7−4、蒼月 side
7−4、蒼月 side
「怒らせた?」と私が思っていたマルスは、どうやら怒っているのではなく、何かに「苛立っている」といった方がしっくり来るようだ。
(いや、「怒る」も「苛立つ」もあんまり変わらないんだけどさ。ホントに何かしたかしら私??)
さしあたって何も苛立たせる原因を作った覚えは私にはナイ。
(う〜ん…??)
私は考え込みはじめかけていたが、マルスの声で現実へと戻った。
「ソウ。俺はお前を離したくない。が、お前の世界に俺が行くことはできない。よって、ずっとお前といるためにエンジ様にお前とのことを申し込みに行きたい。」
ここで一度口を閉じたマルスは、再び口を開いた。
「俺は、今はソウが兄弟と思ってくれてかまわない。だが、いずれ家族、伴侶という形で傍にいる人間として俺を見て欲しい。つまり…」
「つまり?」
(少し、マルスの目が怖いな……)
私は思いつめたように熱く真剣な瞳=苛立ってる??瞳で見つめてくるマルスを急かし、次の言葉を待つ。
「ソウ。俺と結婚しろ。」
(………はいぃぃぃぃ??)
「なんか変な言葉が聞こえた様な??」と思い、すぐさま切り返す私。
「はぁ?“誰”と“誰が”?」
「俺とお前が。」
「結婚?」
「そう、結婚だ。」
(なんか話が飛躍してるのではないかしら、マルス?)
「なんで?」
「好きだからだ。」
“マルスが私を好き = 結婚” は違うと思う。
(結婚は愛し合い、好き合った男女が共に生きると決めることでしょ?)
少なくとも 私はマルスを好きではあるが、あくまでLIKE。
LOVEではないと思うし、LOVEが「ここ数日で生まれてたまるか!」とも思う。
「…私の意志は?」
気になる点を言ってみる私。
「いらない。
俺は狩りでは狙った獲物は逃さない、絶対にお前は俺を愛するようになるさ。だからソウ、逃げられないと思え。」
「…俺からはな。」と正面からマルスに抱きしめられた上に、耳元で囁かれる。
(私 = 獲物 ですか!!)
「うわ〜、私を狩る気ですよ。この人(= マルス)………」と頬がピクピクとひきつるのは仕方がないだろう。
(わぁぁん!横暴!!王族権乱用だぁぁぁぁぁ!!!)
「根付を返せえぇぇぇぇ!!!」
(いや、権力乱用以上にこの王族、乱心してるって!!!)
「ヤバい!!俺様すぎるっ!!!」と暴れる私。
「断る。」
「最初に言っただろ?”返すつもりはない”と。」ときっぱりと言いきるマルス。
マルスには”じゃれあい”と取られてしまっているような会話だったが、私には「身の危険がっ!!あちらの世界での平穏がっ!!!」と必死だ。
マルスとの平行線の会話を繰り返し、私は疲れてそのままの状態で眠ってしまったらしい。
リオウさんとティルが起こしに来るまで……。
私はマルスに抱きしめられたまま一緒にベッドで眠っていたことに気がつかなかったのだった。
「/////んな、何してくれるのよぉぉぉ!!!マルス!!!!!/////」
朝からそんな私の絶叫が城に響き渡るのだった。
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