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賑やかな朝食~食事風景~


 出来ればずっとヴァイオレットさんの厚意かつ好意に甘えたくなっていた朝食の準備時間も終わり、今は朝食の時間だ。屋敷に泊まった全員が座っている。

 俺、ヴァイオレットさん、グレイ、クリームヒルト、シアンにメアリーさん。ヴァーミリオン殿下、アッシュ、シルバ、エクル、ゴルドさんに、シュイさんとインさん。男性六名、女性四名。性別曖昧が三名。

 流石に人数が多いので普段より座っている間隔が狭い。……それと、相手の素性を知った上で性別曖昧が三名居るなんて言葉が当てはまる状況に置かれるなんて思いもよらなかったな。

 ついでに言うと、王族とか王族に近しい存在も多く居るこの状況は珍しい。傍から見ればなんの密談を交わすつもりだ、という感じでもある。

 ともかく全員が食卓を囲んで食事をしていた。


「まさかヴァイオレットの料理を食べる日が来るとはな……」

「食べたくないのならば食べなくて良いんだよ。というわけでタコサンウインナー頂きっ!」

「食べないとは言っていない上に行儀が悪いぞ。このタコサンウインナー? は俺のだ。可愛いからな。食べるのは勿体ないが」

「私が躱された……だと!? というか可愛いとは思うんだね。ヴァイオレットちゃんが作る料理に疑問は持つのに」

「単純に料理を作るのは毛嫌いしていたヴァイオレットが……という意味だ。……時にヴァイオレット。お前は……」

「どうされました?」

「……いや、なんでもない。朝食美味いぞヴァイオレット」

「そうですか? お肉を分けてくれたレモンさんに感謝しなくてはなりませんね」

「あ、ヴァイオレットちゃん。はい、あーん」

「急にどうしたクリームヒルト」

「さっきから食べてなかったから食べさせないとね。ほら、黒兄は肉付きの良い身体の方が好きなんだから、食べた食べた!」

「自分で……いや、あーん……もぐ……うむ、クロ殿が作ったヤツか、美味しい」

「分かるんだ。見た目似てると思うんだけど」

「私好みの味付けだからな」

「わー、惚気だー」

「ふ、惚気だ」

「あはは、良かったね照れてる黒兄!」

「照れてない」

「照れてるな」

「照れてるよね」

「照れてない」

「……うん、美味いな。……これがヴァイオレットの好みの味、か」


「というかお前達って食べれるのか? 液体金属? が元って聞いたけど」

「食べなくても平気ですが、食べれます。味も感じますし」

「いわゆる趣味の範疇になりますが、私は食べたいと思いますね」

「へぇ。美味しいと思える事は良い事だもんね」

「ちなみにそのまま体に吸収されます」

「排出はされません」

「全部?」

「はい。望まれるのならば見せましょうか? 吸収されていく様を」

「いや、良い。脱がないで!」

「脱いでいません。貴方が服に見えるのは私の身体です。変化しているだけです」

「え」

「シルバっちが見ているのは私達の全裸です。そう、貴方は先程から裸で食べる私をまじまじと見ているのです!」

「裸を見た責任は果たして貰わないと……私を嫁に貰って下さい」

「私の嫁に来て下さい」

「理不尽がすぎるよ!?」


「ふむ、素材の味が生きている、というやつですね……ミセス・レモンとは違った味付けですね。皆さんの職人魂が宿って……」

「そうだね。これなら私も素材を使って料理をしたいと思うよ」

「エクル先輩は料理をなさるのでしたね。確か昔から……」

「趣味の範疇だけどね。諸外国で良い食材を見繕うには自ら料理をするのが一番だ。それに誰かに作ってあげるというのは楽しいモノだよ」

「分かりますエクル様。誰かのために作り、喜んで貰うのは嬉しいですよね」

「うんうん、グレイくんとはいい話が出来そうだ。掃除とかも喜んで貰えると嬉しいよね」

「はいっ!」

「……誰かのためになさるのは良いですが、偶には自身の部屋を掃除をしたほうが良いですよ」

「うぐ」

「どういう意味です、アッシュ様?」

「先輩自身の部屋は足の踏み場もないほど散らかっているんですよ。場合によっては着替える服が無いという理由で外に出られず、メアリーと一緒に大掃除をした事も……」

「そうなんですか……」

「……誰かのためになら出来るんだけどね……はは……アッシュくん、来年度の先輩として格好つけさせてよ……」

「いずれバレる事ですし、彼には大丈夫ですよ」

「へ?」

「つまり私生活を犠牲にして他者に尽くすという事なのですね! 私めに出来ない領域という事です!」

「ほらね?」

「いや、これはこれで良くないんじゃないかい?」


「ふむ……むぅ……」

「なにやってんのゴルド君ちゃん。胸を上下左右に揺らしたりして」

「……あ、私の事か。いや、早速クロに縫って貰ったブラを着用しているのだが……凄いな、こんなに違うのか」

「そんなに違うの?」

「ああ。正直そんな違わないだろうと思ったんだが……楽で痛くない。締め付けも辛くないというのは素直に凄いな……」

「私は下着を着用しないから分からないけど、その感想はよく聞くね。私の修道服とかもクロのお陰で動きやすくなってるし、気持ちは分かるよ」

「よし、ではヴァイオレットを煽りに行くか」

「何故」

「ふ、なにせ私の今着用しているブラはお前が縫ったモノ! 夫の手作りを着用している事に妻は嫉妬するかもしれないということさ」

「会って二日目だけど、本当に良い性格してんねー」

「という訳で、良い感じだぞクロ! 自分に合う、というのはこんなものなのだな」

「お褒めに預かり恐縮ですが、煽りにきてんならぶっ飛ばしますよ」

「クロもゴルド君ちゃんには遠慮なくなってきているねー」

「ともかく、どうだヴァイオレット! 夫の手が入ったモノをよその女が着用して羨ましいか!」

「ヴァイオレットさんの所有している奴は全部俺が調整していますし、嫉妬もなにも無いかと」

「そうなのか!? ……だが夫を喜ばせようとこっそり購入したのもあるかもしれんし、全部では無いのかもしれないぞ」

「はは、そうかもしれませんが――ヴァイオレットさん、何故目を逸らすんです」

「逸らしてない」

「逸らしてます」

「逸らしてない。……私だってこっそり買って、気に入ってもらえるか期待したいのに、いざ試着したら付け心地が今一つで結局付けられない、なんて事は無い」

「そ、そうですか。……だから一つ頼まれたのか……」

「なるほど、つまりヴァイオレットは“私の胸は既に貴方無しじゃ生きられない、なにせ貴方に開発されたのよ!”というやつだな」

「アンタは黙ってろ」

「それじゃ駄目ゴルド君ちゃん! そこは“私の胸もクロの手の物によって包まれているから、実質クロの胸だ”と煽らないと!」

「なるほど!」

「シアンはどっちの味方だ!」

「わ、私の胸はずっとクロ殿の専用だからな!」

「ヴァイオレットさんは張り合わなくて良いです!」

「駄目だよイオちゃん、将来の子供のために専用にしちゃ駄目だよ!」

「シアンも黙ってろ!」

「こ、子供……! そ、そうだな。だが今はクロ殿専用だ!」

「ありがとうございますね、ですが落ち着いてください!」


 ……しかし、内容は密談とは程遠い、もう少し静かに食べられないかと思う食事風景だけど。

 シャトルーズはなんだかスカイさん関連で居なかったらしいが、これでその両名や、バーガンティー殿下とか居たらどうなっていたんだろうな……って、メアリーさんがさっきから大人しいな、どうしたんだろうか。

 どうしたのかと聞いてみたいが、俺からメアリーさんの場所は少々遠い。後で話しを聞いてみようかな。


「メアリーくん、食事が進んでいないようだけど大丈夫かい、何処か体調でも?」

「…………」


 俺が心配していると、俺以外の他が騒いで誰も意識が向いてい居ない中、エクルがメアリーさんに話しかけていた。


「メアリーくん?」

「え、あ、はい。ごめんなさい。体調は大丈夫ですよ。お師匠様関連で昨日眠れなくて……」

「本当に? 無理してないかい?」

「大丈夫です。ええと……あれです。月の道というやつで、体調が優れないというやつです」

「言いたい事は分かるけど、そういうのは口にしないほうが良いよ」

「あれ? おかしいですね、こう言っておけば男性相手には誤魔化せると聞いたんですが」

「聞かないほうが良いかもしれないけど、誰にだい? それを教えた相手にはこれから注意したい」

「昔お世話になった年上のお手伝いさんのような方です。“こう言っておけば責任を取るのが怖い男なんて遠慮して逃げるものです”と。責任がなにかはよく分かりませんでしたが、対男性には効果は抜群だと」

「……ああ、うんそっか……そうだね……言っている事は分からないでもないけど……」

「そうなんですか?」

「でも、出来れば止めたほうが良いよ。……いや、確かに遠慮はするだろうけど。女性特有のモノだし、辛いだろうから遠慮もするだろうね」

「私は軽いんで大丈夫ですよ、気にしないでください」

「キミがなにに対して気を使っているのか分からなくなって来たよ」

「?」


 ……意外と大丈夫なのだろうか。よく分からない。

 どこまで本気なのか、演技なのか。ともかくあんな事を言う位には余裕はあるようだ。いや、余裕なのだろうか。


――それにしても、こんな風に食事をする時が来るなんてな。


 学園祭の頃を思い出すと考えられない風景だな、これ。


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