36 マリーナへ
休憩を終えて数時間…。結局、本当に何も起こらないまま街に到着してしまった。いや、大きな壁が見えるようになっただけで到着はしていないが…
「結局何も無かったね。人とも会わなかったし」
『主が寝ている時に何台かの馬車は見かけたぞ?』
「…それ、私が寝てる所見られたって事じゃない?」
『それなりに距離があったから、人間の目ではしっかりとは見えなかっただろう。我の尻尾で多少は覆っていたしな』
とりあえずリルから降り、面倒を避ける為にリルを送還する。そのまま街道沿いに街へと向かって行った。交易が盛んだと言っていたからか何台かの馬車とすれ違う。私が寝ている間以外にすれ違わなかった事を考えれば、かなりの数の馬車だ。そう思って振り返って見ていると、私たちが来た道とは違う方へ走っていった。
(あっちに街か村でもあるのか、近道なのかな?帰りはあっち通ってみようかな?)
そんな事を考えながらマリーナへ向けて、再び歩き始めた。
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「デカいなー、やっぱり」
マルセアもそうだったが、街を囲っている壁がかなり高い。しかも、入り口までには行列が出来ている。前にいた男の人に話しかけた。
「ねぇ、コレってマリーナに入る為の行列?」
「ん?ああ、そうだよ。船を使って色んな所から物が集まるから、いつもこんな感じだよ」
やはり審査待ちの行列だったようだ。その後も男は色々と話してくれた。ここ以外にも2か所入れる所があって、ここはまだマシな方だとか、ここで交易されている布が王都で大人気だとか…
そんな雑談をしている内に門まで辿り着いた。
「嬢ちゃん1人か?」
「そうだけど?」
「近くの村からここまで来るのも大変なはずだが…。まぁいい、身分証を」
そう言われたからギルドカードを出した。そのカードを何かに置いて見ている。それを見た瞬間、門番の人が顔をしかめたが問題無く入れた。何だったのだろうと自分のギルドカードに目をやって納得した。自分が出したのは商業ギルドのカードだった。魔法使いの様なローブを着ていて、1人で行動していて、しかも商人。商人なら普通は冒険者に護衛とかされてるだろうし、荷物1つない商人なんてそういないだろう。
「まぁ、目的を考えればどっちかっていうと商人だよね」
入れたし問題は無い。とりあえず街を色々見て回ろう。




