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教師の責任

ベースキャンプから東に向かって出発した富士村、原田、小林先生とホブ。普通に歩けば三十分かかる距離であったが、魔力や"殺気"を使って五分満たさずについた。小林先生は原田が運んでいた。


「うぅ~、死ぬかと思った...というか死にたい...」

「やっぱ激しすぎだったか...悪ぃ悪ぃ」

「そうだけど、それだけじゃないの!!何で先生をお姫様だっこで運んだの!?皆に見られて恥ずかしいよ!!」

「あ、そっち?」

「...一度休憩するか、先生?」

「ふぅ~はぁ〜。いいえ、今行きましょう。ホブさん、お願いします」


心を落ち着けさせて再度覚悟を固まった小林先生は先までの慌てた表情が残らず、教師の顔に戻った。それを見た富士村と原田は小林先生の一歩後ろに彼女に付いて行った。ホブは三人を集落の入り口に案内した。そして、四人は集落に入った。


「みんな〜戻ったよ〜」

「あの声は、ホブ?ホブだ!おおい〜ホブが戻ったぞ〜!」


ホブの声に気づいた集落の男が他の集落の人たちを呼んで、いつの間にか十数人の人たちがホブを囲んだ。皆、ホブの無事帰還に喜んでしていた。集落を無茶苦茶しにきた連中、桜ヶ丘高校の一年生パーティーをやつけたと思い込んだ者もいた。が、しばらくして、一人の若い女性が違和感を気づいた。


「あれ?ねえホブ、グリッドは?グリッドは一緒じゃないの?それに、後ろにいる人たちは誰?」

「メイ姐ぇ...アニキは...」

「それについて、私から説明させてください。まずは自己紹介を。私の名前は小林美波。桜ヶ丘高校の教師です」

「さ...さくら...なに...?」

「我々はこの度、ヴァージニア教国と契約を結び魔王討伐に協力し合う者です」

「国の人間ってこと!?」

「少し違いますが、その認識で構いません。すみませんが、この集落の代表者と会わせてくれませんか?」

「そういわれても...」

「そんな者、ここにはいないよ。異世界のお嬢さん」

「あ、婆さん~」


集落の人の群れの後ろから一人の老婆が歩いてきた。


「集落の人間には代表者とか長とかいないよ。皆協力し合って生きてきたんだからねぇ」

「そうですか。でも、以外ですね。貴女は私たちのことをご存知で?」

「都市に畑の野菜を売りに行ったときに噂が聞いた。そして、その異世界の者たちがこの世界の救世主になるってのも聞いた」

「救世主!?つまり、アンタたちは...」


救世主。その言葉を聞いた集落の人たちの反応は歓迎な反応ではなかった。ついさっきまで彼らの集落に来た者たちも自分のことを救世主と名乗った。そして、彼らの見た目は確かに国の人間、ファストフィリアの人間の見た目とは異なった。黒髪に黒目。小林先生たちはその見た目と一致していた。

正体が知られた小林先生は勿体ぶりをやめて、単刀直入することにした。


「ええ、皆さんの予想通り。我々はこの集落に来た子たちの仲間になります」

「では、あいつらがこの集落にしてきたことも聞いたかね?」

「はい。あの子たちの口から直接聞きました。聞いて、ここに来た次第です」

「ほう。では、何しに来たんだい?」

「それはもちろん、謝りに来ました」


そう言って、小林先生は四十度の敬礼をし、誠意の謝罪の言葉を発した。


「この度、うちの生徒たちがご迷惑をかけて、本当に申し訳ありませんでした」


そう言い、後ろにいた富士村と原田も頭を下げた。それを見た集落の人たちは戸惑っていた。国の人間でもここまでする人がなかった。集落の人間は魔族と関わりがあるから、そもそも最低限の接続しかしてくれなかった。だが、この人たちは、自分のやったことではないのに、わざわざこの集落に足を運んで謝りに来た。どう対応するか、集落の人たちは分からなかった。まだ冷静さを保った老婆が小林先生に尋ねることにした。


「なぜ、アンタたちが謝る?」

「あの子たちは若いです。感情制御がまだ不安定。いきなり知らないところに連れられて不安と感じていたのでしょう。その不安を抑えるために、ここに得た力の興奮さに身任せてしまったのも予想できました。そんな子たちの感情を正しい方向に導いて、過ちを防ぐために、我々の教師の役目でした。その役目をちゃんとできていなかったのが今の問題を招きました。ですから、全ての責任は私たち、教師である私にあります。ですから、どうかあの子たちを許してあげてください。代わりに、私を責めてもいいので」

「そんなこと言われてもね...それに、本当にそれがあの子たちのためになるのかい?」

「あの子たちの処罰は桜ヶ丘高校(我々)が下します。絶対に反省させて改心させます。ですから、そこまでは私があの子たちの罪を背負います。それが教師の、いいえ、大人の役目だと思いますので」

「...覚悟は固まったようだねぇ」


その会話の間にも小林先生はまだ頭を下げていた。その固い意志を感じた老婆は今度こそ対応に困っていた。ここまでしてくれた人なら許してもいいかとまで考えていた。が、そのときに一人の女性、メイが間に入った。


「そんなことより、グリッドは?アンタたち、グリッドに何したの?」

「そ、それは...」


その勢いに押された小林先生は思わず頭を上げたが、説明しようとするときに富士村が前に出た。


「グリッドはこのまま我々についてきてもらって結界都市の魔族特別区に入れる予定だ」

「なっ!?何で!?」

「グリッドはここに来た生徒たちだけではなく、無関係の生徒たち、ヴァージニア教国の騎士団の者たちにも手を出した。その落とし前のためだ」

「そんなのっ、だって、先に襲ってきたのはそっちじゃない!?何でグリッドが捕まえなければならないの!?おかしいじゃない!?」

「すまないが、もう決まったことだ」

「っ!!ホブ!!アンタも何か言いなさいよ!大事な兄貴分が連れて行かれるのよ!アンタそれでいいの!?」

「...アニキも決めたことだからぁ...」

「何よ...皆、グリッドのことどうでもいいってこと...?」

「そんなことはぁ...え~!?」


我慢の限界のように、メイからだんだん禍々しいオーラが出て始めた。魔力であった。


「メイ!?」

「アイツ、魔族化してる!?」

「おいおい、これやばいんじゃないか!?」


他の集落に人たちもパニックして始めた。富士村と原田は彼女を止めるべく、動こうとしたが、以外な人物の登場に足を止めた。その人物はメイに近づき、彼女の髪の毛をぐしゃぐしゃにした。


「落ち着け、バカメイ」

「グ、グリッド!?」

「おうよ。東集落の剣士、グリッド様だぜ」


魔族兄弟の兄にして東集落の剣士であるグリッドであった。彼はメイを落ち着かせるために最大な笑顔を見せた。その笑顔を向けられたメイは顔が赤くなった。魔力の代わりに蒸気が出ているように。富士村は驚きながらもグリッドに声をかけた。


「来てたのか?」

「ああ。あの隊長に、せめて世話になっている人たちに挨拶して来いって言われてな。ああ見えてお人よしなんだな」

「アダム隊長...」

「一人ってワケねぇだろな」


原田が言ってそばから、アレクシスが馬に乗って駆けつけた。状況に追い付けない集落の人たち。その代表として、老婆はグリッドに問いだした。


「おいグリッド。一体どうなっている?」

「ん?いや、この人たちからまだ聞いていないのか?オレは結界都市に行くことになるんで、その前に一応別れをしに戻ったんだ」

「まあ、それは聞いたが、あたしが聞きたいのは何であんたが素直にそれを従うんだ?」

「あ、それか。まあ、オレが勝負に負けたからだな」

「勝負?」

「ああ。男同士の勝負だ。負けた以上、勝者の言うことを聞くのが筋だろ?」

「っていうか、あんたが負けたって、一体誰に?」

「この人に」


グリッドは親指で富士村を指した。それを聞いた集落の人たちは目を開いた。


「に、人間に!?」

「ウソだろ!?人間が魔族に勝つわけねぇだろ!!」

「ま、こんな反応になるよな。もう驚いたろが、聞けそしてもっと驚け!異世界の人間は普通に痛みを感じるのだ!!」

「え、えええええええええ!!!???」

「何で自慢気になってんだお前は?」

「...だからあんたは勝負って言ったのかい?」

「まあ、そういうこと」

「なるほどねぇ...」


老婆は納得した。痛みを感じ者同には彼らにしか通じ合えるものがあると老婆は知っていた。だから、グリッドがそう決めたなら仕方がないと思った。そして老婆は再び小林先生に向かった。


「コバヤシと言ったな?」

「は、はい!」

「あんたはいい人、いや、いい大人だな。このグリッドのガキからも直接話を聞けたし、とりあえずあんたの言葉を信じるよ。東集落はもうこの件を追わない。それでいいかい?」

「あ、ありがとうございます!!」

「いや、お礼を言われる必要ないでしょう」


再び頭を下げた小林先生。だがそこには、老婆の言葉のおかげで重い負担が省くことができた。

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