1話
この学校の桜の木は年中咲いている。
春も、夏も、秋も、冬も。
薄い色を象って静かに散っている。
決して枯れることはない。
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ここ、Lyre Pulchram魔法高等学校は地区内外の評判も良く安定していると評判みたい。
魔法を使えない人が暮らす地域でもその名前は有名だったりする。
私はこの魔法高等学校の2年生。1年経ってやっと慣れたこの学校の桜の木が私は好き。
「おはよう、八弥さん」
「渕裏葉くん。おはよう!」
声をかけてきたのは渕裏葉奏くん。同じ学年で隣のクラスだけど、何かと気さくに話しかけてくれる。いつも優しくて頭もいい。
「こんなところでどうしたの?」
「あ、桜見てて」
「桜?あぁ、正門の?」
「そう。ほら、ここの桜ってすごく大きいし、ずっと咲いたままだし、見てて飽きないなーって」
「珍しいね…皆、見慣れてしまうのに」
「そうだね、自分でもそう思うよ」
「入ってすぐはすごいすごいって見るんだけどね」
正門の傍に立つ大きな桜の木は、この学校のシンボル。理事長先生が特殊な魔法をかけていて、1年中桜の花が咲いてる。
私は魔法が使える世界があることを知らなかった。もちろん知っていて魔法を使えない人もいる。
家族も魔法が使えなかったし、魔法界に興味があまりなかったみたいで、その手の話題はなかった。もしかしたらテレビで話があったかもしれないけど、いまいち覚えてない。
そんな私は魔法を知らないまま育って、素質があるからとこの学校に入学できたときは本当に吃驚した。
魔法は何でもできる、なんて御伽話だったのに。
「それじゃ、八弥さん。僕は先生に呼ばれてるから」
「そう。じゃぁ、またね」
渕裏葉君と別れる。すぐに別の声がかかった。
「みおちゃん」
「ささきくん」
「今日も桜を見てるの?」
「うん」
花宴ささきくん。同じクラスの図書委員。お互い本好きで何かと話が合う。
ささきくんはよく気使って話しかけてくれる。彼もまた成績優秀者で渕裏葉くんといつも上位を争ってる。うん、私の周りはとても勉強できる人が揃ってるかも。
「授業、もうすぐだから気を付けてね」
「うん、ありがとう」
ささきくんと別れてすぐ、立て続けに声をかけられた。
「みおうちゃーん!!」
「あ、せんぱ」
「おはよう!元気?!俺はこの通り」
「元気そうでなによりです」
真木柱愁先輩。学年1つ上で、私の入学当時、ちょっとしたところを助けてもらってから、毎日こんな感じ。いつも元気で、大抵走ってここまできてるみたい。
「この前の話がまだ途中だったよね?!これから面白くなるとこだったのに残念だったよ」
「あの魔法植物の?」
「そうそう!なんだけど、うさぎちゃんの課題がハードでさ…。ちょっと今日頑張らないときついんだ……その話、課題終わってからでもいい?」
「大丈夫ですよ。天元先生の課題、難しいのばかりですもんね」
「そうなんだよ!でも大丈夫、今回俺の得意な分野だし、今日中に目処つけられるから!」
「わかりました。楽しみにしてますね」
「みおうちゃん…!俺、頑張るからー!」
先輩は相変わらず元気よく走って去って行った。先輩といると元気が出てくるから、会えると嬉しい。
よし、そろそろ時間だし、教室に戻ろう。
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「授業始めるよー」
今日の授業は天元卯夢先生。男女問わず人気の高い先生ですごい美人さん。
天元先生の授業はわかりやすいし、おもしろいし、中には人じゃないとか噂もあるぐらい…先生はそれを聞いて笑っていたけど。
「あ、今日課題だすよ。魔法生物・聖獣の発生源の推測と過程について、5ページレポート~1週間後で」
「1週間て短くね?!」
「聖獣って超難易度高いじゃん!」
「調べれば書ける。まぁ、ちょっと難しい文献にしかないかもねぇ…」
「俺ら読めんの?!」
「古代語で書かれていたら、それもまた勉強だね」
笑顔満面の天元先生に、悲鳴を上げるクラス一同。いつものことだけど、先生、本当難しい課題を出すのが好きみたい。
聖獣にも種類は結構あるだろうけど、古代語読める学生、この学校にいるのかなぁ…。辞書は視たことある気がするけど…実際習うとしたら魔法大学院に入らないと深く学べないんじゃ…。
「まぁ、頑張れ!可愛い学生諸君は勉学に泣かされ…もとい、励むといい!」
楽しそうに先生は教室を後にした。
んー、どうしようかなぁ。
「八弥さん」
「渕裏葉くん」
「どうしたの?難しい顔してたけど」
「天元先生の課題がまた難しいのだったの」
「あぁ…天元先生はいつも容赦ないからね」
「渕裏葉くんのとこは課題出てないの?」
「天元先生の授業は明日だから、その時かな。どんな課題だったの?」
「魔法生物の聖獣の…発生源の推測と過程、だったかな」
「…それなら、確か図書館にちょうどいい本があったよ」
「え、本当?!」
「最近出版された本で読みやすかったんだ」
「それ、タイトルなんていうの!?」
私は渕裏葉くんから本のタイトルをきいて、すぐに図書館に行くことにした。
日が経つと皆が図書館で本を借りていくからレポート書くのが難しくなるし、渕裏葉くんも図書館に行くといいってすすめてくれたのもあって、今、図書館棟にいる。
「みおちゃん」
「ささきくん」
今日はささきくんの当番だったみたい。
「ウサちゃんの課題?」
「そうそう」
ウサちゃんとは天元先生で、先輩やささきくんは下の名前で先生を呼んでたりする。
先生が気にしないタイプだし、年下の男子からそう言われるといい気分になると自ら言っていた。
「いくつか本は確保しておいたよ」
「本当!?」
ささきくん、本当優しい!と思いつつ、本を物色。
その中で、さっき渕裏葉くんが言っていた本があった。
「これ借りてもいい?」
「うん。それ、ざっと読んだけど、すごく分かりやすいと思う。読んだら次貸してね?」
「もちろん!」
そうしてさくっと目的の本をゲットできた。
それだけで終わるのもと思って他の本も物色する。
この学校の図書館の蔵書数は近隣の高校の中でも1番で、1日いてもきっと飽きないと思う。
それぐらいおもしろい本がたくさんある。
本を手にとっては戻してみたり、少し立ち読んでみたりしている時だった。
すっと影が差した。
ちょうど私は大きな窓の傍にいて。
(あれ?影?もうとっくに日が暮れているのに…?)
そう思って、ふと窓の外を見やる。
瞬間、息をのんだ。
夜空にある光がどこにもない。
文字通り、窓の外の向こうは真っ暗だった。
毎週日曜更新予定です。




