勇者クエスト
「おーい、家族へのお土産何にするか決めたか?」
「やっべ。忘れてた」
同級生達は、お土産の饅頭を持ってレジに並びにいった。
そんな中、僕は壁に掛かった、残り一つしかない剣のキーホルダーに目が釘付けになった。
「これ、カッコいいな……」
絶対いらないものなのは、わかってる。わかってるけど、カッコいいものは欲しくなる。
そして、僕は手を伸ばした。
すると、手に持った瞬間、キーホルダーは大きくなる。
「はっ……?」
僕は謎の光に包まれた。
「勇者よ。おぬしに頼みがある」
僕は、見知らぬ城で、王様と対面していた。
あの日、僕は異世界に転移した。あのキーホルダーは、本物の剣となり、皆僕を勇者と呼んだ。
そう、普通ならここから伝説が始まるはずだった。
しかし、現実は地味だった。この世界のお金がない僕は、お使いクエストばかりこなしながら生活し、北の大陸で数か月過ごした後、この大陸へ渡ってきた。
そして、大陸に渡ってきて早々、この城に連れてこられた。
(これは、RPGのお決まりの流れ……)
「魔王城に捕らわれている、我が王妃を連れ戻してくれ」
「やっぱり魔王か……」
「魔王城は、南に徒歩20分の距離にある」
「近くないですか!?」
「勇者であるおぬしに、手間を取らせるわけにはいかないからな」
「移動時間への配慮!? それよりなぜ、初対面の僕を勇者と思われるんです?」
「北の大陸での、おぬしの活躍は聞いておる」
「この世界のお金なくて、お使いクエストをしらみ潰しにやっただけで、中ボス戦すらないんですけど……」
できれば、初戦闘が魔王というのは避けたい。
「ほっほっほっ。まあ、きっと大丈夫であろう」
「軽い!」
「それに、旅立ちに際し、おぬしに1万Gを用意した」
「1万G!? えっ、それは太っ腹!」
こういうのって、二桁Gか初期装備しかくれないのが、あるあるなのに。
大臣がお金を持ってきて、僕は大金を思わず受け取った。
すると、王様はニヤリと笑う。
「よし、受け取ったな?」
「あっ……」
「ほっほっほっ。これで、断れなくなったな。今さら、返すとは言わせんぞ」
「しまった!」
「さあ、勇者よ。行くのじゃ!」
こうして、レベル1の僕の冒険(?)が始まった。
【知らなくても困らない話・初めての異世界】
「ここは!?」
気づくと、見知らぬ草原に立っていた。手には、キーホルダーだった剣を持っている。
呆然としていると、後ろから何かの気配がした。振り返ると、ツルツルでウネウネした半透明な何かが遅いかかってきた。
「わー!」
しかし、その何かは瞬時に倒された。
「大丈夫か、ボウズ?」
旅商人Lv99が現れた。
「はっ、はい……」
「これは、勇者じゃないか! ついに、勇者が召喚されたんだなー」
「勇者って? 僕は、家に帰りたいんですけど……」
「ああ、俺は知らんよ。隣の大陸の王様なら、何か知ってるんじゃないか?」
「隣の大陸に行くには、どうしたらいいですか!?」
「船代、8000Gかかるぞ」
「円じゃなく、G?」
「Gだ。金がないなら、良い働き口紹介してやるよ」
ネズミ退治の依頼を受けた。猫Lv99が倒した!
盗賊討伐の依頼を受けた。カラスLv99が倒した! しかし、宝石を盗まれた……。
お弁当配達の依頼を受けた。足の速さが3上がった!
船代を手に入れた。




