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さっきから大人しく聞いていれば……ゲームしてた頃から偉そうだとは思ってたけど、実際目の当たりにするとさらに上を行ってる気がする。


相変わらず二人とも目の前でバチバチやってるけど。これ、何か手助けした方がいいのかな?だけどあんまり本筋にかかわって色々崩すと良くないような……。

でも、とりあえずこれ以上は人の目もあるし言い争いは止めた方が良さそうだ。

俺は二人の間に割って入る。


「すみません、少しよろしいですか?」


「何だ?……ああ、そこに居たのか」



ムッカーーーーーー!!

最初から隣にいたっつーの!見えない訳無いだろうが!お前の目は節穴かこんちくしょー。ほんといちいち癇に障る奴だ!!

だが。

入学初日からこんなところでキレ散らかして、ヤバい奴認定されたら西原伊織の学校生活は終わってしまう。

俺はひたすら我慢し、ニコリと笑顔を浮かべる。



「お互い言いたいことはあるかと思います。ですが、一応学校内の廊下ですので……後ほどゆっくりと話し合ったらいかかでしょう」


そう言うと、どうやら天逢坂も周りを見渡して悟ったらしい。相変わらず涼し気な顔をしていたが、野次馬を一瞥すると目を細め、フンと鼻を鳴らす。


「釈然としないがな。まあ、この話はまた後でゆっくりするか」


雫、逃げるなよ。と言うと、踵を翻してまさにモーゼのごとく生徒達の間を優雅に割って歩いて行った。間際にジッと顔を見られた気がするが……気のせいか?


様子を見守っていた生徒達も天逢坂が居なくなったことで散り散りになった。俺はホッと胸を撫でおろした。


「雫さん、大丈夫ですか?」


「う…ん、ごめんね、伊織ちゃん」


雫ちゃんは眉毛を下げて笑った顔を見せたが、少しだけ手が震えていた。

無理もない、あんな風に色んな感情が入り混じった視線で見られたら誰だって怖いはず。俺だって嫌だし。


俺は雫ちゃんの震える手を両手で包む。気休めかもしれないが、これで少しでも震えが収まれば良いんだけど。



「みんなもう居なくなりましたから。安心して大丈夫ですよ」


どうにか落ち着けるよう、片手でポンと頭を撫でた。

雫ちゃんは一瞬目を丸くし、その瞬間ボンッと音が出そうなくらい顔を真っ赤にしてしまった。


「し、雫さん、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですけど……」


「だっ、だ、大丈夫!!心配かけてご、ごごごごめんなさい!」


そう言って思い切り顔を逸らされてしまった。

……うーん、やっぱり女心って難しいな。




雫ちゃんをクラスまで送り届けると、その足で自分のクラスへと向かう。帰りも一緒に帰ろうね!と雫ちゃんから興奮気味に言われたので喜んでお受けした。

1-Aと1-Eクラスは校舎が違う。と言っても、歩いて10分くらいの距離なので大した事はない。

俺は足早に廊下を通り過ぎ、自身のクラスへ到着した。扉を開けて中に入ると、皆席に座って隣の席や周りと談笑しているのが見えた。

流石はお金持ち学校だ。席を離れたり机に座る生徒は一人も居ない。



すぐに自分の席順を確認し、そそくさと着席する。机にはご丁寧に名前が貼られていたので迷うことは無かった。

上等な皮の鞄を机の脇にかけていると、外部生が物珍しいのか、チラチラと視線を感じる。

まさに動物園の檻の中のような、監視されているような息苦しさを感じた。

でもまあ、この視線はしばらく俺に付きまとうんだろう。俺は誰にもバレないように小さく溜息を吐いた。


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