真っ赤な葡萄酒6
・・・
「ついに! ついに完成だ!!」
勇者は 土魔法で作った保冷用の容器にアイスを詰めて死神のところへ走った。
外は 晴れているが雨上がりで地面が乾こうと 湿気をスチームのように放射していた。
腰に下げた容器からは 冷たさを感じる。
そして 足の痛みも感じていたが 嬉しさでいい気持ちだった。
「あとで いっぱい 痛くなってくれ、死神様の喜ぶ顔が見れるはずだから」
「死神様~!」
「おお 勇者、その顔は もしや、できたのだな!」
死神は 宙をくるりと回った。パンツが見えた、、
そして 死神様が住んでいる家でアイスの試食が始まった。
「なんだ ミルクを凍らせたものか?甘い香りはするが何かを入れたのか?」
死神は 一口食べた。。
ふあふあで 羽毛のような柔らかさ、 これは私?私を表現した食べ物なのか?
そして 口の中で広がるミルクと水飴、、、
「う。。。 うまい」
小皿に乗った小さなアイスが、この部屋の主役になった瞬間だった。
「なあ もう一つ アイスクリームが欲しいのだが、できるか?」
死神は もう一つ欲しいと 勇者に話した。
初めてのアイスクリームに感動している感じはするが よほど気に入ったのだろうか?
勇者は もう一つの容器を死神に渡した。
「俺 死神様の気持ち知ってました。
さあ これを女神様にも食べさせてあげてください。
ただ 応援はできませんよ。でも これを!」
「よし 後で踏んでやる。マッサージだ。待っていろ」
死神は 女神の元へ飛び出していった。
「・・・はいはい お待ちしています。。。 あっ足が 痛たた」
勇者は 足の小指が痛くなりだし歩けなくなっていた。
仕方がないので 四つん這いになった、そしてはって帰路へ着いた。
帰りの道中は「ちょっと いいかも」っとも思った。
・・・・
「最近元気ないですね。また トシユキですか?
仕方がないですよ人間なんだから、ねえ女神様。それより、これ食べて」
「そんなことは・・でも、これは冷たい・・何ですかこれは?
そしておいしい、ふあふあ して・・まるであなたのよう・・」
死神はふあふあと 宙がえりをして喜んだ。
「そう 私のようでしょ?私なんです!
女神様 私もこのアイスのように女神様のために・・・です。ダメですか?」
・・・時がとまる・・。
「死神、私にはトシユキがいるのです。ごめんなさい」
死神は 小さな炎のようにシュンとして下を向いた。
「でも私 エレナちゃんも大好きですよ。でも・・ あわわ でも・・お芋も好きだし でも・・でも。」
でも 急に顔を上げた、そして何かが吹っ切れたようだった。
「 あら あら こんなところに、アイスこぼしちゃって、、 もうぉ、女神はお胸が大きすぎ!もぉーこの変態女神。
ククク ククク ククク」
「そんなことは・・ですが どうしてそんなに笑うのですか?
なんだか 私まで おかしいです。。クスクス。笑うのは久しぶりです、ありがとう、死神」
女神は 笑いながらうるんだ瞳から出る涙を手で拭った。
「ねえ 死神、 あなたの髪ですけど 私に切らせてくれませんか?」
「はい」
死神も涙をぬぐった。
死神は 女神と親友になりたいと思うようになった。
・・・・
「リンゴ 3個で銀貨一枚だ! さあ さあ・・」
銀貨の雨が降り 富める者はより富を手にし、貧しいものには高騰した物価が猛威を振るった。
しかし ベーレ国も 徐々に安定を取り戻し始めている
金や銀は物として実際に存在するものなので、そこだけは紙の紙幣よりも優れているようだった。
そして 貴族やお金持ちたちもお金でお金を儲けることが難しくなってきた。
そこでようやく 風車を回し、物資を輸送し、いろいろなものを動かしてお金を稼ぐようになってきた。
でも ある日・・・。
ベーレ国のお城から 織物の視察に来たいという知らせがあった。
あの 高騰した通貨が猛威を振るうベーレ国で 織物という産業を立ち上げた。
それは とても難しいことだった。
そこで 産業を立ち上げスラムの人たちを救ったトシユキのところへ
学びたいと貴族が船に乗ってやってくるということになった。
この船は 火魔法を燃料として水車を回す最新の蒸気船であり、火と水を使うという
複合魔法の研究と可能性を秘めて開発されたものだった。
「うむ わしは視察の者たちと共に城に帰ろうと思う。
ここで暮らして、わしにわかったこと、それを今度は城の者たちに伝えていこうと思う。
そして ここだけの話なのじゃが わしはサリーちゃんを妃に迎えようと思うのじゃ。
「胃袋をつかまれる」とはこういったことなのかと 痛感させられたわい、コックではダメなのだ。わはは」
「ゲロゲロ」
「そうじゃった このケロ子を連れて帰ろうと思うのじゃ」
王様は ケロ子を連れて帰ってしまうということだった。
ケロ子にとっては お城での暮らしが元々の暮らしなわけだし
王女様の待遇は受けられないかもしれないが 王様のペットとして何不住ない暮らしが
送れることだろう。やったな ケロ子。
トシユキはケロ子を見て軽くこぶしを握って見せた。
視察の日が来た。
「おーー なんて立派な船何だ!」
マイクは 最新の船をみて手を振り出した。
ドワーフのハーパーさんのように、しゃいでいる感じが見て取れた。
きっと マイクの子供のころはこんな感じだったのだろう。
警備の船 そして続いて最新の蒸気船、さらに続いて警備の船とサンドイッチになる形だ。
数人の貴族が草原に来るためにわざわざ ご苦労さんって感じだった。
品のよさそうな洋服に身を包んだ 貴族たちが次々に草原に上陸し
そしてその後から兵士たちがぞろぞろと降りてきた。
以前 悪魔との戦いのときに見た兵士とは違い、兵士は鎧などは身に着けてはいなかった。
こちらに配慮してくれたのだろうか?
「これは これは トシユキ殿。悪魔を倒した英雄でありながら、
それにおごることなく 苦しむ民を見つけてそれを助けた。
私は あなたはてっきり魔眼の持ち主と思っておりましたが、その心眼の美しさに眼福いたしました」
トシユキと 貴族は固い握手をした。
「えーと こちらがスラムから来た人たちの住居でして。あちらで ワタを作って、そちらで織物を・・」
トシユキは 工場見学の要領で貴族たちに説明をした。
「お米券では 税金は取れませぬな。はっはは」
貴族たちは色々なものに興味を示してくれた。
兵士たちは 警備をしながらウサギのモフモフを触ったり
インコにお城で敬礼のときに使う言葉を教え込もうとしたりと
くつろいでいるようだった。
さすがに 初めての視察でゴブリンとか黒い狼に合わせるようなことはしない。
ビックリしてしまうだろうし 黒い狼って、実はかなりヤバイ魔物だったらしくて
数体いればリザードマンだって軽く狩ってしまうのだとか
だから 見つかったら冒険者に駆除されてしまうらしい。
そこで 魔物には姿を隠してもらっていた。
あと 王様。
王様も姿を隠している。
・・・
「よし この箱の中から、わしがサリーちゃんをお姫様抱っこして飛び出して、登場じゃ! わははは」
「ゲロゲロ」
ケロ子も楽しそうにしている・・・
・・・
こちらは ビックリさせるのだとか。
まあ 好きにやってもらいたい。
見学が終わり トシユキと貴族は固い握手を再び交わした。
そして 次に来た時にはゴブリンたちも呼んで 宴を開きたいと提案しておいた。
すでに船の準備は終わりいつでも出航できる用意が整っているようだ。
今度 見学でもさせてもらおうか?
大体 水魔法と火魔法をどうやって動力にしているのだろう。
なんとなく想像は付くがそれがどんな構造なのかが興味があった。
さてさて お待ちかねの王様タイムだ。
そろそろ あの箱の上に王様が出てくるぞ!!
ドキドキ、ドキドキ!
ドキドキ!
・・・。
・・。
「ドカーーーン!!」
蒸気船が突然、爆発した!!
乗り込んでいた貴族や兵士たちが 宙を舞っている。
そして 「ヴォォォォンン」警備船が 猛スピードで近づいてきた。
これは 何が起こった?
「シュ シュ シュ シュ シュ・・・シュ」
船から聞こえる鈍い音
「うわぁぁ」」 「ぎゃぁっぁ」
グサグサと 胸を貫く矢、矢、矢の雨
警備船から 大量の矢が貴族や護衛の兵士たち目がけて射出された。
トシユキは エナジーランスを出現させて 警備船に投げつけた。
警備船は そのまま ベーレ国の方向へ 走り去ってしまったのだった。
「じゃっじゃぁーーん!! 王様の登場じゃ!!・・・なんじゃこりゃ!!」
王様は 箱の外が騒がしいと思って飛び出した。
しかし 飛び出した先に見えるのは 焼けた船と人々、そして 警備船が今まさに
矢を射出して 人々を傷つけようとしているところだった。
「サリーちゃん」
王様は サリーちゃんの目をふさいだ。。。




