よんばんめのはなし
-said マリアーヌ=ファン=ニアニール-
剣の修行に、マナーやダンスのレッスン、レディとしてのたしなみ等々貴族の義務である習い事たちは、毎日のようにあり、休む暇すらない。
しかも、なかなかどれも上手くいかず行き詰まっていた。
「はぁ、わたくしにはさいのうがないのかしら……」
ポツリと一人呟くように不安を言うマリアーヌは、たったの齢5才児である。
他より成熟している性格は、貴族故であるが考えていることは5才児のそれであった。
上手くいかないことに苛立ちと不安を感じ、マリアーヌは、ひとりで家を抜け出し滅多に人が来ない近くの森のなかを、散策していた。
ガサガサ
進むにつれ深くなっていく森のなかでマリアーヌは、纏まらない考えに没頭していた。
次第に、開けた空間へ無意識に足を進めていた。
ガサ
目の前の邪魔な草を退けるとそこには神秘的な空間が広がっていた。
澄んだ水が張ってある泉に、完璧に配置されたかのような草木は自然のものなのにも関わらず計算されているかのようであった。また、木々の隙間から除く光たちは草木や、泉に反射し眩しいほどの美を作り上げていた。それらは、まるでひとつの絵画のようであり、マリアーヌは、見惚れて数秒の間固まると、ふと、人影に気づいた。
最初は、この完成された美に異物が混ざりこんでいたことに苛立ちを感じたが、その人影を目に写すとその考えが吹き飛んだ。
その人影は、一人の少年であった。
無造作に伸ばされたプラチナの髪に、その隙間から覗く大きな二重の琥珀色の瞳は澄んでおり、この世の汚れを知らないかのようであった。また、顔に配置されたスッと通った鼻に淡い桃色の艶のある唇、抜けるような白い肌は整っており少年の美しさを引き立てていた。
マリアーヌは、少年を見つめ先程同様いや、先程とは違い明らかに熱を孕んだ瞳で少年を見つめ、時を忘れていた。
あっ!と、とりあえず!じこしょうかいをしなくては!!
意識を取り戻したマリアーヌは、その少年に少しでも自分と言う存在を刻み付けたいがため自身の名をいった。
「わ、わたくしは、マリアーヌ=ファン=ニアニールですわ!あ、あなたの“な”をおしえてくださらない?
」