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拠点にて

今日から更新を再開すると言っておきながら1時間半日付を跨いでの投稿とか·······流石ですわ((泣))


と言うわけで皆様お久しぶりです。最近カフェイン中毒気味のマグムでございます。


書籍化作業と、年末が忙しかったこともあり、更新ができておりませんでした。


また、仕事が増えたこともありどうなることかはわかりませんが、取り敢えず週2のペースぐらいで更新できたらいいなと考えております。


これからも変わらずよろしくお願いいたします

「ついたぞ。ここが私たちの拠点だ」


 レッカと別れてから十分ほど無言で走った後、唐突に森の木々が晴れて大きな集落が姿を表した。


「ふむ、お主等も無事······というわけでは無かったようじゃの」


 森の入り口で俺達を待ち伏せていたケム爺と呼ばれていた人が、ケモナーさんに背負われたニナを見て溜め息をつく。


「ケム爺。この集落にいる皆への彼等の紹介と、彼等への事情の説明を行いたい。それと、私自身がまだ、彼等の事情をよくわかっていない所があってね······三十分ほど後に長老会議を開くように手配は出来るかい?」


 ケモナーさんの問いに対してケム爺は周囲に目を向けると、呟いた。


「ふむ······確かにその方が良さそうじゃのう。じゃが、流石に三十分では此方の用意が間に合わん。せめて一時間はもらわんとの」


「解った。なら一時間後に頼む」


 ケモナーさんの言葉にケム爺は頷いた後、


「彼等の事じゃが······」


「解っている」


 念を押すようにケモナーさんに言い残した。しかし、俺達がどうしたのだろうか? 背を向けたケム爺を見送る暇もなく、ケモナーさんは此方に視線を向けると、


「すまないが、一旦此方で話を聞かせてほしい」


 と歩き出した。俺達は一瞬目を合わせるも、ケモナーさんがニナを背負っていった以上、その後を追わないという選択肢はないため、ケモナーさんを追いかける。

 

「·······?」


ふと、視線を感じて辺りを見回すと回りにいた、獣人達からの物だった。

 その視線には不安、疑念······そう言った感情がありありと現れていた。


「っ!」


 獣人と人間では種族の違いや、昔あった人間が獣人を含む亜人族達を虐げて奴隷として働かせていた······っていう歴史もあったのだ。

 そんな人間が自分達の領域に来ているのだ。そういった視線を向けてしまうのも仕方がないだろう。

 学校ではニナやレッカが俺達と普通に接してくれていた為、そういった事を感じることが無かったが、ここに来て初めてそう言った事実に気づかせられる事になった。


「·······行こう。ノエル」


「あぁ、考えた所で仕方がない」


 どうやらアオイとテツもその視線には気づいていたようだ。

 確かに早く行かないと、ケモナーさんが早く来いたばかりに此方に視線を向けてきている。


「あぁ、そうだね」


 俺達は視線を向けてきている獣人達に背を向けてケモナーさんの方へと向かう。

 その途端に後ろから感じる気配が和らいだのを感じた。どうやら向こうも此方の視線を気にしていたようだ。


「すまないが、可能な限りこの辺りで行動してくれるとありがたい」


「皆さんの視線の事ですね?」


「やはり、ニナが連れてきただけの事はある。······ということか?」


 いや、あんなに露骨なら普通に気づくと思うんだけど?

 そんな俺の考えを表情から読み取ったのか、


「恐らく視線には皆気づくだろうけど、それとこの辺りで行動してほしいという言葉を結びつける者はそう多くない······と、まぁそんな事を言っていても仕方がない······か。それよりも情報の共有をしたい。······まずは君達の事を教えてもらいたい」


「俺達は冒険者養成学校でレッカと共に、ニナと朝焼けの空っていうパーティーを組ませてもらっていた。俺の名前はノエル。一応パーティーのリーダーをさせてもらっている。此方は頼れるパーティーの盾役であるテツ。そしてこっちはパーティーの支援役で、俺のこっ······恋人の······アオイ·······です」


 パーティーメンバーとしてアオイに接するのは何も問題無いのだが、未だに二人っきりの時には意識してしまうのだ。

 『恋人』と口に出して言うのは難易度が高い。アオイも『恋人』と呼ばれることに慣れていない様で、顔を真っ赤にしていた。


「ふむ、レッカとニナの様な気安いカップルしか最近は見ていなかったからな。·······こんな初々しいカップルを見たのは久し振りだよ、うん」


 何故か俺達の様子を見ていたケモナーさんまで顔を赤くしてしまった。


「っと、そんなことよりどうしてここに来たのか教えてもらってもいい? このバカに聞いてもいいんだけど、目が覚めたら追い付け無いこと関係無しにレッカを追っていきそうだからねぇ」


 苦笑いしながら、背中に背負っているニナに視線を向けてそういうケモナーさんに、俺達は思わず苦笑を漏らしてしまう。確かにニナが目を覚ましたらそうなるだろう。


「俺達がここに来たのは、ニナからの依頼を受けてですね。ニナから聞いたのは、黒い炎に燃やされた人がニナの幼なじみの言うことに逆らわなくなったということと、レッカが自分を逃がすために森に残ったから助けてほしいということです」


 俺の言葉にケモナーさんが頷く。


「成る程。大体の事は知っているみたいね? ただ、さっきも見た通り、レッカはどうやら手遅れのようだし、これは獣人の問題だ。人間のあんた達が手を出す問題じゃあない」


「······何が言いたいんです?」


 俺の言葉にケモナーさんは、一つ笑うと


「あんた等が私たちに手を貸す義務も何も無いんだからこのまま帰って良いって言ったんだよ。恐らく今ならアルファもあんた等に手出しはしないだろう······流石にニナを連れていけば攻撃されるかもしれないから、その場合はニナはここに置いてって貰うことになるけどね」


「断る」


 ケモナーさんの言葉に真っ先に答えたのは、意外にもさっきまで黙りを決め込んでいたアオイだった。(アオイの場合は気心が知れた相手としかあんまり喋らないが)


「·······どうしてだい? ここで無視したところで最悪亜人族が滅ぶだけだよ? あんた等は気づいていないかもしれないが、アルファの炎が操れるのはどうやら男だけの様だから、亜人族全てが人間族に牙を剥くなんて事は無いんだ」


 アルファの炎が操れるのは男のみ。

 それは良いことを聞いたとばかりに、俺とテツは顔を見合わせて頷きあった。それなら数の暴力によって叩き潰されるという可能性が無くなった。

 

「私が助けたいのは別に亜人族でも獣人属でもない。私が助けたいのはニナ」


「はっ! 獣人族とか人間族とかは関係ないって事かい! ······面白いね。なら、私は此方の持ちうる情報を全部教えてやるよ」


「それはありがたいんですが······俺たちの事をそんなに簡単に信じていいんですか?」


 俺の言葉にケモナーさんは頷くと、再び背中のニナに目を向けて、


「こいつは頭は色ボケだが、人をみる目はそれなりにある。特に悪意なんかにはある程度敏感でな。こいつが信頼してんなら私も信頼出来るんだよ······あっ、今回のアルファの件を見抜けなかったのは、こいつとアルファが普段から悪意をぶつけ合っていたからだぞ?」


 最後によく解らない言い訳のような言葉が聞こえたが······うん、とにかくそういうことらしい。


「なら、まずは今の状況だ」


 そう言ってその場に地図を広げるケモナーさん。その地図の場所を幾つか指で指し示しながら説明をしていく。


「まず、ここがニナとレッカ、それに私が住んでいた故郷だ······今では敵の本拠地になってるがな。そして、次に······」


 示した場所から指を真下に下ろして、丸を描く。


「この辺りが、今私たちが拠点にしているところだ。元々は魔物の襲撃で廃村になっていた所を使っている。そして······」


 最初に指し示されたニナ達の故郷の場所の近くを数ヶ所指で丸を描いて示す。


「この場所にある村はもう襲われてしまったことが確認されている。残された住民の避難も完了しているよ。他の村に関しては女性を中心とした部隊を編成し、事情を説明して一旦此方へと合流してもらうように説得しているはずだ」


「その他には何をされてらっしゃるんですか?」


「まぁ、あんた等が見たように巡回。此方に関しては村に直接向かうよりはアルファと出会う確率は低いからって理由で男性も普通に入れてるよ。······とは言っても念には念を入れて、ある程度隠蔽が得意な奴だけだけどね。それと同時に食料の調達なんかもそのグループに任せているよ。人数が増えれば増えるほど、食料も必要になるんだ。結構このグループに関しては人が多くなっているよ。後は防衛だが、読んで字の如しだ。説明は要らないだろう?」


 ケモナーさんの言葉に頷く。


「後は······」


 ケモナーさんが続けようとするが、そこにケム爺が来て会話を遮った。


「ケモナー、長老会議の準備が整った。どうやら人間達が来ていることで、相当ピリピリしておったらしい。すぐに来いとの事じゃ」


 それだけ言ってケム爺は此方に背を向けて歩いていく。


「······ったく、これだから最近の老人はせっかちでいけねぇ。聞いての通りだから話の続きは向こうでだな。あんた等にもついてきてもらうけど、一つだけ注意がある」


 ケモナーさんが真剣な顔でこちらを見る。


「何を言われても絶対に手を出すなよ?」


 この時はケモナーさんがどうしてこんなことを念押すのかわからなかったが、俺達はすぐにそれを思い知ることになるのだった。

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