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「転落の先」
「いたー、大丈夫だすか?」
かおむがそう声を出したが、
一緒に落ちたはずのもとえからの返事はなかった。
暗がりだったが、
かおむの見える範囲にもとえはいなかった。
「どうしたんだい?
ぼっーとして」
「無理もねえよ。
あんな穴で一月以上もなあ」
「本当に僕だけだっただすか?」
「夢でも見てたのか?」
「うーん」
かおむは首を傾げた。
「ここはどこだすか?」
「ああ?」
「覚えてねえのか?」
「無理もねえよ。一月近くもなあ」
「あのー、みなさん、日本人だすよなあ?」
「はあ?
そんなことまで忘れちまったのかあ」
「ここは日本なんだから、
日本人に決まってんだろ」
「まあ、そうとも言えないが、
この言葉と顔でわからねえか?」
かおむは、例の島から、
いつのまにか日本に戻ってきたいたのだった。