喪喪太郎 最終話
それから一年の後、森の中で月光狼と秀吉は偶然相合うた。二匹はあの日の恐怖を乗り越えたことをひとしきり讃え合った後、周囲をはばからず、おいおいと泣きながらひしと抱擁をした。
「聞いたか?喪喪太郎の奴、鬼ヶ島を陥落させたらしい」月光狼は唐突に切り出した。
秀吉は喪喪太郎の名を聞いた後、膝をガタガタと震わせた。「そ、そ、そ、そうなんですか?ど、どうやったんですか....?」
「喪喪太郎はまず、敵地が孤島であることに目をつけた。狙ったのは....」
「ほ、補給ですか....?」
「そうだ...。以前、飛影を偵察に出して、鬼ヶ島に自給自足の力がない事を奴は見抜いていた」
「つまり狙ったのは....、補給の船ですか?」秀吉の声からは動揺の色は消えていたが、反面、真紅の尻は徐々にその色味を桃色へと変えていた。
「そうだ。奴は片っ端から補給の船を襲い、鬼を捕虜にしていった」
「そうか。鬼が強いと言っても、あくまでそれは地上戦。海戦なら戦力差はそれほどないですもんね」
「かくして、鬼ヶ島は兵糧攻めに合うことになった」
秀吉がゴクリと唾を飲み込んだ。「そんな戦い方が....。そして鬼を餓死させる。なるほど、考えましたね」
「しかし、喪喪太郎は捕虜にしていた鬼に逃げられ、挙句食料も奪われた」
「そ、それじゃあ、折角やってた兵糧攻めが....」
「だが、厳密には違うんだ....。喪喪太郎は鬼に逃げられたんじゃない」
「まさか....、わざと、逃した....?」
「そうだ。そして盗まれたのではなく」
「盗ませた....。まさか!その食料って....」
「きび団子だ」
「そうか。まともに戦えないようにしてから倒す!ということですか....?」
「俺も最初はそう思った....」
「違うんですか?」
森は嫌に静かで、ただ生温い風が心地悪く木々をそよそよと動かしていた。
「桃太郎は1人で鬼ヶ島に乗り込み、そして、言ったらしい.....『きび団子は俺にしか作れない。これから先もきび団子が欲しければ、俺の家来になれ』って...」
「.....鬼は鬼ヶ島以外にもいたんですね.....」




