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夢を、見た。
真夜中の海の真ん中で、私は小さなボートに乗っていた。
不思議な程、海は穏やかに凪いで、ボートはまるで鏡の上を滑る様に漂い続ける。
ふと、ボートの縁から覗いた、水の面の向こう側には、絶対の深さと、絶対の冷たさと、絶対の闇と、絶対の静寂と、絶対の死が見えた。
まるで全ての光を吸い込んで逃さない魔法の水晶玉のような二つの目玉と、棘の冠の様な巨大な顎を持った巨大な魚が、静かに私の事を、見つめていた。
それが、魔界の怪物なのか、或いは巨大な海棲生物なのかは分からない。
ただ、確実に心に刻み込まれるのは、ほんの直ぐ其処に、手を伸ばせば届く程の距離に、確実な死があると言う事だ。
そう言えば、リクは何処に行ってしまったのだろうか? 先程まで、あれほど激しく吠えていたリクの姿が見当たらない。
小さなボートには、リクの代わりに、あの、可愛らしい「悪魔」の男の子が座っていた。
藤森:「リクは何処へ行ったの?」
//:「僕はそのリクって子じゃないから判らないよ、リクって誰なの?」
…リクって、誰だったんだろう?
何だか、取り返しのつかない事をしてしまった様な、ウシロメタサが、私を脅えさせる。
殆ど顔も判らないような微かな月明かりの下で、それでも男の子は本当に可愛らしかった。 でもどうして私は、二人きりでこんな所に居るのだろう?
これは夢に違いないのだ。
藤森:「アンタって、本当に悪魔なの?」
//:「その「悪魔」と言うカテゴリは、君達人間が勝手に決めたモノだよ。」
藤森:「悪魔って、もっとオドロオドロシイ格好をしてるんじゃなかったの?」
//:「僕をどんな風に認識するかは、君達が決める事で、僕が責められる様な事じゃないよ。」
可愛らしい顔をしてるくせに、何て理屈っぽい悪魔なんだろう?
緩やかに揺れるボートの上で、私は憎たらしい事ばかり言う男の子に、いつの間にか、…見蕩れていた。
藤森:「アンタが、昔、酷い事件を起こしたの?」
//:「「宿主」の言動は、「宿主自身」の「望み」に依存するのであって、僕の関知する処じゃないよ。」
藤森:「どうして、私にとり憑いたの?」
//:「それも間違いだよ、君が僕の欠片を見つけて、勝手に有難がって、勝手に拾ったんだ。」
可愛らしい顔をしてるくせに、何て無責任な悪魔なんだろう?
真っ暗な水平線の彼方で、微かな光が差す様に、瞼が、…開きかけている。
藤森:「この侭じゃ、アンタも、私も、酷い目に遭わされるのよ。悪魔なら魔法か何かでアイツから逃げ出せないの?」//:「僕は宿主の身体を使ってでしか、この世に干渉する事はできないんだ。 君に出来ない事は僕にも出来ないよ。」
藤森:「それじゃあ、何にも出来ない悪魔の所為で、私はこんな酷い目に遭わされてる訳?」//:「それは、あの「いかれた魔術師」に言って欲しいな、僕の責任じゃないよ。」
それから男の子は、立ち上がって、じっと、水平線の彼方を、見つめる、
//:「朝が来るよ。」
私は、男の子が何処かに行ってしまいそうな、そんな気がして、何故だか、未だ、離れ離れになるのが怖い様な気がして、
そっと、男の子のしなやかな指先を、捕まえる、…
藤森:「何でアイツは、アンタを封印しようとしてるのかな?」//:「僕は「願いを叶える者」なんだ。 君達は、君達自身の願いが叶う事を、恐れているんじゃないのかい。」
透明な水面の直ぐ下では、巨大な顎と水晶玉の目をした大きな怪物達が、うようよ群れをなして泳ぎ回っているのが見える。
こんな生き物が、夢の中でしか生きられない事くらい、分かってる。
藤森:「リクは、どうして居なくなっちゃったの?」
私は、何故だか、同じ質問をもう一度繰り返す。
//:「彼は、自分から望んでそうしたかったのさ。…君の所為じゃないよ。」
そう言って、男の子は私の方を振り返って、それからにっこりと…微笑んだ。
エピソード7 「変態×魔導士」
登場人物のおさらい
藤森楓:主人公、いや、気の毒な事になってます。…合掌
関目享:エジプト呪術をベースにした独自の呪術を駆使する魔導士、非常勤保険医に成りすまして学園に潜伏し、3年前に封印した悪霊の復活を阻止する為に待機していた。。。らしい。 イラストは関目のイメージです(あくまでもイメージです!)




