↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の死んだ世界で  作者: 不死鳥の亡霊
剣聖襲来編
PR
13/14

少女の思い出

城内。

一人の女性が幽閉されていた。


女性は幽閉されながら思い出していることがあった。


幼き日、少女だった頃の、父との思い出だ。


父と馬車に乗り移動をしていると、馬車の中から路頭に迷い飢えている人が見えた。


父もじっとそれを見ている。


裕福なその少女は素朴な質問を父に投げかけた。


「助けないのですか?」と。


父は答える。


「…あの人が飢えていることは見ればわかる。だが…。」


父は、しばし間をおき続けた。


「私はこの街の領主である以上、安易な力の誇示をしてはいけないのだ。


領主が人を支えてしまってはそれに甘えるものも出てくるだろう。


一人一人が支える街を作るために、人を救うのはあくまで人でなくてはならないのだ。」


と。


父は飢えた人は助けなかったが、飢えた人を助けようとする領民を陰から支えた。


父は決して人に好かれようとはせず、自身を個としては見ようとしなかったのだ。


その父の言葉を聞き少女は幼心に思った。

“自分の窮地でも父は領主として自身の立場を変えないのだろうか”と。


その疑念が晴れたのが、今日だったのだ。


女性が幽閉される間際、自分を見る父の目は、確かに父として自分の身を案じてくれているものだった。


そしてその目に女性は、今度は疑念ではなく核心を持つ。


“父は死を覚悟しているのかもしれない”と


女性はここを脱出しなければいけないと思った。


一人の娘として、父を救いたいと願った。


「お願い、誰かここから私を出して…。」


女性は思わず声に出していた。


だが父から護衛を任された兵士が、その言葉に応えてくれるはずはない…


ないはずだった。


「…なぜ出たい?」


「!?


あなたは一体だれ!?」


男は冗談交じりにその声に応える。


「オビと言いますぜ、お嬢さん。


この城の侵入者です。」


「(侵入者!?)

 

…あなたの目的は?」


「…俺は暴動の原因である領主に、広場で話してほしかったのさ。


けど、着いたらこの状況。

領主はタイミングを計っていただけで逃げているわけじゃなかった…。


アンタ、見た感じ幽閉はされているが、同時に警護もされているみたいだな。


アンタこそ何者だ?」


「…私は領主の娘よ。」


「令嬢?…そんな立場の奴がなんでこんなとこに?」


「…父と護衛のやり取りは少し聞こえました。逃走経路を確保した上で、ここが1番安全な場所と判断して幽閉されたのだと思います。」


「…悪くない冗談だな。


…俺、今ここにいるぜ?」


「…


…あなたが単独でいかにうまく侵入したとはいえ、ここに来るには父が選んだ精鋭を倒さないかぎり来られないはず。


彼らはどうしたの?」


「…殺しちゃいねぇよ。


少し眠ってもらってるだけだ。」


「(彼らを騒ぎたてる間も与えず倒したというの!?)」


驚いている娘を横目に、本来の目的を失ってしまったオビは少し上の空だったが、ふいに何かを思いついたように娘に問いかける。


「…そうだな、俺の目的はなくなっちまたし、アンタに選択肢をやるよ。


1.ここで大人しくしている。


2.俺からここの鍵だけを受けとる。


3.俺を警護につけてここを出る。


…好きなのを選べよ。」


オビの唐突な提案に娘は困惑したが、瞬時に切り替え考える。


「(…どれを選ぶにしろ、この人が選択を実行してくれることが前提。それなら、一番父が救える可能性が高いものは…。)


…


…私は父を救いたい、だから…


オビ、私は三つ目を選びます。」


咄嗟の状況にも臆することなく答える娘に、オビは嬉しそうに笑った。


「(一番危ないが、一番可能性のある選択をする…か。


…気に入った。)」


娘は目を閉じ、自分の返答に対する答えを静かに待つ。


そしてその扉が開く。


「オーケー。


アンタ、名前は?」


「…リーシャよ。」


「…そうか。

じゃあ、行こうか、リーシャ嬢。


お前の親父を救いに。」


リーシャは以前も同じような体験をしたことがあった気がした。


オビは目的地を知ってるかのように手招きをし走り出した。リーシャも遅れないよう走り出す。


オビは移動しながらリーシャへ不躾に話しかける。


「まあアレだな。


隠れてたってのは俺の勘違いだったみたいだけど…お嬢さんの親父、悪いけど相当嫌われてるぜ。


どんな事してきたんだ?」


「…リーシャ、リーシャでいいわ。


…父は実直で、それでいてやり方が下手な人だった。自分から領民を助けることはしなかったし、人を助ける意思を持つ領民、人に頼られる領民を影から支援してきた。


父は領民1人1人が支え合える街を理想としたの。

領民からしたらきっとそれが無責任に見えた。


けどその姿を近くで見ていた城内の人間からは信頼されていたと思う。」


「ふーん。

(確かに、この状況でも場内で反旗を翻してる人間はいないみたいだし、王がいなくても役目はしっかり守ってたな。)


…けどよ、その支援していた領民と、結局正面からやり合うことになっちまったら、意味がなかったってことじゃねぇか。」


「いいえ。


父が対峙しようとしてるのは最近噂になっている“死神“の方よ。


領民に対しては既に“手“を打っています。」


「…死神?」


「かつて西国の剣聖と呼ばれた男が、ここ最近東国の争いの起きる地域に現れ、火種ごと全て消し去っていく。


…という噂よ。」


「…敵国の英雄…私怨ってところか。


けど噂なんだろ?そんなことの為にわざわざ準備をしているのか?」


「…噂が経ち始めた頃から、この街の領民を過激思想へ誘導する人達が現れ始めたの。


父は確かに領民に好かれていたとは言えない。それでも、今までは暴動が起こるほど統治できてないわけではなかった。


まるで誰かが意図的に死神を呼び寄せようとしているみたいな…。


だからそれについてかなり調べていたみたい。」


「…死神ってのが来る確信があるんだな。


なら俺達も急いで中央広場に行こう!」





オビ達は中央広場に向かい走った。走ったが…。









中央広場に先に辿り着いたのは。


…“死神“の方だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。