ありじごくつんつん/安全靴/雨と魔法使い
#君・私・地獄で文を作ってください
#爪・死・僕で文を作ると性癖がバレる
#雨・僕・嘘で文を作ると性癖がバレる
参加作品
空き地の隅でもそもそ動く渋い色のランドセルを覗き込む。ぱっと花咲くように笑う、泥んこの顔。
「あ、にーちゃん君臨!」
「おう。それ何」
「ありじごく、つんつんしてる!」
楽しいのかそれ、と眉を寄せる俺の服を、泥だらけの手で引っぱって、
「おおー、私服」
と小さい生き物は目を丸くする。
「来週、体育祭なんだよ」
帰るぞ、と手を繋いだところで、六時の時報と二人分の腹の虫が同時に鳴った。
***
青年の爪先が男の顔にめりこむ。男の手から落ちたポリタンクに工場長が飛びつく。
「元従業員だって?」
ようやく現れた濃紺の制服を、男を拘束した青年が睨む。
「遅いぞ、死人が出る」
「君のそれ、出番できてよかったじゃない」
「…安全靴を武器扱いするな、公僕」
***
軒先の下、幼子と手を繋いだ少年が、のんびりと曇天を見上げる。
「雨、やまないね」幼子がぽつりと言う。
少年が答える。「この星の循環はずっと昔に破綻していて、僕ら魔法使いが生きる時間と引き換えに、束の間の晴天を作るんだよ」
道行く数人がそれを耳にし、驚きに足を止める。
少年はいたずらっこのように目を細めて言い足した。「嘘だよ」
皆がなぁんだと歩き去ったあと。
「嘘だよ」
軒先の下、幼子と手を繋いだ老人が、虹のかかった青空を見上げる。




