表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/70

7−17、蒼月 side

7−17、蒼月 side




ティルから(はな)れると、今度はマルスへと近づく。




「ソウ…」




先ほどの不機嫌(ふきげん)は鳴りをひそめたマルスは、今度は(ねつ)のこもった(ひとみ)で私の目を見る。



「マルス、いろいろありがとう。お世話になりました。」

「いや、あれぐらい何ともない……」


少し苦笑(にがわら)いするマルス。



「本当にありがとう。じゃぁ、私、帰るね。」



私は握手(あくしゅ)するために手を差し出した。



マルスの手が差し出した手に(さわ)ったと思った瞬間(しゅんかん)、思い切り手を引っ張られ、私は体ごとマルスの胸にぶつかった。


そしてギュっと抱きしめられる。


私の体を包み込む優しいあたたかさ。



(安心する………)


体をあずけきって、ボーっとする。

まるで、大きな海に大の字になってプカプカ浮かぶような気持だ。



少し、抱きしめる力の強さを強くされたとき、


「…すぐに迎えに行く。エンジ様に結婚を申し込みに。」


強い意志を込めた言葉を耳元で(ささや)くマルス。




「何を言われたか」安心しきった頭でやっと理解した私は、



「あのね、私はまだあと約2年の学業(がくぎょう)と、就職(しゅうしょく)活動(かつどう)就職(しゅうしょく)が待っているの。


すぐ来られても困るし、それに、まだあなたとは付き合ってもいないんだけど?」


と言う。



(本当に私の意志(いし)無視(むし)なんだから!(呆))





なんだかマルスの行動がおかしくて、さっきの胸の痛みが溶けたようだった。


あたたかな気持ちで嬉しくなり、クスクスと笑いだした私の顔を情けない顔をしたマルスが(のぞ)きこんでくる。




「………学業が、終わったら迎えに行く。」


「マルス?」




むずしそうな、こまったようなマルスの声。




「その時まで、俺以外の者を近づけるな。


ソウがなんと言おうと、お前は俺のものだ。」




マルスの指が私の(あご)にかかって、ほとんど力をかけずに顔を持ち上げられる。


だんだんとマルスの顔が近付くのと同時に、私もゆっくりと(まぶた)を閉じた。




マルスの(くちびる)が私の唇と重なって小さな音を立てて離れる。


私にはそれがごくごく自然なことに思えて、簡単(かんたん)に受け入れてしまった。




(あれ?変なの??なんの心境(しんきょう)変化(へんか)なわけ???)



自分の行動(こうどう)と気持ちが理解(りかい)できずに困っていると、苦笑するマルスが私の眼に(うつ)る。




「必ず迎えに行く。それまで少しの別れだ。」




そう言うとマルスはサッともう一度私にキスとぎゅっと抱擁ほうようをして、抱きしめていた腕を(ほど)いてくれた。



腕が解かれて温かなマルスの体温が離れた瞬間、


(さみ)しい…)


「心に何か隙間(すきま)があいたような感じがする」と再び胸の痛みをおぼえた。




(あれ?なんで寂しいなんて思うのかな?)






里心(さとごころ)でもついたかな?」と私はこの感情を処理(しょり)することにした。


自分の心を精一杯せいいっぱい考える私は、マルスが私のジーンズのポケットに何かを自然な動きでねじ込んだ事に気がついていなかった。



ボーっと考えていると、「もう、いいかぁ〜?」と言うモーブの声が聞こえる。




「うん、いいわ。」


いままで考えていたことを振り払うかのように明るい声で返事する。




「それじゃぁ、鏡に手をついて。」


モーブに言われたとおり、両手を鏡にピッタリと()わす。


「行っくよぉぉ〜ww」



そうモーブが言った途端(とたん)、光が鏡からあふれ出す。




(帰るのね…)



ズキっと、胸にひときわ大きな痛みを感じる。



後ろを振り返りマルスたちをもう一度見て……、



「みんな!さようなら!!!」



そう言ったのを最後(さいご)に私は光に飲み込まれた。





御意見・ご感想、誤字・脱字のご指摘はして下さると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ