とある学生の意識
時は夜
場所はヴァージニア教国の聖宮、一般食堂
桜木校長はマリアム大司祭に頼んで食堂を貸切して、そこに桜ヶ丘高校の全員を集めた。ヴァージニア教国側にも聞いてほしいとこともあって、マリアム大司祭、アダム隊長、アレクシスも代表として同席した。桜木校長は最初に話した。
「え~、まず生徒たちには、初めての魔物戦闘の訓練を無事終えて、お疲れ様。一部の生徒によって事件が起きたらしいが、うまく対応できてよかったと思う。騎士団の方々もご協力感謝する。さて、その対応方法についてみんな疑問を持っていただろう。現場の責任者を任せた生徒会長である谷川から報告をもらった。簡潔に説明しよう」
結界都市の外に生活している人々がいること
魔族は元はその環境に生きている人間であること
例の一年生パーティーはその人々の住処に乱入してしまったこと
罰として、しばらくレベル上げ活動に参加禁止されること
それを聞いて、例の一年生パーティーの一人が恐る恐る手を上げた。
「すみません、校長先生。その...罰期間はいつまでなんでしょうか...?」
「それは君たち次第だね。教師たちと一緒に行動してもらい、君たちの担任先生の報告を基に判断する」
「そ、そんな...」
「いい機会だから、皆にも言っておく。ここはゲームの世界じゃない。我々は遊びのためにいるわけではない。生死の戦いをするために呼ばれたんだ。生き残るために力を、レベルを上げるのだ。だから、自分の命も仲間の命も危険に晒させる無責任な行動を許すわけにもいけない。皆、これを頭に入れるように」
桜木校長の言葉に誰も反応してなかったが、全員真剣な顔で聴き込んだ。言われて実感された。彼らは戦に出ているということ。桜木校長はそう確信した。
「分かったらよし」
「あの、校長先生」
「何かね、真?」
「風紀委員長たちに起きた現象、それについても教えてもらえませんか?」
「俺も、それについて当時先輩たちに聞こうとしたが、とある生徒が自分で後に説明したいと延ばされました」
「ああ。今からその生徒が説明する。さあ、前へ」
桜木校長に招かれて、山田は桜木校長の側まで歩いた。全員の注目が突破に山田に向いた。それを受けて緊張になりそうな山田は目を閉じて、少し前のことを思い出した。
***
桜ヶ丘高校の者たちが食堂に集める三十分前、
山田は一人先に食堂で待機していた。桜木校長と富士村はマリアム大司祭と話しに、小林先生と谷川は他の桜ヶ丘高校の者たちを呼びに行った。山田は静かに自分の掌を見つめていた。
「………やっぱり、おかしいよなぁ………」
「自分の格好のことか?確かに大勢の面前に話す時に正装のほうがいいよな。今から制服に着替えれば?」
「って、うわ!?原田先輩に寺島先輩、ですか。いつの間に?」
「今参った」
「んで、冗談抜きでなにがおかしいんだぁ?」
「それは………」
山田は一瞬迷ったが意を決して自分の悩みを先輩たちに明かすことにした。
「自分自身のことです」
「ふ〜ん」
「大勢の前で話すことなど、元の世界の僕が取ったことのない行動です。今でも信じられません。この僕がこんなにもサモンさんの記憶のこと、サモンさんの思いのことを伝えたいなんて。まるで、サモンさんの記憶に、思いに飲まれているような感覚です」
「………」
「僕は怖いんです。このまま、サモンさんの記憶が目覚める度にその影響が大きくなっています。このまま記憶を目覚めさせたら、僕は、まだ僕でいられるのだろうか?小説とかにもよくあります。途中で前世の記憶が目覚めて、それまでの性格が急変する図が多いんです。それまで傲慢な性格だったのに途中に前世の記憶を思い出して急に賢明になるとか。僕も、そうなるのだろうか?山田拓人は消えてサモン・ショーンになるだろうか……?」
「かもしれねーな」
「っ!!」
「記憶は人格を組み立て、感情を生み出す。サモン殿の記憶を受け入れたお前はサモン殿の記憶に何らかの影響を受けることは避けられない」
「じゃあ……僕は……僕は……どうすれば……?」
「知らん。前にも言ったろ?てめぇの中の問題はてめぇで解決しかねぇ」
原田の丸投げの言葉に山田は苛ついたが、返す言葉がなかった。が、原田もまだ話す途中のように次の言葉を発した。
「だから、てめぇの心と対話しろ」
「え?」
「頭でてめぇの心に問い出せ。どう在りたいのか。そして、自分で決めろ」
「でも、どうやって……?」
「ふむ。では、俺が指導しよう。まず、目を閉じて、耳を塞いで、呼吸に集中する。外の世界からできるだけ認識を断つんだ」
「は、はい」
山田は寺島の言う通りにやった。
「頭を無にして、心からの言葉を誤魔化さずに浮かべさせそれに対して答えるんだ。と言っても初めては難しいだろ。まずは俺がいくつかの質問を出す。考えずに思いついた言葉でそのまま答えるんだ」
「……はい」
「お腹ついたか?」
「?……いいえ」
「何か食べたいものがあるか?」
「……お米を食べたい」
「なぜお米?」
「……ここに来てから食べていなかったから」
「今どんな気持ち?」
「……困惑している」
「何に?」
「……僕と違う、僕の中の他人の記憶、思いに」
「お前は一人の人間ではないのか?」
「……僕は一人の人間……」
「ではなぜ自分の中に他人の記憶が、思いが存在する?」
「…それは…」
「なぜ、それが他人の記憶、思いだといい切れる?」
「……………」
「お前は何者?」
「僕は……………………………」
その時、山田の意識は外の世界から断たれて、自分の中の空間に沈んだ。
***
ここは……どこだ?
暗くて、何も見えない
僕は……
「これこれ、若いのにだらしないのう」
あなたは………ご老人?
「うむ。失礼ながら、お主と同じ空間に居座れさせてもらうのじゃ」
ここは、僕しかいられない、はず……
「その通りじゃ」
じゃあ、なぜあなたがここに……?あなたは……
「残念ながら、わしもようわからんのじゃ。何せ、あまり記憶がないからじゃのう。ただ一つ言えることは、わしはアレクシスを守りたい」
アレクシス……?
「そうじゃ。そのために、わしはここにおる。今世界は停滞している状態なのじゃ。このままじゃ、この世界に未来が来ない」
だから僕を……僕たちをこの世界に喚んだの?
「うーむ。申し訳ないと思うが……それでも、じゃ」
そんなに世界を、アレクシスを守りたいの?
「そうじゃ」
……僕にはわからない気持ちだな
「む?」
他人のために行動するなんて、なぜそう出来るのか、僕はわからない
「それは違うじゃろ」
え……?
「お主がわからないのはなぜ他人のために行動できるのか?とかではなく、なぜ自分の行動に他人のために成れると思えるのか?じゃろ」
何で……?
「同じ意識の空間におるのじゃ。それくらい分かる。お主も、実はわしの思いも感じられるじゃろ」
やめて、僕の中に入るな!
「そうじゃのう。では、お主のことを聞かせてもらえんかのう」
僕のこと……?
「うむ。ここまで入った以上、わしはここから去れぬ。でも、この空間の主はお主じゃ。お主はここまで来た理由はわしと話すためと見た。ならば、まずはお互いのことを知り合おう。わしはまだ記憶がバラバラだから、アレクシスに対しての思いしか語れんが、お主は語れるものは多かろう」
僕は……日本という国の国民
一般家庭に生まれ
四人家族で
十五歳で
「うむうむ。して、お主の名前は?」
僕の名前は………




