験し、それを反転させることによって得られるものだ。何もないところにいきなり信用が生まれることはあり得ない。大して問答せず、いきなり「あなたを信用する」という人がいたりするが、そういう場合も周辺から情報を聞くなどしてチェックしているものだ。ケースによっては本人に聞くより、まわりに聞いた方が正確な場合もあるからね。
そういうこともせず、いきなり「あなたを信用する」というなら、それはチェックを面倒くさがっているだけだ。そして、そういう人に限って、結果を出さないと「信用したのに」と責めてくる。これは信用したのではなく賭けただけ。信用は自分がすることであり、他人を責めるものではない。たとえ他人が信用を毀損させるようなことをしたとしても、それを含めて、その人を信用したのは自分だ。自分のチェック不足に原因がある。
「チェックというのは評価ですか?
お見合いの時は避けるように言われましたよね」
ふふ、気が付いたな。
「そう、お見合いの段階では、まだ信頼関係構築中なので本格的な評価・チェックは早い。そんなことをしたら、そこで関係は終わってしまいかねない。だから、一定の関係を築いた上で、評価・チェックをする。結婚したい相手なら腹の中を明かせるが、まだ会って日数がなく何とも思ってない相手に対し、それはできないからね。但し、先程言ったように、チェックするにしても言い方というのはある。極力、相手を傷つけないように、不快にさせないように。あと、これも大事だな」
パネルを提示する。
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相手に聞くなら
先に自分の情報を開示する
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これはお見合いの時もそう。
「『僕は〇〇なんだけど、君はどうかな?』という風にね。こうすると相手も答えやすくなる。相手に聞くばかりで自分のことを話さないとしたら不誠実だ。この時期になると相手が聞きたそうなことを察することができるようになるから、相手が聞く前に話すといい。そうすれば相手からの信用はさらに増すだろう」
夫婦はもちろんそうだが、ありとあらゆる人間関係は対等だ。例えば就職の面談をした場合、採用担当者が応募者に根掘り葉掘り質問するパターンが多いが、それはいいとして、そこで終わったらマズい。その後でいいから、応募者が採用担当者に質問するべきだ。
雇われる前だからといって卑屈になる必要はなく、また雇われた後も卑屈になる必要はない。対等な関係として双方向のコミュニケーションを取るべきだ。もし採用担当者がそれを嫌がり、一方向の面談を強いるなら、そこは入っても、そういう扱いとなるだろう。なので地雷除けとして質問は絶対にするべきだ。それに対し、答えないのは論外だが、仮に答えても、誤魔化したり、いい加減なことを言ったり、露骨に不快になるようなら止めておいた方がいい。酷いのになると「なんで、そんなこと聞くんですか? そんな質問すると印象が悪くなりますよ」と、不合格をちらつかせ、脅してきたりするが、こういうところはパワハラ・モラハラ気質なので避けるが吉。
「先に自分の情報を出して、相手の情報を聞くのですね。
他に同棲期間中に注意すべき点はありますか?」
「そうだな……例えば、相手が靴を玄関で脱ぎ散らかしたとしよう。その場合、『靴を片付けろ』と注意するのではなく、最初は黙って、こちらで片付けておく。それで相手が気付き、『マズい、次回から気を付けよう』となれば良し、そうならなければ、今度は本人の目の目で靴を直す。普通なら、ここで『相手の手を煩わして申し訳ない』となるだろう。それでも直らなかったら、本人に聞こえるように『毎回、私が直してるんですよ』と言ってやればいい。それでもダメなら、本人に直接『靴を脱ぎ散らかさないようにして下さい』と言う。命令口調ではなく、やんわりとね」
パネルを提示する。
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◇避けるべき言い方
「〇〇しろ」
と命令する言い方
◇好ましい言い方
「〇〇してくれると嬉しい」
と共感を求める言い方
「〇〇してくれないと困る」
と同情を求める言い方
「〇〇するといい」
と提案する言い方
「自分なら〇〇する」
と自己表明する言い方
「〇〇するのはどう?」
と質問する言い方
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「同じ内容でも、言い方ひとつで、相手に与える印象はガラッと変わる。
角のある四角い内容を、いかに角を取って丸く話すかだ」
パネルを提示する。
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四角い内容を丸く話す
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「これは恋人や夫婦に限らず、ありとあらゆる人間関係について言える。
これに気を付けて話せば、要らぬ諍いを避けられるので、ぜひ身につけよう」
相手を不快にさせる内容であっても、言い方次第でそうならず、逆に不快にさせない内容であっても、角の立つ言い方をすれば、相手を不快にさせる。不快にさせるとたいていうまくいかない。取引先と交渉する際、その内容が魅力的なものであっても、先方の担当者が蛇蝎のごとく嫌な人物なら取引しようとならないし、逆にいまいちな内容でも、先方の担当者が誠実で好ましい人物なら取引しようとなる。
「同棲すると、今まで目に付かなかったことに気付くようになる。食の好み、服の好み、趣味趣向とか、いろいろね。違いがあって当然だから、ある程度、許容すべきだが、そうは言っても許容できないものもあるだろう。その場合は一方的に我慢せず、相手に伝えた方がいい。くちゃくちゃ音を立てて食べるとか、食べた後、お皿を片付けないとか、ゴミをそのあたりに捨てることに対し、気になるなら止めて言う。こういうのはマナーの問題でもあるから、直すよう言った方がいい」
「これもオブラートに包んでですか?」
「そうだね。だけど、明らかにおかしい場合ははっきり言っていい。
というのも、長年の習慣で、それが普通だと思っている可能性があるからね」
「なるほど、ただ、そうなりますと、相手から『うるさい奴』と思われる
かもしれませんが、それはいいのでしょうか?」
「真に相手の為であるならば、うるさい奴と思われても結構。
それで関係が壊れるなら、結婚しても遅かれ早かれそうなる」
パネルを提示する。
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先苦後楽
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「愛する人にダメ出しするのも、されるのも堪えるものだが、これを乗り越えないと、夫婦生活は長続きしない。であれば早い段階でそれをした方がいい。それには同棲の期間が絶好のタイミングだ」
「同棲は有意義なものなんですね」
「うむ、お見合いの不備を補い、結婚の準備になるからね。仮に破談してもリスクは最小限だし、今後、役立つ経験となる。世の中には結婚に否定的な人が一定数いるが、中には食わず嫌いとなっている人もいるだろう。そういう人にも同棲はお勧めだ。体験せずして嫌なものと決めつけるのは早い。たとえ他の人から結婚についてネガティブな話を聞いたとしても、それはあくまで、その人個人の話だ。それをそのまま鵜呑みにするべきではない」
結婚について聞くなら、未婚者より既婚者に聞く方が断然いい。したことがない人に聞いても、ほとんど役に立たない。だが波長の法則により、未婚者は未婚者同士で集まり、結婚について未婚者に聞くケースが多い。そこには既婚者に聞いてマウントを取られたくないという思いもあるだろう。
だが、未婚者は結婚に否定的な人が多いので、その影響を受けやすく、未婚者(同性)の輪の中にどっぷり浸かってしまうと、そのままずっと未婚者のままということになりかねない。結婚したいなら、居心地のいい未婚者(同性)の輪の中にいるのではなく、既婚者(同性)の意見を拝聴しつつ、未婚者(異性)と交流するべきだ。
勇気とは何か? と聞かれたら、怖い魔物を倒す勇者を思い浮かべる人が多いが、それはステレオタイプというものだろう。本当の勇気とは、ぬるま湯のように居心地にいい環境から脱し、自分を鍛え、成長させてくれる環境に身を投じることだ。独身のぬるま湯から出て、婚活し、結婚するのもそう。勇気がいる。そして、その勇気を持てるかどうかで人生は大きく変わるのだ。
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