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鬼と人と約束と  作者: 敦人
二章 謀略の魔王
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人の国へ

城塞都市を囲む壁、その南門を眺める樹上にノイルはいた。手に幾つかの玉を握りそれを額に当てては記憶を読み取り笑みを濃くする。

自身に会った事を抜き取った記憶の玉をしまい、記憶を読み取った玉を割った時それはきた。

風を切る音を連れた矢だ。


ノイルは舌打ちと共に膝を枝にかけ頭を身体ごと下に反転させる。同時に幹に矢が刺さり続くように矢が迫る。

足を伸ばす動きで落下を選んだノイルは着地と同時に後方へ走り出す。

マズイの、と思い速度を増した時今いた地面に矢の雨が降り注いだ。


「ラズの奴め、昔より加減が効かなくなっておるわ。」


ココ、と笑い距離を離し振り返るが追われている気配は無く木々を揺らす風の音しかしない事を確認し安堵の吐息を漏らした。






「うーん、仕留めれませんでしたね。」


矢を番え構えていたラズは弓を下ろす。

射線を木々で防ぎ後退されたのならここで射っても当たらないだろうと判断したからだ。


「追いますか?」

「いえ、下手に追えば化かされます。それに私達の仕事は見回りですのでほっておきましょう。」


エリザも弓を下ろし頷く。


「ではアンリに報告だけしときます。」


ラズは壁を降り駆けていく背を見送り改めて森へ視線を戻す。


「引き摺り出せる方法があれば楽ですけど・・・。」









寝室内ベットの上に荷物を広げては指輪にしまう作業をしていたアンリは慌てていた。

出発の時間が迫りカイネが冷たい視線を向けているからだ。

サラは衣服を丁寧に畳みアンリに渡しながらドアに振り向く。


「アンリが終わらなきゃ行けないんだからカイネも手伝え。」

「知らん。それより聞け、私の支度は起きたら終わっていた。神の奇跡かもしれん!」

「その奇跡を起こしたのは俺だ。そのせいで遅れてんだよ!」


カイネはふむ、と頷き首を横に振る。


「証拠が無い・・・神の奇跡としておいた方が良いな。」


カイネはドアから離れると階段へ向かいながら言葉を続けた。


「忘れ物はするなよ、主が嘆くからな。」


残された2人は溜息を揃え支度を再開させた。






事前に仕込んで置いた転移魔術を使いケンタウロス族の集落まで移動したアンリ達は打ち合わせ通りに近くの村に向かっていた。

そこに馬車を待機させておくとの事で、そこからは御者に任せれば良いと言われていたからだ。


枯れた草原の先、遠く豆粒の様な陰影が村だろう。

フードを深く被ったサラは周囲を見回しカイネに視線向ける。


「昔より荒んだな。この辺りにも村があっただろう?」

「あぁ、あったな。随分前に鬼が暴れて消滅したきりだが。」


数秒の沈黙をサラは咳払いをして誤魔化した。

アンリはサラの横まで移動し周囲を見渡すと口を開いた。


「ラズから聞いてたけどサラが暴れてたのはこの辺か、なんで荒らしてたんだ?」

「・・・なんでだろうな。」


理由はわかっている。

失った友人の復讐と幼く何も出来なかった自分への怒りをぶつけてただけの事だ。

それを言うのは何か嫌だと思い、


「若気の至りだろう、成長して調子に乗ってたんだよ。」

「ヤンチャ盛りか、でカイネに負けたと。」


カイネはVサインを作りハハ、と笑い声をあげた。

サラは溜息をこぼし頷く。


「寝込みを襲われてな、ここより南に地割れがあるんだがそこから突き落とされた。」

「そりゃな、鬼とまともに戦うなんて面倒だろ?

とはいえ這い上がって来るとは思わなかったが。」

「ハハ、その後殴り合いでも負けてまた落とされたな。思えばあの時が初めての負けか・・・堪えたなあれは。」


2人は懐かしむように話に花を咲かせながら歩いていく。

アンリはそんな2人の会話に耳を傾けながら道中を進み村の近くまで来た時3人は足を止め馬車を探す為に周囲を見渡した。


「あの丘にいる人達かな?俺も準備しないと。」


アンリは懐を探り猫耳カチューシャを取り出すと自分の頭へ付け軽く頭を振り感じを確かめた。


「おい馬鹿なんだそれは?」


カイネの言葉に振り返ったアンリは肩を竦め、


「これは『君も獣人セット』の・・・」

「何故付けているのか聞いてるんだよ!」


アンリは溜息をつきカイネとサラを指差した後に自分を示す。


「良いか?俺に足りない物は何かを真剣に考えたんだが2人に比べて個性が足りないと結論した。

何しろどこから見ても凡人だろ?

そこで服装やアクセサリーで個性を表現するしかないと判断した結果がこれだ。わかったな?」


カイネは無言でカチューシャを取り上げるとアンリの目の前で真っ二つに折った。


「お前に足りない物はまともな思考力と羞恥心だ。わかったな?」


崩れ落ちたアンリを無視して2人は村へ向かう。



村の周囲は柵で覆われ、出入口として扉が付けられた門が一つ空いていた。

柵内には小さな家と牛や羊などの酪農スペースが収まっていた。

外に畑が広がり小道横には水路が掘られ所々で作業をしている人が見える。

それらを見渡せる丘上に馬車と護衛の騎士が馬と共にいた。

シーズ大森林の方角を向き手を翳し見ていた御者は3つの人影を確認し騎士に頷くと馬車を連れて移動を始めた。




「アンリ様、カイネ様、サラ様で間違いないでしょうか?」


御者は3人に一礼と共に確認の言葉を作る。隣に立つ騎士もまた、会釈をし3人の顔を見た。

アンリが1歩前に出て会釈を返し、


「うん、わざわざ来てくれてありがとう。証明はいるか?」

「是非、お願いします。」


その言葉にアンリは頷きサムトから渡された招待状を渡すと騎士が確認をし、丁寧に畳んで手渡された。


「間違いありません。失礼しました。」

「いやいや、それじゃよろしく頼むよ。後、馬車の中って飲食禁止?」

「いえ、ご自由にお使い下さい。また到着は夕方になりますので道中何かありましたらお申し付け下さいませ。」


3人は頷き、順に馬車へ乗り込む。カイネは右の座席に寝そべり、サラとアンリは左の座席に並んで座った。

騎士が入り口を隠すように布を下ろすとゴトリ、と揺れ馬車が動き出した。


アンリは初の人の国へ期待を膨らませた。

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