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生徒会、ないしょの欠員3  作者: キュー山はちお
1章 のぞみ かなえたまえ
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1章の3 今回は「半日生徒会長」なので、ご遠慮を

 クロハとキラはぎょっとして、一歩引いた。

(クロハとしては、自分で仕切って押し切るつもりだったのに。先手を取られた)

(キラとしては、会長選挙に2回落選した身なので、半日会長でもそれなりに魅力。なんとかならないかなあ。だいたい、クモルさんは高校生ですらない。社会人として、芸能人として、大人気《おとなげ》ないんじゃ?)

 しばらく考えて、クロハとキラも手を挙げ、立候補表明をした。

「クモルです。クロハさんは生徒会長経験者ですから、今さら半日会長をやるまでもないでしょ? キラさんは、ずっと正規の副会長になりたいと言ってきたでしょ? 今回は正規でなくて半日で、副会長でなくて会長なので、ご遠慮願えますか。というわけで、あたしクモルが後任の半日生徒会長に決定いたしました。よろしくお願いします」

 クロハとキラは、しらけムードに包まれた。

(スシ会長(マヤ)ですけど、それなら最初から自分でやればいいのに。自分らの事務所に言われてやった企画でしょ?)

(クロハは思うけど、別に会長経験者でもいいでしょ? こっちは現役高校生なんだから、卒業した社会人がやるより、よっぽどいいでしょ?)

(キラは、こうなったら新聞部のナハに頼んで、こんど一日副会長の企画をやってもらおう。現役役員でも参加可能にしてもらって、スシくんに迫るきっかけにする)

「クモルです。スシくん元気?」

 クモルはマヤ副会長(スシ)に向けて、小さく手を振った。

 座っているマヤ副会長(スシ)のうしろにスシ会長(マヤ)、クロハ、キラの3人が立ち並び、警戒態勢に入った。

「あはは。取って食ったりしないわよ」

 クモルは、座っているマヤ副会長(スシ)と立っているスシ会長(マヤ)に、うふふっ、と笑いかけてから着席した。

「泥縄第一の生徒会長のスハです。クモルさんとクモヤさんが卒業してしまい、執行部はわたし一人になってしまいました。通常なら校内から役員を補充しますよね。でも前回の生徒総会で一般生徒からさんざん攻撃されたので、やつらに頼るのはまっぴら御免《ごめん》というのが、執行部の一致した見解です。表立っては言えませんが」

 マヤ副会長(スシ)は、キツネにつままれたような顔をした。

(てっきりクモルさんが議事を進行すると思ったのに、スハさんが仕切っている。クモルさんの半日会長って、何だったの?)

「それで、学校の外に目をやったところ、いたのですよ。適した人材が」

「マヤ副会長(スシ)ですけど、それは誰ですか?」

「その人は、もう2期役員をやってお役御免なのに、ボランティアで非正規役員を続けている。非正規だから、どうしても泥縄第二にいないといけないわけではない。学業成績は常に学年1位! そしてもし4月に泥縄第二が泥縄第一に合流することになったら、学業特待生から一般生徒に転換と申し渡されていて、困っている人!」

 バツが悪そうに、カニが立ち上がった。

「そうだよ、ボクのことなんだ」

 マヤ副会長(スシ)は泥縄第二の仲間を見渡した。

(うーむ。みんなは、このことを聞かされてたんだな)

 泥縄第二の執行部は、外部からの接触や打診をマヤが受ける体制だ。マヤはメンバーにはすぐに知らせても、スシにはある程度目鼻がついてから言おうとする癖があって、スシが知るのは遅れがちになる。今回の件では、マヤが意図的にスシをハブしたかのような状況になっていた。

(そうか、こういう件だと会長決裁になるから、マヤさんはオレに化身して、代わりに片付けてくれようとしたんだな)

 マヤ副会長(スシ)は、スシ会長(マヤ)をじっと見てみた。スシ会長(マヤ)はそっと目をそらした。

(でも水くさいですよ、マヤさん。オレを苦しめまいとしてくれたのは、うれしいですけど)

「わたしたちは学校側にかけあって、クモヤ先輩の卒業で空いた学業特待生の枠を確保しました。カニ先輩に来てもらえば、卒業まで身分が保証されます。隣の県に通学するのは困難であれば、宿所も用意します。その場合、自宅に残る家族と二重に生活費がかかる点に配慮して、返還免除(めんじょ)の奨学金も出します」

 カニは無言だった。マヤ副会長(スシ)はオロネをじっと見てみた。オロネは「黙って話を聞いてて」という目で見返してきた。

(?)

 スシとマヤが化身交換するとき、スマホも交換したので、スシの物はスシ会長(マヤ)が持っている。そこへメールが届いたのが、マヤ副会長(スシ)にもわかった。


 スシ会長(マヤ)の表情が変わった。


(何だろう? あとで見せてもらおう)

「結論から言います。泥縄第一はカニ先輩をFA《フリーエージェント》で獲得したいのです。本人とメンバーのみなさんには話を通してありますので、あとはスシ先輩の会長決裁だけです。泥縄第一を助けると思って、よろしくお願いします!」

「スシ会長(マヤ)です。それでは・・・」

 スシ会長(マヤ)が背中に書いた指文字から、マヤ副会長(スシ)は、会長決裁を代行しようというマヤの意思を感じ取った。

(マヤさん、ごめん)

 スシ会長(マヤ)は背中通信のセリフを打ち切り、マヤ副会長(スシ)の声色で提案した。

「泥縄第二の内輪の協議をさせてください。会合の一時休憩を願います」

「日程が押しているので、手短に願います」

 泥縄第二のメンバーは、屋上に移動した。


 カニとオロネは複雑な表情。残りの4人は沈んでいた。

「クロハだけど、こうしてうちらだけで集まっても、結論は変わらないと思うな。スシくんも理解してるでしょ、カニくんにとって、いいお話だというのは」

 マヤ副会長(スシ)はうつむいた。

「スシくんもわたしも、泥縄第一に在籍経験がある。確かに遠いけど、カニくんに勧められる学校だってこと、わかるでしょ?」

「キラだけど。統合問題があるので、スシくんが普通よりも慎重に考えようとするのは理解できる。でも感情論ではどうにもならないんじゃないかな」

「スシ会長(マヤ)だけど、執行部の人数が減るのは痛いけど、非正規なんだし、この期に及んでまだ頼るのは、ムシがよすぎるんじゃ」(背中通信によりマヤ副会長(スシ)が発声)

 みな、カニに泥縄第二にいてほしい思いと裏腹に、きつい言葉を選んでいるようだった。FA移籍を邪魔だてしたくないのが透けて見えた。

「マヤ副会長(スシ)ですが、オロネちゃんは今回の件をどう思ってるんですか?」

「え、別に、どうとも思ってないけど」

 マヤ副会長(スシ)は、オロネをじっと見つめた。

「カニくんと離れ離れになってしまいます。あんなに強い絆で結ばれているのに」

「大げさだなあ。あたしとカニは、再婚同士の両親がまた離婚して、そのあとカニが家出してうちに戻ってくるまで、離れ離れだったし。カニが泥縄第一に行っても、単身赴任《たんしんふにん》の人みたいに週末には帰って来るから、さみしくないし」

 マヤ副会長(スシ)は、もう一度オロネをじっと見つめた。

「それは本心ですか?」

「い、いやだな。本心に決まってる」

「わたしが統合回避に燃えることができているのは、オロネさんとカニくんを引き裂きたくないという思いもあればこそです」

「そうなんだ」

「だから言います。カニくんを引き留めるのが無理なら、」

 オロネはマヤ副会長(スシ)を見つめた。


「オロネさんも一緒に泥縄第一へ行かせてあげたい」


 メンバーが一斉にマヤ副会長(スシ)を見た。

「な、何言ってるのよ。ホームステイはカニひとり分でしょ? あたしが入る余地なんかないから。あればよかったけど」

「クロハだけど、カニくんだけでなくオロネちゃんもだなんて、何を言い出すの?」

「キラだけど、あたしも同感」

「でもオロネちゃんは、このままでいいんですか?」

「よくはないけど、どうしようもないよ」

「簡単にあきらめちゃだめ」

 そう言われて、オロネはマヤ副会長(スシ)につかみかかった。

 両肩をつかんで揺すぶった。

「それなら、どうしてカニのことは、すぐあきらめちゃうの!」

 どんたた、どんたたと、胸をたたいた。

「オロネちゃん」

 オロネは人目もはばからず泣いた。


「・・・。もう戻ろう。ごめん、当たって悪かった。ねえ、あたしのことは気にしないで」

「もう一回聞くけど、もし行けるなら、行きたい?」

 オロネは黙っていた。

 クロハが「真にオロネちゃんの身になって考えてあげなさい」という目で、マヤ副会長(スシ)を見た。

 スシ会長(マヤ)がマヤ副会長(スシ)にスマホを見せようとしたが、マヤ副会長(スシ)は気づかず、メンバーを率いて生徒会室に戻り始めてしまった。スシ会長(マヤ)は仕方なくスマホをポケットにしまった。


 マヤ副会長(スシ)たちが生徒会室に戻ると、泥縄第一メンバーと泥縄第三メンバーが険悪なムードになっていた。

(マヤ副会長(スシ)だけど、うはっ、何このピリピリした空気)

 キロによる副会長解任が事前に泥縄第一側に通告されておらず、スハたちが反発した、とマヤ副会長(スシ)の目には映った。

(くわばらくわばら)

 中断前に進行役だったスハは、じっと押し黙っている。

(スハさん、進行しないのかな? じゃあオレが)

 マヤ副会長(スシ)が議事進行席へ移動しようとしたとき、スシ会長(マヤ)が袖を引っ張って、席に引き戻した。

(?)

 スシ会長(マヤ)が背中に指で通信文を書いてきた。

(なになに、これは声に出さないでくださいね、ですか。なになに? スシくんに、クモヤさんからメールが来ています、か)

 背中通信にけっこう時間がかかったのに、まだ会場の事態は動いていない。

(じゃあ、今度こそオレが)


 バーン!


 マヤ副会長(スシ)が再び席を立とうとしたとき、生徒会室のドアが勢いよく開いた。

 誰かと思ったら、生徒会担当教師のキクハだった。大卒2年目の女性教諭。合唱部と吹奏楽部の顧問で、男子サッカー部の副顧問。

「マヤ副会長(スシ)ですけど、なんですか先生。わたしの気勢をそぐような登場をしないでください」

「泥縄第一の泥縄第三のみなさん、よくいらっしゃいました。大したもてなしはできませんが、ゆっくりして行ってください」

「先生、あいさつするために来たんですか?」

「違うわよ! 泥縄第二のみんなに緊急で伝えたいことがあって」

「校長がどうかしたとか?」

「すごい。よくわかるわね」

「え?」

「学校理事会が、校長を早期退職させて、校長が空席になったの!」

「ええーっ!」


(二人目だよ、解任。このままだと、うちら全員、一通り解任されるんじゃ?)


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