35ー神託2
光の中から現れたのは、生前で飲んだ事がある、日本酒だった。
まさに一升瓶の日本酒【九海山】だ、この銘柄は新潟の銘酒といっていいだろう。
ん、おいおい、これ中身が入ってないんだけど…これだけ?と神託ボタンを押しても反応はない…。
ん〜どういう事だ?神託とは、神々からの贈り物のはずだ…これ贈り物か?
神託レベルが、あがれば中身が入るようになるとかなのかな?う〜ん、わからん。
いつもの通り考えても無駄なので、空のビンを持ち上げビン自体を調べてみたが、生前に見たことがあるビンだった。
「空瓶、貰ってもな〜」
久しぶりに見た九海山のラベルが貼られた瓶をコロコロと回していると、そういえば、ここの世界って、ガラス瓶って、あるのかなぁ?
もしかしたら、カラだけど売れるかも知れないな〜
さっそく、空瓶をリックに入れて、街にくり出してみた。
バンガードの街は、ラークスの街のように区画されているらしく、地区ごとに分かれているらしい。
街を作る際に、誰もがわかるように作っていくのだろうな〜と思われた。
商業地域の場所にさっそく行ってみた。
バンガードの商業地域を、歩いて空瓶が売れそうな店がないかと探してみると、雑貨を取り扱っていそうな店を発見した。
ものは試しだ、聞いてみよう。
「すいません、物を売りたいんですが〜大丈夫ですか?」
「ああ、物売だな、いいぞ」
この店の主人らしき人が樽を磨きながら答えてくれた。
「ありがとうございます、物はこれなんですけど…」
空瓶を取り出して、主人に見せると、
「ん、なんだこれ?」
主人が空瓶を手にとり色々な角度から見ている。
「これってガラスで出来てる瓶だよなぁ?」
「はい、本来は中にお酒が入ってるんですが」
「ほう、ガラスの瓶か、ガラス自体はそんなに珍しくはないんだが、この形状はおもしろいな」
「形状ですか?」
「なんだお前、珍しいから、持ってきたんじゃないのか?」
「いや〜、それは私の、いや俺の故郷の物なんですよ、このあたりでそんな感じの商品がないので、もしかしたら売れるかなぁと…」
「ほう、お前の故郷の品物か、そう言われれば、この文字は見たことがね〜な、これなんて読むんだ?」
「それ、キュウカイザンと呼ぶんですよ、その瓶の中のお酒の名前なんですけどね」
「ほう〜、聞いて事がない名前と文字だな、で 中身はないが、この瓶が売りたいって事だよな?」
ん、この感じはもしかして、価値があるのかな?
「そうですね、割れ物ですし、持ち運びが大変なので、売れるなら売りたいですね」
「うむ、そうだなぁ、ガラスの瓶か…本来は酒をいれる瓶…」
主人は長考に入っていた。
「売れないなら、いいですよ」と空瓶を取り上げようとすると、
「ま、待て!今、考えてるんだから!」
「はあ〜」
しばらくすると主人が、これでどうだ?と指を4本向けてきた。
4銅貨か、考えていた割に大した価値もなかったなと思い、それぐらいの価値なら、生前の思い出として、手元に置いておこうと「それなら、持って帰ります」と答えると「お前、結構、がめついな!」と言われた。
何ががめついだと思ったが、そう言われれてもここは引かない。
「いや、俺の故郷の品物だし、価値がないなら、持って帰るって当然じゃないですか?」
「…わかった、それを言われちゃ仕方がね〜、金貨1枚出そう、それなら売ってくれるよなぁ?」
ん、金貨1枚って言ったよなぁ、マジかよ!という事はさっきの4本は銀貨40枚って事だったんかい!わかりずらいんですけど結果として値上げ交渉してしまった訳だ。
「あ、ありがとうございます、そこまで価値ある評価を頂いて、勿論、お売りしますよ」
「そう言って貰えて助かるよ、今、金持ってくるから待っていてくれ」主人は空瓶を持ったまま、裏に下がって行った。
ラッキーすぎる、でもそこまでの価値があるとは思えないんだけどなぁ
「はいよ、お待たせ」とお金を貰い、何故、そこまで価値をつけてくれたのか聞いてみた。
この瓶は、特殊な加工を施してあって珍しい。
ガラス自体、あまり出回っていないのは作るのが手間だし、貴族の方やお金持ちが、窓に使うくらいでこういう形状にしてガラスを使っているのは、見たことがない。
だから、コレを参考に、色々とやれるのではないかと思いついたという訳だ。
「お前、コレってこれしかないのか?」
「今は、それしかないですね」
「そうか、また売れるなら頼むよ、さすがに金貨1枚は出せね〜けどな」
「また故郷から貰えてたら、持ってきますよ」
「お前の故郷って何処にあるんだ?俺も、昔は結構歩き回ったんだが、こんな品物をお目にかかった事がねーぞ」
「…そうですね、遥か西にある島国ですよ…」
「遥か西の島国って、ケーオー諸島か、それは遠いな、流石の俺でも行った事はね〜な〜」
「流石に遠いので、おいそれと品物が、入ってくる事はありませんので期待はしないでくださいね」
「わかった、じゃ入ったら必ず頼むぞ!これは先行投資だからな!他に売られては商売にならん!本当に頼むぞ!」
ガシガシと俺の肩をゆすっているので、わかりました、と答えるしかなかった、遥か西にそんな島国があるとはこれからはこの島国出身という事にしようと心に誓う。
思わぬ収入が入ったので、このまま、武器、防具の新調をする事にした。
あの関西弁の男に斬られた時に、防具はボロボロになってしまったし、俺を回収してくれた際、余程、慌てたようで俺の武器も回収してくれてなかったのだ、そのお陰でこの街の神官に治療してもらい助かったので感謝の言葉しかでない。
武器防具屋は、若いお姉さんが、タンクトップの姿で、カウンターに腰をかけていた。
「すいません、武器と防具が欲しいのですが〜」
「あら、お客様が来ちゃったわ、ごめんね、今、ここの主人が留守していて、私が留守番しているのよ〜」
「そうでしたか、どのくらいで戻られますか?急ぎではないので、時間がかかるようなら出直しますが?」
「君、冒険者のように思えたけど、貴族様のご子息?」
「いえ、冒険者ですよ、武器と防具が壊れてしまったもので買いにきたんです」
「な〜んだ〜、君の喋り方が、あまりにも綺麗だったから勘違いしちゃったじゃない!」
女性は、軽く、俺をこずいたが、俺は病み上がりでそのまま尻もちをついてしまった。
「ゴメンなさい、そんな簡単に倒れるとは思わなかったんで…」
手を出してもらったのでその手をとり、立ち上がる。
「病み上がりなもので、自分が思っていた以上に身体がついてきてなかったようです…」
改めて傷口を見てみる、綺麗に斬られた後は残っていた。
やはり想像以上に血を流しすぎたのだ、魔法で傷口は塞がるが、血まで増やす事はできないんだろう。
「君、そんな傷を受けてよく生きていたわね…それなのに私…本当にゴメンね」
女性が、謝った際、胸が見えてしまったので、慌てて「い、いいんですよ!気にしないでください!俺はハヤミって言います」
「ハヤミ君、君っていい子ね、私はイリー!お礼に私が武器防具を選んであげるわ!」
イリーさんは、俺の手をとり、武器が並んでいるコーナーに連れて行ってくれた。
俺は弓が、見たいというと、「弓ね、わかったわ」と壁に取り付いてる弓一式を全て取り外そうとしているので、「イリーさん!1度に全部持てないですよ!」と声をかけた。
「ん、ああ、それもそうね〜」と弓を2つ、持ってきた。
イリーさんは、天然ぽいが、弓に詳しく、持ってきた弓の説明をしてくれている。
俺は、ど〜も、先程の件から目がイリーさんの胸にいってしまい、話を集中して聞けないので、少し待ってもらえませんかと、1度、武器防具屋から出る。
若くなった所為なのか、下半身のいう事が効かなかったのだ…。
すると、イリーさんは、「ハヤミ君、何処に行くのよ!」と後ろから抱きついてきたのだった。




