案内
「ニナ、どう?」
「見た感じでは大丈夫っぽいにゃ」
姿を表した獣人のおじいさん相手に警戒を緩めずに訪ねる。ニナが大丈夫だと思っても本当に大丈夫だとは限らないからだ。
そんな俺達の様子を見て獣人のおじいさんは両手を上げる。何かの合図か?
「心配せずともワシに敵意は無い」
「いきなり攻撃しておいて信じてもらえるとでも思っているのかにゃ? それに───」
ニナが言葉を切って幾つかの場所に視線を向ける。その場所の一つに最初矢が飛んできた場所も含まれている事から、俺達に気づかれないように潜んでいる人達の居るところなのだろう。俺の生命探知でも幾つか探知できている。俺が探知できていない分は、相手の隠蔽が上手なのか、距離の問題だろう。
「こそこそ隠れながら信用しろなんて言われても信じられないにゃ。それもこちらが人数を誤認する様に態々隠蔽に強弱をつけているなんて、どうぞ信じないで下さいっていってるような者にゃ」
うん、どうやら理由は前者だった様だ。アオイも驚いたのか、ピクリと眉を上げている。っていうか、ニナはそういう事までわかるようになってたのか······。
そして、隠れている者達の存在を言い当てられたおじいさんは、
「ふむ、確かに隠れている者達や意図的に騙そうとするような行為に関しては詫びよう。しかし、理解してもらいたい。今はこうでもしなければならない状態だと言うことを」
おじいさんの言葉にニナは無言で俺達の顔を見る。恐らく俺達に、どうするのかと言うことを尋ねたいのだろう。
しかし、俺達にもどうするべきか計りかねていた。敵か味方かで問われたならば味方なのだろうが、俺達への対応を見るに、何時敵に早変わりするかも解らなかったからだ。多分今でも俺達に向かって矢を構えているだろうし。
しばらく無言で視線を交わし合う俺達。そんな中でニナの耳が大きく動いたかと思うと、視線を森の奥に向ける。
しばらくしてニナが視線を向けた方から一人の獣人の女性がおじいさんの後ろに降り立った。
「ケム爺、緊急事態よ。急いで戻って───ってニナ!?」
「ケモナーさん! 無事だったのかにゃ!?」
ケモナー······って確かニナの師匠の人だったっけ? 確かニナがそう言ってた気がする。
「ニナこそ無事で良かった。レッカは───」
俺達の方を見てレッカがいないことを確認したケモナーさんの顔が曇る。
「ごめん、ここに居ないってことはそういうことだよね。取り敢えずここにいちゃ危ないわ! ケム爺も一旦ここから退避して!」
「一体何があったのじゃ?」
「この近くの村に襲われた痕跡があったわ。だからこの近くだと奴らにいきなり襲われるかもしれない」
ケモナーさんの言葉におじさん───ケム爺が頷く。
「取り敢えずニナと······そのお仲間さん? も一旦一緒に来て! 詳しいことは戻ってから説明するわ!」
「ふむぅ·····いかにも怪しい連中じゃが信用できる者なのか?」
「少なくともその獣人の女の子は信じられるし、その子が信じているのなら人間だって信じられるわ。勿論何かあったら私が責任は取る」
「そこまで言うのであればわしからは何も言うことは無い。皆の者! 撤収じゃ!」
ケム爺の言葉と共に木の上や、茂みの中から多数の獣人が姿を表して走り出す。その後を追うようにケム爺も走り出した。
「さぁ、私達も急ぐわよ。ここにいたら、何時奴等に見つかるかわかったもんじゃ無いわ」
ケモナーさんの言葉に俺はニナの方をチラリと視線で確認するが、自信たっぷりに頷かれた。どうやらニナはこのケモナーさんの事をかなり信用しているらしい。
「大丈夫にゃ。ケモナーさんは信頼出来るにゃ」
ニナの言葉に頷いて、俺達はケモナーさんの案内でケモナーさん達が拠点にして居る場所に案内してもらうのだった。




