六精契約《キングオブエレメント》
「そうですか、残念ですわ」
「まあ、あと一週間はここに居させてもらってからなんだけどね」
「それに例の部屋を用意したことで連絡はいつでも可能じゃ」
「仕方がないのよね、元々冒険者の方に此処までしてもらったのが異例なのだもの」
「普通の冒険者じゃなかったからにゃ」
「そうですわね、慶司様くれぐれも出発までに竜具屋の件はお願いします」
「大丈夫ですよ、その為にも時間を掛ける予定ですから、どの道まだ先日送った煉瓦生産も軌道には乗ってないと思うので」
「やはりあちらの件を見に行かれるのですね」
「はい、この先フルトリアとの関係を考えた時に絶対必要な城砦ですから」
「宜しくお願いします」
「大陸の西に海上交易ルートが作れればいいんだけどちょっと厳しいからね」
その後も今後の予定を伝えながら、お茶会となって慶司の作ったレシピのお菓子を食べながら過ごした。
そこからの慶司の日々は忙しかった、まず竜具屋の支店開設である。
任せられる人を探す事から始めたのだが、これはミランダさんの提案で侍女隊から志願者を募る事が出来た。
アルマ、ブリギット、ダニエラという三人が候補の中から選抜された。
一応は面接らしきものをしてみた。ミランダさんが推薦するだけあって確りとしていたので能力的には問題がないのだが、なぜ侍女隊を辞めてまで竜具屋に勤めるのかが気になったのである。
「「「勿論この竜具の素晴らしさを広める為です」」」と一斉に返答されたのには困ったのだが嬉しい話でもありお店を任せることになった。
そして店舗を見つけてもらったのだが、慶司は現地を見て絶句した、まさか王宮に近い土地を譲られるとまでは思ってなかったのだ。見に行きましょうと声を掛けてもらってから到着まで、王宮を出て徒歩30秒と言った所だろう。目抜き通りの一番端っこである。元デブル公爵の所有する邸宅の一つだった。
これぐらいの物はお礼にもなりませんから、と一言で片付けられてしまい一等地に店舗を構えることになった。
しかし店舗にするとなっても屋敷では無理がある為、塀と門の一部を取り壊して店舗部分を増築する形で利用する事になった。屋敷はそのまま残して一部を働く三人に開放して使ってもらい自分達が訪れる際の宿にすることにした。
それから商人ギルドへと赴き竜具屋の登録をしたり、交易関係の書類を整えたりとブルトンの王都を走り回った。暇をみて慶司はリヒトサマラのムーサに合う為に魔素の濃い木まで見つけて移動をした。
「よう慶司、お疲れ…」
「なんだか元気が無いですね」
「フッ、忙しすぎて元気もなにもありゃしないさ」
「確か前に従業員を100人にしてませんでしたか」
「それだけ増やしてもまだまだ忙しいってんだ、そこに5万個の注文だぞおい。一人500個作っても他の注文もあるから追いつかん、というわけで慶司、もう少し増やすぞ」
「どれ位まで…」
「そうだな、一応竜具だけで成り立ってる会社ではないからな、今は茶と紅茶、石鹸、玩具だろ、あと一部絹の職人も雇った関係で織物と薬草もすこし扱ってるから、そうだな竜具で販売数が落ちても食わせていけるだけ増やそう」
「そうですね、というか何だか竜具屋では無いぐらいの規模になってますね」
「提案されたスープの素とかも作ったら売れ出したしな」
「それで今回は一応ブルトンの支店についてですが」
「それな…とりあえず商品は輸送するけどぶっちゃけ遠いぞブルトンは値段も上がる」
「そうですね、初期はそれで行くしかありませんが、今別の交易方法を検討中なんですよ」
「そんな事ができりゃあいいが、とりあえず初期の販売設定の価格は海上輸送で経費を割り出してくれ、一回の輸送で船に乗る数と運賃だ、これに沈んだ場合の損益まで計算が必要になる」
「解りました、じゃあ頂いて帰りますので宜しくお願いしますね」
「ああ、たまにはもうちょっとゆっくり出来る時にも来いよ」
「はい、では今度は時間作ってきます」
次に向かったのはエルファストだった、一番近いだろう所へ【幻日環回廊】を開いて飛んで行く。
「あら、慶司さんじゃないですか」
「こんにちわ、急に来てしまってすいません」
「構いませんわ、どうしたのでうか」
「えっとコレが先ず一つ目です」
「まあ、今日のはなんだか緑色ですのね」
「お茶の粉を入れて作ってるので少し苦いものと甘いものの組み合わせが楽しいですよ」
「これは嬉しい用事ですね」
「それと、山なんですけど」
「山ですか」
「ええ、この大陸を上空からみて思ったのですが西の海岸は全て山で閉ざされてますよね」
「そうですね、海岸とあとは東西に走る大山脈とさらに東で上下に別れて伸びていますわ」
「これって削ったら問題でしょうか」
「削るって山を削るのですか」
「はい、今の状態だと東洋海上航路しかないので不便すぎるなと思って」
「ですが流石に竜族でも山を削るのは厳しい作業になりますよ」
「ええ、それは理解してるのですが現在繋がっていない交易路を作りたいのです」
「そうですか、全部を破壊するなら止めるべきでしょうが、一部を通りやすくするのであれば問題はありません」
「それとブルトンの丁度南辺りの山を越えて海交易路を作ってみたいなと」
「海路に関しては見回りの件がありますからヒルデさんにも連絡しておきましょう、その作業は誰かに手伝いをお願いしますか」
「いえ、魔法の練習をしたいので練習しながら進めていきます、それじゃまたお菓子をもってきますね」
聖地でマリシェルの了解をとりつけ、次はドレスッセンへと向かった。
この地を選んだのは順番の違いはあるがある目的があったからだ。
「この岩でいいの」
「ええ、あの子はここがお気に入りで竜族に保管してもらっているのです」
「誰でしゅか」
「慶司っていうんだけど」
「おお、貴方が慶司さんか、初めまちひなのだ、ノルンなのだ、ちょっと待つのだ痛いのだ」
舌を噛んだのは滅多に喋らない寡黙な正確が災いしてる。
精霊の中でも常に黙りこんでいるらしい。
なんだろう、精霊ってイメージでほんと色々いるなぁ
ノルンは寡黙な大人しい姿をしてる。
「君と契約をお願いしたいのだけどもいいかな」
「わかったのだ、噂はきいて知ってるのだ」
今回の目的は移動範囲が広がりすぎているためウェンディだけではカバーしきれなくなった為、新たな精霊と契約する事も目的だった。
光の精霊は相変わらず捕まらないそうだが、ノルンを初めとして火と水そしてついでに雷の精霊の居る所にも今回訪れる予定だ。
(じゃあこれからよろしく)
(はいなのだ)
精霊はどこでも呼び出せるし、岩の場合はかなり限られると思ったら嬉しい誤算があった。
鉱物系で魔素が篭っていると顕現することも可能だというのだ。
これで更に場所が増やせそうだと思ったのだが、魔石は厳密に鉱石では無いらしく無理との事、世の中そんなに甘くなかった。
そして今日は喧嘩していないという火の精霊に会う為にグラニエスに来たのだが…
さすがに慶司でもマグマに近づくのは無理であった。
なんでも魔素が大量に含まれているらしく、火の精霊にとってはもっとも住み易いとか…
でもお蔭で契約する事の出来るものは限られるらしい。
「わざわざここまで連れてくるなんて、誰だよ」
「私よフレア」
「おうシルフィじゃねえか」
「もう、相変わらずの態度ね」
「へへへ、まあアタシは精霊だしな、でソッチの兄さんはだれだい」
「この人が前に話してた慶司さんよ」
「へえ、じゃあ僕と契約しに来たってわけだね」
「ああ、構わないかな」
「うーん本当は勝負して勝ったらとか、クイズに挑戦とか言いたいけど…後ろで睨んでるシルフィに免じて今回は特別だぜ」
「ありがとう」
「まったく…心配してたのはそうやって直に人を試そうとするからなのに、大体慶司さんのほうが単純に顕現してる私たちより強いんだから、まったく」
「へえ、そうなんだ、まあいいや」
(じゃあよろしくフレア)
(おお、確かにこの魔力はすごいね)
グラニエス近郊は魔素の塊でできた物が無かったのでこれでグラームの学校まで直に行けそうだ。
最後に訪れたのはラピル湖で大陸一大きな湖だった。
湧き出す水でも顕現は出来るらしいが、この場所での顕現を好むと言っていたので訪れたのだ。
「はじめまして」
スッと水の中から声が響いてきた。
せせらぎの様な澄んでいて柔らかな声音で語りかけられた。
「どうも、慶司といいます」
「お話はシルフィから伺っておりますわ、私の協力が必要なのだとか」
「ええ、湧き出る水のあるところなら大体は現れる事が可能と聞きました」
「そうですね、長く地中に篭もっていた水という事ですが、大まかにいって間違いはございませんわ」
「それで契約をお願いしたいのですが」
「よろしくってよ、私の名前はロミーです」
「ではお願いします」
(宜しくお願いします、ロミー)
(ええ、任せなさい、水は癒しを司りますから、私がいれば精霊の中でも特に癒しの力を使ってもらえるわ)
「頼りにさせてもらいます」
火の精霊だったフレアが体育会系としたら、こちらの水の精霊のロミーはお嬢様キャラだ。
どうりで仲が悪くなる訳である、性質も性格も違うのだ。
精霊にも個性があり、本質に正確が似るのは人間とそう変わらない。
さて、最後の目的の雷の精霊だが…これがものすごく厄介であった。
何しろ雷なので何処にいるのかと考えれば空の上と思うのも当然だった。
無理なんじゃないのかとシルフィにも伝えたが、空では無く魔素の多い場所で電気の貯まる石があり其処に宿っていると教えられた。その石がアルザスの山中に保管されている。
以外な苦労をさせられずには済んだのだが、苦労はするまで判らない物である。
「ああん、なんだテメエ」
これほどまで柄の悪い相手は冒険者崩れでも男性にしかあった事が無い慶司は唖然とした。
目の前にいるのは間違い無く女性の姿をした精霊なのだ。
「おいおい、口がきけねえのかこの野郎」
「ウフフ、あらら、偉く元気ねエクレアちゃん」
「グッ、シルフィなんでお前が此処にいるんだよ、っていうかそいつ誰なんだ」
「契約者がいないからって精霊界に顔を出さないのが悪いのよ、この方は私たちと契約されてる方よ」
「まて、私たちって何だよ」
「貴方と行方不明のソアラを除いた4人は既に契約してるのよ」
「……え」
「あの、慶司と言いますがその無理にお願いするのも悪いので嫌なら…」
「行方不明…、おいこらソアラァ!」
「なんなのよ騒がしいわね、うわぁシルフィ」
「あらあら、まあまあ、行方不明のソアラちゃん、どうしてこんなところに居るのかしら」
「あのな、その遊びに来ただけで」
「そうそう、ちょっとだけ出かける心算だったんだけど、ほら、私中々宿る物が無いじゃない、自分探しの旅にでたんだけど」
「そ、れ、で」
「「申し訳ないです」」
「全く、別に出かけるのはいいけど連絡ぐらい寄越しなさい」
「御迷惑をお掛けしました」
「連絡居れなくてすまない」
「ハァ、仕方ないわね見付かったからよしとしましょう、聖教会が怪しい動きをしてるから注意もしたかったのよ」
「すいませんでした」
「悪かったよ、その代わりにほら契約すっから」
「えっと良くわからないけど、それで許してくれるんなら契約するわ」
「良いのかな」
「構いませんわ、契約すればフレアのように理解しますわ」
(じゃあよろしく、エクレア、ソアラ)
(うお、納得したぜ、良い魔力だ)
(ふぉおお、この人が呼び出してくれたら私何処でもでられるじゃん)
(やったな)
(うん)
「フフフ、じゃあ貴方たちは暫く精霊界で反省会を開きますからね」
「「ウグッ」」
「程ほどにねシルフィ」
「や、優しいな慶司、ほらシルフィ慶司もこう言ってるし」
「うんうん、お手柔らかに一つお願いしたいのだよ」
「フフフフフ」
「「たーすーけーてー」」
本当に様々な精霊が居たものである。
自分探しの精霊に不良の精霊が存在するとは思っても見なかった。
精霊を崇めてる守人には知らせられない情報だ。
慶司は移動手段を手に入れる心算で精霊達と契約をしたが、この世界でこれほど多くの精霊と契約を結べた者が居ない事を知らずに最強の力の多くを手に入れたのである。
そんなところが慶司らしいとシルフィは暢気な顔の慶司を見て微笑んだ。




