破魔の試練について
今回少し短いです。
「ふむ、今回召喚された勇者はそこまで酷いものじゃったか······」
「あぁ、今回俺とノエルは、男だから一緒に旅をしても楽しくないと言った理由でパーティーメンバーから外されたし、残りの一人のメンバーの勧誘のためにいきなり襲いかかって来おった」
あの時テツは落ち着いているように見えていたが、実は怒っていたのかもしれない。
「───その後も残りの一人のパーティーメンバーが自らの思い通りにならなくなれば、魔王と戦わん等と言い出しおった。流石にそんな奴に勇者を任せる訳にもいくまい」
テツが言葉の最後に拳で机を叩いた。
「それならテツよ。なぜお主が勇者になって、その勇者の代わりに魔王を倒そうとしない? 守人の一族の使命を考えるなら、勇者の仲間になれなかった時は破魔の試練を受けて勇者の敗北に備えるはずじゃが······」
「俺がやるよりもノエルがやった方が確実······ただそれだけの話だ」
テツの言葉にサオンさんが再び俺の方を興味深げに視線を向ける。
「あの負けず嫌いのテツにここまで言わせるとは······面白いの」
テツってそこまで負けず嫌いだっけ? まぁ、良いか。それよりも今は破魔の試練の話だ。
「破魔の試練ってどんな内容なんでしょうか?」
「破魔の試練とは、この村の最奥部にある試練の間と呼ばれる場所で行われる者で、一人で立ち向かって貰うことになる·······まぁ、そこまで難しいものでは無い。挑戦者の半分は無事にクリアして戻ってきておる」
それって······残り半分はどうなったのだろうか?
「成功した者から聞いた話を総合すると、破魔の試練では勇者の力を受け継ぐ者の意思と、覚悟を試されるようじゃな。その方法についてはそれぞれ違うようじゃが······」
「意思と覚悟······」
「うむ、そして破魔の試練を受けて勇者の力を身に付ける事の出来なかった者は······試練の間から戻ってくることはなかったそうじゃ」
ゴクリと唾を飲み込む。サオンさんの言葉に思わず暗いところに閉じ込められて出られない姿を想像してしまったからだ。
「今ならまだ止めることも出来る。止めておくことも出来るんじゃぞ?」
サオンさんが俺の内心を探るように目を覗き込みながら俺に問いかける。俺は両手で一発頬を叩いて決意を固めると───。
「いいえ、やります! あれがアオイとの最後の別れだなんて認めない! もう一度再会してアオイに俺の気持ちを伝えるんです!」
「えっ!?」
俺の言葉にウィンさんが不思議そうな声を出してこちらへと顔を向けるが、サオンさんの方を見ていた俺はそれに気づかなかった。
「ふむ、目から迷いが消えた······か。良いじゃろう。試練の間まで案内しよう。ついてくるといい」
そう言って椅子から降りて歩き出したサオンさんの後ろを慌てて追いかける。
その後ろで───、
「ねぇ、あの二人って付き合ってたんじゃないの?」
「いや、ああ見えてまだ付き合ってはおらんかった。と言うよりもノエルがアオイの気持ちに気づいていなかっただけなのだが」
「嘘でしょ!?」
テツとウィンさんの間にこのような会話が行われていたのだが、それにも俺は気づいていなかった。
次回より破魔の試練に入ります。
一応次回更新は日曜日を予定しております




