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チートな真眼の少年は、異世界を満喫する! ~金髪幼女を助けたら、未亡人のママさん冒険者とも仲良くなりました♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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188/188

188・おかえりなさい〈※ファナ視点〉

(もうすぐ、お兄様が帰ってくる)


 ドキドキ


 私の胸は高鳴りました。



 ――私の名前は、ファナ・ナイド。



 アレス・ナイドとクレフィーン・ナイドの娘であり、現在は、聖マトゥ教会の神官として、王都の大神殿に勤めている19歳の女です。


 お兄様とは、シンイチ・トウヤマお兄様のこと。


 お兄様は異国の出身で、私との出会いは、もう10年も前の出来事になります。


 そう……あの日。


 あの運命の日、私はお兄様に命を助けられました。


 まるで、戯曲の王子様のようでした。


 物心ついた時には父親はなく、冒険者のお母様との2人暮らしでした。


 お兄様は、そんな私のお母様のいない1人ぼっちの時間の心の寂しさを埋めてくれ、気づけば、お母様の笑顔も取り戻してくれました。



 ――今の私の幸せは、あの人なしではありえません。



 現在、お兄様は25歳の青年です。


 そして、お兄様とクレフィーンお母様が結婚したのは9年前でした。


 お兄様が16歳で成人し、その翌月でしたね。


 結婚式の日のお母様はとても綺麗で、でも、お兄様はガチガチに緊張していらっしゃったのを覚えています。


(ふふっ)


 なので、お兄様はお父様でもあります。


 ですがお兄様は、私の婚約者でもあるので、今も『お兄様』と呼んでいます。


 そんなお兄様には、7年前、お母様との間に双子の娘が生まれました。


 私の妹であり、姪でもあります。


 2人ともとても元気で可愛くて、今は私とクランハウスで一緒に暮らしています。


 2児の父であるお兄様は、私の婚約者です。


 本当は、私が成人した16歳の時に結婚するつもりでした。


 ですが、現在のお兄様は、お母様たちと一緒にアークレイン王国だけでなく、アーク大陸全土を飛び回っていてなかなか会えません。


 正直、寂しいです……。


 でも、それも全て、私のため。


 私が将来、女神マトゥを生む『神巫女』で、お兄様はその脅威となる『邪竜の腐肉』と『高濃度汚染体』の駆除に奔走してくれているのです。



 ――その事実は、私の16回目の誕生日の日に教わりました。



 驚きと、そして、恐怖がありました。


 ですが、



「――大丈夫。僕がファナちゃんを守るから」



 と、お兄様が言いました。


 いつもの笑顔で。


 別に何でもないことなんだよ、とでも言う風に……。


 だから、私も『ああ、怖くないんだ』と素直に思えてしまいました。


 我ながら単純です。


 でも、本当に怖いことのない日々でした。


 私の知らない所で、お兄様もお母様も、皆、大変な思いをしていたのでしょう。


 ですが、私自身は、何もない平穏な日々の中に居ました。


 この19年間、ずっと……。


(ああ……お兄様)


 ファナは……私は、ずっとお兄様に守られています。


 それは喜びで。


 お兄様からの祝福で。


 もう、私は、お兄様なしでは生きていけません。


 16歳となって成人した私は、マリージアおばあ様――教皇様の伝手を頼りに、聖マトゥ教会の神官となりました。


 お兄様の無事を祈るため。


 そして、お兄様に相応しい女になるために。


 マリージアおばあ様も快く協力してくれると約束してくれました。


 現在の19歳の私は、教皇直属の神官です。


 何となくですが……将来、彼女は私に教皇の跡を継がせようとしているようにも思います。


(私が、神巫女だから)


 女神マトゥを生む、聖母だから。


 ふと思います。


 その子は、きっとお兄様との間の子でしょう。


 女神の祝福と加護を受けた、お兄様。


 その力を宿す精は私に注がれ、結果、女神自身の器となり自我を宿す。


 ああ……。


 女神マトゥの計画。


 きっと、お兄様が女神の力を授かった日から、全ては運命付けられていたのかもしれませんね。


 …………。


 さて、お母様のお仲間の話もしましょう。


 そう、アルタミナおば様とレイアおば様の話です。


 黒獅子の獣人であるアルタミナおば様は、7年前、『煌金級』の称号を返上し、冒険者を引退して、なんと結婚をしました。


 お相手は、オーディンさん。


 熱烈なプロポーズを何度も受け、ついに根負けして承諾したそうです。


 おば様曰く、


「長い付き合いだから、絆されちゃったんだよねぇ」


 とのこと。


 ただ、同時期、お母様が双子を生みました。


 おば様は、


「その時のフィンの幸せそうな表情を見てたら、なんか、母親になるのもいいな……って思えちゃってさ」


 と、照れ臭そうに続けました。


 そんなアルタミナおば様は、現在、オーディンさんとの間で5人の子宝に恵まれました。


 前に語っていた通り、今のおば様も日々、とても幸せそうな顔をしています。


 また、おば様は現在、元・煌金級の肩書を所持した有名人のまま、冒険者ギルドのギルド職員として働いています。


 若手の指導教官として、新人をしごき。


 また人脈を生かして、お兄様とお母様の冒険のサポートを担当してくれています。


 たまに、ギルド長に怒られることもあるそうですが……。


 仕事が終わったあとや休みの日は、5人の我が子と一緒に、留守中のお兄様とお母様の子供の面倒も見てくれたりもしますね。


 子供同士も仲良しで、


「ふふ、いいねぇ」


 と、眺めるおば様は、いつもニコニコしています。


 …………。


 次は、レイアおば様の話。


 アルタミナおば様が引退したため、『月輪の花』クランのクラン長は、自然とレイアおば様に決まりました。


 本人は、


「面倒な責任を負うのは嫌いなんだけど……」


 と言いつつ、引き受けました。


 多分、お兄様とお母様を助けるため、またアルタミナおば様との友情ゆえなのでしょう。


 就任して、7年。


 ですが、美貌は健在で。


 いえ、長命なエルフらしく容姿は変わらず、けれど、年月に磨かれた美がより宿っているようにも思えます。


 ……少し羨ましいですね。


 レイアおば様は、今も現役の冒険者です。


 この10年間、お兄様、お母様と一緒に大陸中を飛び回っています。


 数年前の帰還時、おば様と話しました。


 レイアおば様は、


「あの2人だけだと心配なのよ。だから、私が一緒に行かないと駄目なのよね」


 と、ため息交じりにこぼしていました。


(……なるほど)


 心当たりがあります。


 お兄様は時々無邪気で、お母様はお兄様のすることは全面的に肯定してしまうので、誰か止める人がいないと大変なことになるかもしれません。


 王国内ならともかく、諸外国にも行くのです。


 下手したら、


(国際問題にもなりかねないですね)


 おば様の心配も納得です。


 ごめんなさい。


(お手数かけますが、お兄様とお母様をお願いします、レイアおば様)


 心の中で、手を合わせます。


 ですが、口調は嫌がりながらも、何となく、レイアおば様は、自身のその役割を楽しんでいるようにも見えました。


 ……見守る存在。


 私やお兄様、お母様が年を取り、老人になっても、レイアおば様は変わらず若いままで、ずっと私たち家族を見守ってくれるのでしょう。


 そして今日も、お兄様たちを見守ってくれているはずです。


 …………。


 最後に、お兄様の話を。


 お兄様は5年前、『黒神級』の冒険者になりました。


 それは、煌金級より上の伝説の階級です。


 アーク大陸全土で、たったの3人、歴史上でも8人目の快挙です。


 大陸各国を移動しながら『秘術の目』を使い、邪竜関連のみならず、王女誘拐事件、大規模魔物災害、小国家間の紛争、国家転覆計画などなど、各国の問題を次々と解決したため、正式に任じられることになったのです。


 つまり、大陸の英雄。


 今のお兄様は、全国の王家や帝室が認める本物の英雄となったのです。


(さすが、お兄様)


 顔は知らずとも、大陸中の人が知っています。



 ――真眼聖王。



 その異名や、お兄様の名を。


 ただ本人は、


「まぁ、肩書だけだよ。国家間の移動が無制限になったから、便利だけどね」 


 と、笑っていました。


 お兄様本人だけが自覚ありません。


 お母様含め、周りの人は皆、苦笑していました。


 私も同様で、でも、


(お兄様らしい)


 そんな浮世離れした性格も含め、私はお兄様が大好きです。


 …………。


 …………。


 …………。


 そのお兄様が、もうすぐ帰ってきます。


 ドキドキ


 胸が高鳴ります。


 今度の帰郷時、お兄様は私と結婚してくれると約束してくれました。


 そう、結婚です。


 婚約者は、もう卒業なのです。


(……私が、お兄様と)


 想像するだけで、顔が熱い。


 憧れのお母様に似せるため、今の私は髪を長く伸ばしていて、今では腰まで届いています。


 少しは、大人に見えるでしょうか?


 ……お母様は、昔から大人っぽくて。


 今は、37歳。


 女としては、脂が乗りきっています。


 しかも、年齢に反し見た目は若々しいままで、同性から見ても美しくて。



 ――妙齢の美女。



 まさに、その言葉が相応しい魅力的な女性です。


 特に、その胸も……。


(…………)


 自分の胸を見ます。


 遺伝しなかったのか、程々の大きさです。


 無念です……。


 でも、お兄様に愛されたら、もしかしたらお母様のように大きくなるのかも……?


(っっ)


 想像したら、顔が熱くなりました。


 わ、私ったら何を考えているのでしょう?


 恥ずかしいです……。


 自室で、私は赤くなった頬を押さえながら、内心、悶えてしまいました。


 と、その時です。


 コンコン


 部屋の扉が、外からノックされました。


「あ、はい」


 私はハッとし、返事をします。


 扉は開かず、


「ファナ様、先触れが届きました。もうすぐ、シンイチ様、クレフィーン様たちがクランハウスに到着なさるそうですよ」


「!」


 ハンナおば様の声でした。


 私は息を飲み、


「わかりました、すぐに参ります」


 と、返事をしました。


 椅子から立ち上がり、鏡の前に向かって、服を整えます。


 前髪も触り、


(ん……よし)


 納得して、私は部屋を出ました。


 廊下では、ハンナおば様が待っていてくれました。


 私は聞きます。


「双子は?」


「今はお昼寝中で、ぐっすりで……起こしましょうか?」


 と、確認されました。


 私は微笑み、


「いえ、可哀想なので眠らせておきましょう。今回の帰還では、お兄様もお母様も長く滞在される予定だそうで、あとで会う時間はたっぷりありますから」


「承知しました」


 優しい表情で頷くおば様。


 私も頷き、廊下を歩き出します。


 ……皆が帰る家。


(その家を守り、そして、帰ってくる人たちを、きちんと出迎えること)


 それは、昔からの私の大切なお役目。


 ハンナおば様と階段を降り、やがて玄関に辿り着くと、ジーグルおじ様がすでにいて、私に向かって微笑みました。


 私も微笑み、頷きます。


 館の管理人であるご夫妻は、玄関正面の場所を開けてくれました。


 私は、その位置に立ちます。


 目を閉じ、深く呼吸します。


 静寂の世界。


 ……どれくらい時間が流れたのか?


 あまり長くはない時間だったと思います。


 ふと、私の澄ました耳に、


 カッ カッ


 屋敷の外から、石畳を打つ竜車の蹄の音が聞こえました。


 ドクン


 心臓が高鳴ります。


 ああ、もうすぐ……!


 もうすぐ、お兄様に会える!


 緊張と、興奮と、喜びと、湧き上がる感情を必死に抑えます。


(落ち着いて、ファナ)


 両手をお腹の上で握り、


 カッ


 竜車の音が止まりました。


 カタン、カタンと音が連続して、やがて、それも消えます。


 数秒の空白があり、


 カチャ


(!)


 玄関の扉のノブが動きました。


 ゆっくりと扉が開き、隙間から太陽の光が差し込みます。


 私は青い瞳を細めました。


 光の中に、3人の人影が見えます。


 前にいる2人は寄り添いながら立っていて、すぐに私を見つけました。


(――――)


 感情が溢れます。


 私は両手を広げ、駆け出しました。


 そして、



「――おかえりなさい、シンイチお兄様、クレフィーンお母様!」

ご覧頂き、ありがとうございました。



今話にて『チートな真眼の少年は、異世界を満喫する!』も完結です。


およそ7ヶ月半の連載となりましたが、こうして最後まで読んで下さって、本当にありがとうございます♪

自分自身、無事、最後まで書き切れてホッとしています♪


執筆は基本楽しいのですが、やはり苦しい時もあり、だからこそ、皆さんに頂いたブクマや評価、感想、アクセス数などが本当に励みとなりました。

改めまして、皆さんに心から感謝を……!

そして、この物語を読んで、どうか少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。


最後にもう1度、この作品を見つけ、読んで下さって、本当に、本当にありがとうございました!



月ノ宮マクラ

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― 新着の感想 ―
面白かった・・・最後は成長したファナちゃんが見れて良かったし、クレフィーンさんとも子宝に恵まれて良かった……お母様とのイチャラブは思ったより少なかったとはいえ、その分濃密で堪能しました・・・良い作品を…
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