戴冠
―ブルトン王国、王宮訓練場―
(御主人様より頂いた麒麟族の名に恥じぬよう我等は進化せねばならない)
(うむ、その通りだ)
(でもどうするの)
(御主人様達との会話は我輩達も変わらぬ程に喋ることができた、これは偏に普段の努力訓練の賜物である。よって更に我等は特訓そしなくてはならない)
(もっともだな)
(確かに言いたい事は理解できるわ、訓練なくして御主人様たちと会話などできる筈も無かったもの)
(そして我輩考えたのである。時折実験中にお尋ねして我等麒麟族の持つ意味とは何かをっ)
(そんな事してたのか、邪魔したらだめだろう)
(いえ、それよりその意味って何か知りたいのは私も同じよ)
(うむ、麒麟とは御主人様の世界でいう聖獣、霊獣という存在らしく、万里を駆け抜ける王を選ぶ存在だったとか、空を飛ぶことさえあったらしい)
(なんだとっ、それは本当か)
(ああ、これで我輩達が訓練すべき目標が決まっただろう)
(まさか、ウラヌスあなた)
(そうだ、空を飛ぶぞ我等はっ)
(でも翼が無いわよ)
(御主人様は翼なしで飛翔するではないか、そう云うことだろうウラヌス)
(理解が早いな、そう魔法を練習するんだ、そこで特別教師をお招きしている)
(えっと、何故か呼ばれることが出来てしまったシルフィです)
(おお、シルフィ様にお願いしたとは)
(さすがねウラヌス)
風の精霊であるシルフィに念話を飛ばして繋がる事が出来てしまったウラヌスは魔法を覚えるべく行動を開始した。全ては御主人様の為、空を飛んでみせる。その努力する精神に打たれてシルフィは協力を約束した。まさか実験している間にこのような出来事があったと慶司は知らない。その後もシルフィの心遣いで彼らの努力する姿は知られる事はなかった。
―ケルン城砦都市、建設現場―
「よし、お前等良く聞け、これからこの国は変わる、戦争を仕掛ける事はない国になるだろう、だがなそれを良しとしない国ってやつと宗教って厄介なのが存在する。そんな奴等から人々を守る為に俺達国軍は存在するんだ、決して誰かに負んぶされるような存在じゃない、その為に俺達はここに新たに防壁と拠点を作る。だから戴冠式典には俺らは参加できない、けど誇りに思え、国を守る為の防壁だ、気合入れて作ってくぞ」
「「「おおおーっ」」」
「しかし、あの慶司殿は凄いものを送りつけて来ましたね」
「ああ、これがあれば森を失わないで煉瓦を作ることが可能だ、まさか5万人からすこしづつ魔力を集めて建築に利用するなどとは思いもしないだろな」
「この空調符もそうですよ、急いで全兵士分の発注をお願いしましたから」
「俺達が魔法とか魔術と考えたら戦争で使う武器や攻撃なんだがな、平和利用するなどと思いもよらないよ」
「その上でこの設計図ですからね」
「これを仕上げるのは大変そうだよな」
「はい、でも行程も分担して全てを同時進行させるなど工夫もありますから壁だけなら直に出来てしまいますよ」
「あとはこれを完成させた後の事業が大変だな」
「ええ、まさかあんな計画を立てると聞いたときは耳を疑いましたよ」
「俺なんて驚きすぎて顎が外れるかと思ったさ」
「まあ先の話ですけどね」
「そうだなまずは城壁を作ってから城砦に取り掛かるぞ」
「ハイッ」
―ブルトン王国、王宮会議室―
ブルトン王宮へ戻った慶司とエルは早速会議での決定内容を伝えた。
するとシャーリィは嬉しさのあまり跳び上がった。
「では、四種族が使節を送ってくれるとっ」
「うむ、そういうことに決まってしまったのじゃ、お蔭で我も出なくてはならん」
「元々参加していただく事になっておりましたわ」
「そうです、慶司様達はこの国を救った英雄ですわよ、参加してもらわないと始まりませんわ」
「いや、なにそれは構わなかったのじゃがな、竜族の代表となるとほれ目立つじゃろ、旅をするのに邪魔になりはせんかと思うてな」
「大丈夫ですわ、式典に参加するのは貴族のみですし、彼らには竜族のお姿を口外せぬよう申し付けます」
「そうか、解りやすいほうがよかろうとグラディスが言うのでな全員が式典の前に竜体で飛来することになってるのじゃが、それは構わぬかの」
「ええ、王宮の裏の訓練場でしたら問題ございませんが竜体になられるのはその場で問題御座いませんか」
「天幕を用意しておいてくれればそこで着替えて出てこよう」
「了解致しました、手配しておきます」
「あと宴席なんだけど、俺が一品出す事は可能かな」
「まあ、是非お願いいたします」
「それと、ちょっとした都合でブルガンも来るぞ」
「ブルガン様が来るなどとしれたら侍女隊が騒ぎますわ」
「グラディス様もわたしの一族では信奉者が多いですし…その上四種族が全て揃うなどとなれば」
「ウフフ、皆これを聞いたら驚いて寝込むんじゃないかしら」
そんな軽いつもりで言ったシャーリィの言葉は実際に聞いた物が驚いて倒れたり、放心した者がでたので笑えない事態予見していたのかも知れない。特に父親であるミラン大公も驚きで腰を抜かしてしまった程である。
そしてベス女王と竜族の会見から5代の時を経て、遂にブルトン王国は竜族との悲願であった国交を上回る成果を果たすこととなる。
「ところで慶司様が出掛けた間にケルンから資材発注がきまして…」
「なにか必要な物があったかな」
「その空調符を5万人分…なのですが、安くしてもらえませんかっ」
「5万個ですか…またムーサさんに叱られそうだ…ちょっと確認はしますが流石に一度で納入するのは厳しいと思いますよ」
「解っております、それに他の竜具も手に入れたいので此方に支店を作って頂きたいのですが」
「支店ですか…貿易上で問題にならないかな」
「そのあたりも一度御相談していかねばなりませんね」
「そうじゃな、今は物々交換のみを主体としておるが、その辺りも話し合わねばなるまい」
「国としては本来貨幣を鋳造できる事は権利ですが…私はこれを統一金貨として竜族の国の物を使用できるように出来ないかと考えています」
「よいのか、それでは政策などで何かをなすときに貨幣を鋳造できぬぞ」
「これから平和を目指す国です、新大陸からも手を引き国庫も安定している現在ブルトンは債務をおっておりません、5代前のベス様の時代より戦争をしていないのは強みですから、その代わりに竜族に貨幣交換をしていただかなくてはいけない分負担を掛けてしましそうですが」
「なに、貨幣を統一するなら構わぬが…主様のやろうとしていた事業はどうする」
「あれこそ時間を掛けてする事業ですし、現状より兵を持たなければ問題なく勧めるかと思います」
「ふむ、そのあたりは此方の貿易にも関する問題じゃから手助けはできるとして、商人のしておる事業などはどうする、我等竜族が規制しておる内容の物など問題がでるぞ。」
「そこはベス様の時代から徐々に竜族の体制を真似て政策を進めた甲斐もあり隣国との為替交換以外は問題ないかと思います」
「ふむ、おもったよりもスムーズにすすむのじゃな、よかろう、それは次の会議に掛けておくゆえ、主様の店も出して問題はなかろう」
「構わないの」
「まあ、物流として認めて冒険者ギルドに認めたような処理を適用すればよかろう、徐々に緩和する方向でいけば互いの国の影響も少ないじゃろう、まず認可制からじゃな」
「そうか、そうなればメルクさんたちも喜ぶだろうね」
「うむ、国と国もウィンウィンでなくてはいかぬ、商売もそうじゃからな」
「竜具屋ができたらきっと繁盛しますわ」
「楽しみね、ミランダ、貴女は特に竜具について評価していたもの」
「それはそうですわ、女性の生活をここまで変えてしまう魔術道具なんてありませんでしたもの」
「じゃあとりあえずムーサさん達に相談して決めるけど大量には無理だと思うんだ…」
「大丈夫ですわ、直営店を作ることが出来ればもっと伸びますわよ」
「そうかな」
「ええ、この国では100%私が保障いたしますわ」
にこやかに何故か説得されてしまい、ムーサに連絡を取った慶司だが…
シルフィは頑張ると言ってました、とだけ慶司に伝えたので大丈夫だろう。
そして時間は過ぎて即位式典が始まった。
太陽が高く上った頃を見計らって大空から四種族の竜が飛来した。
エルの代役はブリガンである。
降り立った竜族をシャーリィが出迎え共に謁見の間へと進む。
竜玉を持ったブリガンがその後に続き玉座の奥で待機した。
この竜玉は慶司が作成した竜鱗結晶を透明な水晶で覆ったものである。
貴族が見守る静寂の中ドレスと着たエル達が玉座の上から一同を見渡して宣言した。
「我等はこの大陸を守護する竜族の代表として告げる。このブルトンの地を任せる者として女王シャーリィの即位を認めこの地にも竜族の加護を齎す。これは我等竜族の支配地と同様の庇護を与える事であり、何人たりとも犯すことを許さぬ、女王シャーリィの治世において驕らず平和を守ろうとする意志がある限りその後見たることを宣言する。これによりブルトン王国と我等竜族の支配地での国交を認め、支配を承認する証として竜玉を授ける」
「この竜玉に誓って、この国を導かせて頂きます」
竜玉を受け取ったシャーリィが向き直り、宣言を続けた。
「女王シャーリィ・テンプル・ノイマンとして宣言する。これより我が国は変わる。竜族の加護の下で安穏と暮らすためでなく、自らも努力し平和を目指す王国をめざす。そのために国法を幾つか定め布告いたす。皆にも伝えている通り、奴隷撤廃、差別廃止、聖教会の禁止、新大陸開発からの撤退を基本としての改革を始めに宣言する。国教会はこれより聖竜教として存続すると決まった。我等は共に大地に住むものとして他者を貶める宗教を認めぬ、本日をもってブルトン王国の新たな出発の日とする。皆の努力に期待する」
「「「ハッ御心のままに」」」
その後の晩餐会では楽しそうに食事を食べる竜族の長が目撃されたと言われている。
そして一人厨房に篭って次々に料理を仕上げる一人の冒険者の姿を宮廷料理人は目撃したという。
「暫くの間料理をしたくないかも」
「まぁたまには妾やエイミーが料理するのも良かろう」
「じゃあそれでいいかなぁ、ちょっと回り道しながらケルン砦を目指そうか」
「ふむ、もう護衛は必要もないからの、ちと寂しいがまだまだやる事もある」
「じゃあ出発の準備をしないといけないにゃ」
「ルージュさんはどうします、一応これで護衛は完了とみて問題ないと思いますけど」
「そうだなぁ赤竜の牙には連絡を入れるとして、次に召集が掛かるまでは一緒に着いて行ってもいいか」
「そりゃルージュさんが一緒に来てくれるならありがたいですけど」
「正直別にお金に困る訳でもないからさ、楽しい事を探さないと」
「そんなに変なことをする気は無いんですけどね」
「世の中にはその気が無くてもそうなる運命の奴がいるもんだよ」
「その通りじゃな」
「まさしく慶司にゃ」
「酷いなあ」
シャーリィの即位で大方の問題はなくなり、竜族との国交が出来た事で何か緊急の事が起きても連絡がつくようにはなった。まずは慶司の立案している事業が可能か現地へ赴く為に出発する事となった。
出発まで一週間の猶予をもって慶司は旅の準備を進めた。
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