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『十天商』

 帰宅して直ぐに、家族会議を実施する。議題は勿論、『天都』での情報収集の結果についてだ。

「先ずは俺達が集めた情報を共有するぞ。その後に桔梗とリコリスの報告を聞こうと思う」

 とは言ったものの、俺達が得られた情報などたかが知れている物ばかりだったよ。

 ・「十天商」の席次は頻繁に欠員が出て、その都度新しい商人が加入する。

 ・「十天商」の顔ぶれが変わっても、一般の町民や木っ端の商人には何の影響も無い。

「……と、こんな所だな。はっきり言って『表側』で得られる情報は、この程度の物しか無かったよ」

 この結果自体は、俺の予想通りだよ。まともな情報を得られるとは思っていなかったからな。

 この情報収集には、『裏』の目的が存在する。それは、大っぴらに「十天商」について調べる事で、俺達に注目を集める事だ。

 つまり、今日の襲撃はある意味で予定通りという訳だな。

 その襲撃者から得られた情報も付け加えておく。この情報は予想外の収穫だったよ。あそこまで素直に喋ってくれるとはね。

「それじゃあ、次は二人の報告を聞こうか」

「は~い。ほーこくを始めま~す」「了解であります」

 ここからが本番だ。この二人が得た情報次第で、次の行動が決まるぞ。

 桔梗とリコリスが得てきた情報は以下の通り。

 ・「十天商」内部での、権力争いが頻発している。そのことから、「十天商」内は一枚岩では無いと想像出来る。

 ・「十天商」のトップである「主席」が、五年程前に代わっている。

 ・新しく「主席」になった人物は、全てが謎に包まれていて名前は勿論、姿を見た者すらいない。

「……こんな感じかな♪」

「以上で報告を終わります」

「報告、ありがとう。さて、色々と興味深い話があったな」

 俺が特に気になったのは、権力争いの件だ。

 この「十天商」と言う組織は、席次が上になればなる程に権力が強くなるのだろう。そうなれば、席次の下の者が権力欲しさに、上の者を引きずり下ろそうとする。

 はぁ……嫌だねぇ。元の世界でも嫌と言うほど経験したがね。力を持った組織の内ゲバという物はさ。

 そのお陰で、俺達にも付け入る隙があるのは事実だがな。嫌いな物は嫌いなのだよ。

「それじゃあ~、その「十天商」の誰かを~味方につけるの~?」

 ここで鋭い指摘をしたのはエリカだ。ふふふ、エリカは聡いな。

「それが一番理想的だが、組む相手は慎重に見極めたい。席次が低すぎても困るしな」

 仮に「十天商」内部から協力者を得たとしても、そいつが下位の席次だった場合、上の者の権力であっという間に潰されてしまう可能性が高い。出来る事なら、それなりの地位に居る者と組みたい。その辺りは慎重に事を進めたいな。

 それに……席次が高い者ならば、もしかしたら『主席』について何か知っているかもしれんしな。

「でも、その味方になりそうな人と、どうやって会うの?」「そうですね。いつ会えるかも分からないですし」

 ここで、リアス・リリスの双子姉妹が、そんな疑問を投げかけてきた。

「その答えは簡単だよ。俺達が『天都』で「十天商」について探り続ければ良い。そうすれば向こう側から接触してくるさ」

 あれだけ堂々と「十天商」について調べて回ったのだ。俺達の噂は『天都』中に広まるだろう。

 そこで俺達が「十天商」からの襲撃を退けている事も知れる筈だ。その話を聞き、目端の利く者ならば、俺達と「十天商」が敵対関係にある事を察するさ。

 更に、そいつが貪欲に上を目指そうとする者ならば……確実に俺達を味方に付けようと動くだろう。

 俺達と「十天商」をぶつけて、「十天商」が疲弊した所で『漁夫の利』を狙うのが、一番確実に成果を得られる。

 とまあ色々と展望を語ったが、これも全て俺の理想通りの相手が現れなければ、何も意味の無い話だ。正に「絵に描いた餅」だな。


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