市外活動一日目の報告
無事ベースキャンプに戻った富士村たち(約二名精神的なダメージを受けたが)、そのまま合流した他の学生と騎士団たちと結界都市に帰還した。都市についた時には太陽が半分隠れて空が黄昏色に染めていた。数人の騎士は魔族グリッドを特別区にすぐに連れて行くべく、別行動でグリッドを連れて行った。それを見届くと約束した富士村も特別区の入り口まで同行した。グリッドがちゃんと特別区に連れて行かれたのを見た富士村は聖宮に戻った。その時に、グリッドは小声で言葉を発した。
「...あんがとよ...」
そばにいた騎士でも聞き取れない声。だが、富士村にはちゃんと届いたらしく、振り返らずに軽く手を振った。
***
聖宮の一室にて、桜ヶ丘高校の者は会議をしていた。その場に出たのは桜木校長、小林先生、安原、谷川、富士村、原田、寺島、そして山田であった。
まずは谷川から、魔物戦闘訓練についてとその間に起きた問題について報告した。
「まさかの一日目にトラブルを起こしたとはねぇ...」
「申し訳ありません」
「いや、むしろ対応してくれてありがとう。谷川、小林先生、いい仕事だった」
「「ありがとうございます」」
「例の一年生たちはしばらく都市を出る活動参加に禁する。教師たちと一緒の活動してもらって生徒指導の先生と彼らの担任先生にそいつらを叩き直すように言うわ」
そして、例の一年生パーティーの処罰も決めた。次の話題は魔族と集落の人間であった。
「しかし、ここまで樹先生の予想になるとはねぇ...」
「......この世界の人間との接触の仕方を考え直さなければ......」
「はい、都市の外に住んでいる人たちは神の言葉を従わない覚悟がありまして、それぞれのルールがあるとのことです」
「生徒たちだけに彼らとの接触を任せるのが危ういな...小林先生、このまま任せてもいいかい?」
「はい!精一杯頑張ります!」
「では、頼むよ。富士村、原田、寺島、魔族の対応は任せたぞ」
「「「ウッス」」」
「流石、力が支配するこの世界では三人のバンカラは頼もしいなぁ」
「そんな言い方やめんか、博士」
「いや~ごめん、彩芽さん。そんで、元の力だけではないって話らしいですが、実際はどうなのぉ?」
「はい、それについて、僕が説明します」
富士村たちの力の正体、山田がその説明に名乗り出た。
「これは召喚士のスキル、"英霊召喚"の効果です」
「"英霊召喚"?」
「はい。その名の通り、英雄の霊を呼び出す術です。英雄は選ばれし者の称号ではありません。世界が認めたら誰でもなれます。つまり、誰にでも英雄の力が眠っています。このスキルで先輩たちの中の力を呼び出しました」
「お前がそのスキルを使えたのか?」
「サモンさんの記憶のお陰です。もともと、サモンさんは未熟な僕たちではなく、単純に強い人を呼びたかったんです。その祈りの成果は"英霊召喚"。ただ、そこに至った時に…」
「神のいたずらでこの世界の運命を動かす歯車に使われてしちまったか……」
考え込んだ桜木校長。そこに、安原はある疑問を口に出した。
「なあ、英雄の力は誰にでもあると言ったが、じゃあおれたち皆その"英霊召喚" で英雄の力を手に入れるんだよなぁ?」
「無論。だが、そのためには試練みたいなものを通さねばな」
「試練?」
「英雄とは信念を貫き理想を追う者。英雄の力はすなわち理想の力。では、理想の力とはどういうものなのか?これが一問目」
「なるほどなぁ。こりゃ難度が高すぎるわぁ。失敗したら?」
「最悪、この世から消えることになる」
「……他の者にさせるのがやめよう。本当に、無茶なことするばっかだね、お前たち。しかし、よくぞ無事でいてくれた」
桜木校長の言葉に一回目をそらした三人のバンカラだが、その次の言葉に素直に頷いた。そして、まだ説明の途中の山田は続けた。
「先輩たちは今この世界の神の加護を消したことで、完全にこの世界の部外者になりました。本来は僕の召喚霊になったはずのですが、僕のレベルの不足なためそれが出来ませんでした」
「俺とのこの世界の神族の話で俺たちは直接この世界そのものと契約している。元の世界の理のままにこの世界にいるために今の俺たちの身体は元の世界の仕様に戻っている。人間のまま、痛みも感じて、空腹も感じる。俺たちはこの世界の運命に首を突っ込むことができなくなり、今の役目はただ桜ヶ丘高校の者を護る存在だ」
「つまり、今のお前たちでも魔王を倒せないってわけね」
「ふむ、その通り」
「それに、EXPも収集できない先輩たちはパーティーを組めないのです」
「え、そうなの?じゃあ、富士村君も原田君も私たちのパーティーから抜けたってこと?」
「そうなりますね」
「なんだ、美波ちゃん、ひょっとしてオレが一緒に行けなくて寂しい?」
「美波ちゃん呼ばない!それは……せっかく組んで一緒に戦ったのにただ一日で終わってしまって少し寂しいよ。猫田君もきっと悲しいよ」
「ハハハ。まぁ、別に一生の別れじゃねぇんだけどなぁ」
「俺らも安全を確保のため、訓練や戦闘の活動に共に行動する。基本、手は出さないが、危ないと判断したら間に入る。それでよいか、校長先生?」
「そうだね。引き続き、現場の仕切り役は谷川は取って、お前たちはそのサポートだ。今回みたいな事件が起きないようにも、見張り役を頼む。ただし、前に言った通り、お前たちの主な仕事は魔族関連だ」
「「「ウッス」」」
「それじゃ、今日はここまでにしよっか……」
「校長先生」
会議をお開きしようとする桜木校長に山田は声をかけた。
「僕はこの話を皆に伝えたいと思いますが……」
「皆とはうちの者だけではなく、ヴァージニア教国の連中にもってことかね?」
「はい」
「サモンの記憶についても話すかい?」
「……はい」
「………」
山田の提案に桜木校長は考え込んだ。本心はできるだけ情報を隠しておきたかった。だが、山田の、生徒の決意をないがしろにも教師としてしたくなかった。そこに富士村は助け舟を出した。
「俺は山田の意見に賛成する」
「その心得は?」
「どのみち、俺らの状態を説明しなかればならない。下手に誤魔化して不信感を買うより全てを洗い出して全面な協力を得る方がいい。それに、山田は記憶を受け継いだ責任を取りたいというなら俺は止めない」
「………分かった。私が場を作る。山田、伝えたいことをちゃんと伝えるように心の準備でもしな」
「は、はい!」
「心の準備しとけって言われて何でガタガタになるんだおめぇは。おら、肩の力を抜け」
「山田君、大丈夫です。先生たちもついていますから」
「あ、ありがとうございます」
こうして、先輩と先生に背中を支えてもらいながら山田は自分が決めた責任のとり方を貫くことにした。
***
山田の提案が採用されて、小林先生、谷川、山田三人は他の桜ヶ丘高校の者を集めるべく、一足先に部屋を出て行った。
「博士、お前の番だ」
「え、何が?」
「消すぞ」
「冗談っすよぉ。じゃ、報告してもらうよぉ、この国の現状を」
ヴァージニア教国、神が管理しているこのファストフィリアの唯一の国。この国は人々を魔王から守るために建てられた。神が用意した結界都市という領土を中心にして行動をしている。全ての人間は神の使徒と信じて一教団が国家になった感じで国が建った。トップにいるのは聖職系の人間で、戦闘系は彼らと国民を守るために騎士団を作った。聖職系は上位になったら魔王を封印する能力を得られて、国の、世界の存続のために守ることが必須であった。魔王を封印する能力は上位聖職系の五人が必要と言うことに、その五人がこの国の代表者になる。五人の間の力関係は平等。現在、マリアム大司祭はその五人の一人であり、彼女を守る任務を行うのはアダム隊長が率いる騎士団の一番隊であった。桜ヶ丘高校の者もマリアム大司祭の管理の下に置かれていた。
「マリアム大司祭の他にまだ四人も偉いさんがいるってことか...」
「いいえ、マリアム様の他にただ三人だよぉ」
「......一人、まだ任命されていないのかい?」
「ええ。トップになれるのは上位の聖職系だけ。二年前、最年長の上位聖職系が他界してから、まだ他に上位聖職系が現れていない」
「そんな時期に私たち、というより勇者の出現にそりゃ喜んだんだろうね。五人目がいないと魔王を封印できないから」
「そういうこと」
「問題は他の偉いさん思惑だね...」
「俺らが協力関係を結んだのはマリアム大司祭派だけってゆう認識でいいか、校長先生?」
「ええ、そうだね」
「他の二人はまだわからないが、現在の上位聖職系の一人が魔族を毛嫌いと聞いた。血を流す彼らを家畜同然と思っているらしい」
「富士村たちのことも良く思わない可能性が高いってことか...面倒だね...わかった。それについてはその時が来たら考えよう。今はレベル上げの活動に集中しよう」
「あ、考えるの面倒だから後回しにしたなぁ」
「やかましい。それじゃ、山田のステージを用意しに行くか」
桜木校長たちも会議をお開きにして山田のための舞台を整えるためにマリアム大司祭のところに行った。




