第115話 ハロル王国との通商
以前、ハロル王国で、キラービーによる災害があり、冒険者として救ったことから、ハロル国王と遠方ながら親交を持つようになったが、通商を持ちかけても、かわされ続けていた。距離はあっても【転移】スキルで連絡には手間がかからなかったが、そろそろ結果が欲しいところだ。
ハロル国王が通商の判断を長引かせるのには察しがついていた。娘である第三王女キリシアが僕に好意を持っているようで、僕がそっけないことへの意趣返しだろう。でも僕は当時、婚約済みだったし、ガロル王にも脇見をしないよう少し釘をさされていたのだから、しかたない。国の通商と娘の恋愛は別次元の話だと思ったが、そうでもなかったらしい。
この王様は僕のことを気に入っており、悪い人でないし、たぶん娘思いのいい人なのだろう。しかし僕も結婚した。そろそろ決めたいのだが、どうしたものか。
そんな時、ハロル王より、娘が結婚するので、出席してほしいとの連絡があった。そして妻メリッサも一緒に来て欲しいとのことだ。良かった。いい人が決まったんだ。
「メリッサ、ハロル国王から、第三王女の結婚式の招待状が届いたんだ」
「ハロル国王ですか?」
そこで、いままでの経緯を詳細に説明した。
「……わかりました。一緒にいきましょう」
と承諾してくれた。今回はギルフォード公王夫妻ということで出席する予定だ。
今後の定期船就航も視野に入れて、船で向かう。
船の中、メリッサと談話中
「キリシア王女ってどんな方ですか?」
「国が魔物で襲われているのに対処するため、護衛四人とお忍びでギースまで来たんだ。途中、盗賊に襲われたところで助けたのが初対面だな。国のために危険を顧みず、愛国心や民を思う気持ちが強い方だね。行動力もある」
「アレス様はその方をどう思っておいで?」
「う~ん、立派な人だとは思うけど。それ以上は特別な感情はないね」
「ハロル王国とは今後、どう付き合うのですか?」
「公国と通商取引ができればいいと思うけど、取引ができなくても友好ではいたいね」
「それは領地が接しているからですか?」
「それも大きい。王女との関係で通商取引や領地関係に悪い影響を与えたくない」
船がハロル王国に到着し、そのまま王城へ向かう。この町の上空でキラービーを討伐したことは鮮明に覚えている。これが切っ掛けでチートスキルを人前で使うことへの抵抗感が無くなったんだ。
王城でハロル国王と挨拶
「おお、これはよく来てくれたギルフォード公王、こちらは……」
「こちらは私の妃のメリッサになります」
「メリッサ公王妃、よく来てくれた」
「わざわざお出迎え頂きまして、ありがとうございます」
挨拶も無事に終わり、式の会場に進む。貴族がたくさん来てるなぁ。まわりの貴族の会話から、どうやらキリシア王女は国内の貴族と結婚するようだ。それで王城で結婚式をするんだな。式の前後でキリシア王女と話す機会もなかったので、特段、何事もなく終了。
式の終了後、王城はかなりバタバタしていたが、王に挨拶していこう。こんな感じじゃ通商の話もできそうに無いな……
「おお、ギルフォード公王、こちらへ!」
王が奥の部屋に呼ぶので、行ってみると純白ドレス姿のキリシア王女もいた。
「キリシア王女様、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます。こちらは公王妃様ですか?」
「はい、メリッサと申します」
「わざわざ結婚式に来て頂いてありがとうございます。公王妃様を一度、見ておきたいと思ったのです」
「……」
「率直に申しますと、私は公王様に好感を頂いておりました。それで、そのお相手がどんな方なのか気になっておりました」
「……」
「今思うと、公王様への感情は憧れに近いものだったように思います。その後、こうして運命の相手に出会えましたので、結果的にはこれで良かったと思います」
「それは良かったですね」
「もしよろしければ今後とも我が国ともども友好的なお付き合いをお願いします」
「こちらこそお願いします」
そしてキリシア王女が僕の方を向く。
「公王様、ごめんなさい。今まで引きずってしまって……今後も良き友人でいましょう」
「キリシア王女……」
少し絡まった糸が綺麗にほぐれていく。
この後、ほどなくしてハロル王国とギルフォード公国との通商取引が開始した。ギルフォード公国にとって、三カ国目の通商国だ。
キリシア王女は愛国心が強いから、結果的に国内の結婚相手で良かったと思う。
とにかくおめでとう。
最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、評価やブックマークをして頂けると大変有難いです。




