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沼の辺りを取り囲むように竹林が生育している。
防風林のように、周りから沼の姿を覆い隠すそれは今、骸骨を退治しようとしていたシャオの姿さえも隠そうとしていた。
夜の空を突き刺しそうなほどに伸びた竹の群れに、笹で覆い尽くされた地面。
歩くだけでも、着物の肩の部分に青々とした笹が落ちてくる。
抜刀した刀を携えたまま、亡霊はシャオを探す素振りを続けている。
笹を踏みしめる足音がする。骸骨はそれをたよりにゆっくりと向かっている。
同じところをぐるぐるとめぐりながら。
堂々巡りをしばらく続けたあと。
「流石に逃げ切れるわけはないようね」
観念したかのように骸骨の前に姿を表すシャオだった。
「本当なら、夜が開けるまで逃げ通していたかったけれど、この広い学校でそれをするのは私でも骨が折れる。さっさと蹴りをつけたかったけど、それも無理。」
だから、とシャオはにやりと笑う。
「ここで決着をつける。かかってきなさいよ。狂剣士さん」
そう言われたのがきっかけのようだった。
骸骨の刀が牙を向く。
だが。
二人を隔てる竹が邪魔をする。
ぬらりと骸骨が動こうにも、竹が進路を邪魔する。
シャオはそれが狙いだったようだ。
背を向けて、逃げ出した彼女と骸骨の差がなかなか縮まらない。
その時だった。骸骨の刀が一閃し目の前の竹が袈裟斬りに切られたのは。
ゆっくりと、ずり落ちていった幹が大きな音をたてて斃れる。
(なんとなく)
シャオは、目の前のそれを見せつけられて
(予想はしていたけど)
それでもまだ平静を保とうとしたけれど
(やっぱり無理)
うまく、二人を遮るように使っていた竹の壁をいとも容易く、両断したのだから。
斜めの切れ口が、すずずっとずれ込み倒れて。
真上から落ちてくる笹がかさを増す。
豪雨のように降ってくるそれをくぐってやってくる骸骨。懐にしまっていた刀に手をかけるたと思いきや、落ちてくる笹すらも両断するかのように、一気に引き抜く。
無防備となったシャオを牙にかけようと。