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エピローグ

 深川の森では、毎晩“化け物”が鳴いている。


 白い刃の怪物。


 黒い糸の怪物。


 二匹は夜になるたび、森を壊す。


 桜が散る。


 黒糸が裂ける。


 木々が倒れる。


 人も妖怪も近づかない。


 近づけば死ぬから。


 白い怪物は、黒い糸を斬る。


 何度も。


 何度も。


 まるで壊れた獣みたいに。


 黒い怪物は、白い怪物を締め上げる。


 骨が軋むほど強く。


 肉が裂けるほど鋭く。


 それでも。


 二匹は互いを殺さない。


 白い怪物は、

 黒い糸に身体を裂かれる時だけ、

 少しだけ静かになる。


 黒い怪物は、

 白い刃に身体を傷つけられる時だけ、

 目を細める。


 理由は分からない。


 もう考えられない。


 心も。


 言葉も。


 名前も失った。


 それでも。


 二匹の化け物は、

 互いの傷の中にだけ、

 理由の分からない安心を感じていた。


 まるで昔、

 そうして抱き合っていたことを、

 身体だけが覚えているみたいに。


 夜の森に、

 桜が散る。


 黒い糸が揺れる。


 そして今夜も、

 二匹の化け物は、

 壊れるまで互いを求め続ける。

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