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戦いに向けて

 王宮に戻った慶司達は対策を話し合った。

 子供の救出も必要だが聖教会派の貴族を捕らえないといけない。

 問題はハッケル男爵を捕まえたとしてデブル公爵まで追及が可能かどうかである。

 自白剤を使ってハッケルに自白させたとしても公爵が否定するのは目に見えている。


「上手く尻尾をかくしてるにゃ」

「やっかいじゃの、いきなり始末するのでは同じ穴の狢じゃしな」

「まずはハッケル男爵を捕まえて屋敷の捜索ですか」

「そのあとはアタシが殴って白状させてやるさ」

「フフフ、尋問は私ども侍女隊で取り仕切りますわ」

「とりあえず、捕まえるとデブル公爵がどう出るか、それが問題だね」

「近衛兵は王宮の守りだし、軍は東の砦にいる、ミランダ警邏で抑えきれるか」

「多少不安ですわね、第一騎士団の残りの人員では不安ですし」

「では国教会の騎士団も同時に向かいましょう」

「明日の朝合流して確定してるハッケル男爵の屋敷を押さえると同時にここは無理にでもデブル公爵とボアード伯爵も抑えたほうがよろしいかと思いますぞ」

「うむ、お父様も明後日には巡察から戻られるという、お母様もお父様と相談の後に退位なさり静養される。その前に怪しい動きは封じ込めたいわ」

「では決定じゃな」

「それじゃ俺はハッケル男爵の屋敷に直前に突入して子供を確保する。エルとエイミー、ルージュは医者の身柄を、セリーヌさんとヘンドリックさんは騎士団と共に各屋敷へ」

「私もハッケル男爵のところへ参りますわ」

「うーんでも流石に危ないですよ、それに護衛の任務があるじゃないですか」

「そこは侍女隊が務めますので、子供の件は私が約束しましたので出来れば向かいたいのですが」

「いいですわ、戻ってくるまで私はお母様とアレクと一緒にいます」

「有難う御座います」


 こうして突入の打ち合わせがされている頃、もう一方の貴族達も集まり密談をしていたのであった。



 ―ボアード伯爵邸―


 ハッケル男爵は言いつけの通り医者の息子を一週間に一度送りつけていた。

 詳しくまでは聞いていないが、恐らく毒殺に関する事だと気が付いてはいる。

 今日も任務をこなしてきた事と女王の様態を確認した報告をデブル公爵にした。

(ふむ、自然死に見せろと命じたが意外にかかるな)

 デブルの最初の計画からは大幅な修正が必要になっていた。

 少なくとも王女が死亡しているか帰ってこない事が重要だったのだ。

(役立たず共ばかりだ、黒狼もロゲリア王も使えん、クソ)

 最後のカードはデブルでも切ろうかどうか迷っていたのだ。

 だが、もし医師のいうとおりかなりの衰弱状態ならば戻ってくる大公を待って時期女王への譲位もありえる。

 これだけは阻止しなくてはならない。

 だから手を打った…

 ここで自分の下へと王位が転がり込むように…

 最後のカードもその後ならば有効に使える。

 デブルは集まった聖教会派貴族全員に演説を始めた。

 自信たっぷりに、己こそが次の王だと誇示するように…




 翌朝、早朝、まだ日が昇っていない時間。

 王都では騒ぎもおきぬ間に騎士団が素早く動いた。

 朝もやの中を寒さを堪えて裸足での進軍である。


 同時刻、すでに屋敷の裏手に控えていた慶司とミランダは一気に塀を飛び越えていった。

 慶司が手助けをしたといえど走りこんできて持ち上げる勢いを利用して壁を飛び越える姿は忍そのものだった。

 魔法をつかって後に続いて入り込みシルフィから聞いた部屋の外から窓枠を破壊して侵入した。

 子供を確保し、外へと逃がし慶司は突入してきた騎士達とともにハッケルを捕らえた。

 流石に毒は所持してないかもしれないが念のため口に猿轡をしロープでしばって連行した。


 問題は他の屋敷で起こっていた。

 セリーヌとヘンドリックが担当したデブル公爵邸とボアード伯爵邸に二人の姿が無かったのである。

 昨日まで屋敷に居たことは確認していたので昨夜から早朝にかけていなくなったのだ。

 セリーヌもヘンドリックも、とりあえず屋敷の人間を全て捕らえた。

 問いただしたが突然領地へと向かった事しか知らないと家宰の証言が取れただけである。


 そして全員が集まって話しあいをしたが今回の行動は偶然だろうと判じた。

 それが正しい事がハッケル男爵の自白によって証明された。

 尋問の際にルージュが偉そうな態度をとるハッケルにキレて一撃で壊した上、背後からミランダさんが何かを呟いたら顔を真っ青にして知っている情報を全て白状し始めた。


 判明したのは厄介な事態になりそうだということだった。

 聖教会派の貴族の賛同者20名がデブル公爵を王にする為に自領へと戻り軍を集め進軍する予定だというのだ。

 ハッケル男爵はそれまでに女王を確実に病死させる事を命じられていたらしい。

 デブル公爵家の騎士30人そこに従者が付き騎士団のみで200名、さらに兵士として抱えているのが200人、合計で400人、他の貴族ではもっと少なくて200人もいれば多いらしい。

 見込みで直に集結したとして多くみつもって5000人の兵が集まる。


 王国軍の主力は東のケルン砦に常駐している。

 これが5万人の兵士、ケルンはここから10日以上はかかるから軍隊だと20日程かかるだろう。

 直に動かせるのは近衛兵団500人 第一騎士団150人、周辺都市にいる第二第三騎士団360人、国教会騎士団100名、警邏隊1000名で2000人程、志願兵を募れば増えるので同等数には膨れ上がるだろう。

 防衛している間にケルン砦かもしくは他の都市へ増援をさせるとどう考えても勝ち目がないはずだ。

 ハッケルも詳細までは知らされてないと言っていたがなにやら自信があると言っていたようだ。


 とにかく防御を固めるためにという事に決まり周辺都市に展開している騎士団への連絡と各責任者を集めて会議を開く事となった。

 流石にこうなれば証拠を見つけ裁くどころの話ではない。


 会議が始まり、護衛としての立場で慶司は参加する事になった。

 参加者だが、近衛兵団長のツェルケ卿、警邏隊総隊長マカロフ、国教会司祭ミネーヌ、国教会派貴族マクシミリアン伯爵、ミラン公爵など王都にいた貴族である。

 会議の招集者としてシャーリィが最初に発言した。


「皆、よく集まってくれた、今回集まってもらったのは知らぬ者もいるのでことの経緯から話そう。未だに聖教会を信奉する貴族がデブル公爵を中心として反乱を起す事が判明した。

 まぁ最後まで聞いて欲しい、このデブル公爵の陰謀により我が母である女王シャルロットに対して暗殺未遂が行われたのが事の発端であると私たちは見ている。

 私をロゲリア王国に差し出す密約を交わし、帰国する場合に備え黒狼を雇い刺客を送ってきた。

 その後我が弟であるアレクスを擁立するため篭絡するべく接近したがこれに失敗。

 私が帰国した事を知り再度暗殺者に襲撃を命じ失敗した。

 デブルは最終的に母を確実に殺すようハッケルに命令し、自領へ軍を集めるべく各貴族を扇動している。

 これに応じた貴族が20名おりおよそ5千人の兵が集まると見られている。

 以上だ」


 全員が今回の聖教会派の企みを知らされて驚いたようだった。

 まさか女王の暗殺から王女への企みまでやっていたとは思わなかったのだろう。


「そこで諸卿らにはこれを迎え撃つべく行動を開始するにあたり意見を聞きたい」


 ウラヌスゥ~、とはしゃいでいたシャーリィではなく王女としてそして次期女王としてのシャーリィからの一言に一同は気を引き締めて答えた」


「驚きを禁じえませんが、そのような暴挙にでたデブルを赦す訳には参りませんな、至急近衛兵団をいつでも動かせるよう手配いたします」

「警邏部隊は常に出動可能だ」

「我等も領へ戻れば兵を集めれますが使いを出し呼び寄せます故共に戦う許可を」

「では、今回の指揮、病床にある女王に代わり私が指揮をします。

 相談役としてヘンドリック、護衛部隊としてミランダの率いる部隊、そしてこちらの慶司殿に護衛について頂きます。

 此度の戦いでデブルを私は赦す事はありません、そしてデブルと同調し兵を集めたものも同様です。

 女王とは既に話し合った事ですから伝えましょう。

 早期にこの戦いを終結させ、私は次期女王としてこの国に平和をもたらします。

 そして竜族との国交を開くべく奴隷制度の完全撤廃、差別の禁止を国法として制定します」


 全員が先程とは比べ物にならない衝撃をうけた。

 ここまで強い意志を現した女王といえばかのベス女王ぐらいでありその決意の深さに感銘を受けた。

 この国はさらに変わるだろう、そう魂に響く宣言だった。


「我等一同この国に仕えるものとして次期女王陛下と共に戦える事を誇りに思います」

「素晴らしき女王になられませ、我等がお支え申し上げる」

「「「シャーリィ殿下、ブルトン王国万歳、弥栄っ」」」



 バンッ、突然扉が開かれて伝令の兵が飛び込んで来た。

「会議中だぞ」

「まて、急用であるからこそ急いで来たのだろう、申せ」

「ハッ、ただ今緊急用魔術輸送便がケルン砦から到着、フルトリア王国方面から軍勢接近、数は不明」

「なっ…」

「フルトリア軍だとっ、突然何があった」

「シャーリィ殿下これはもしや」

「うむ、数が不明とあるから判らぬが…いやまさかデブルと言えど国土を売るような真似は…」

「シャーリィ殿下宜しいですか」

「うむ、構わぬ、慶司殿からも意見を聞きたい」

「規模だけでなく目的の不明なフルトリア軍に関してはひとまず分けて対処を、先ず規模を知り増援が必要なのかどうかだけ確認されれば宜しいかと存じます。その任を私にお任せくださいませ。

 それとデブルの件は早急に片付ける必要がありますのでシャーリィ殿下はそちらを優先して下さいませ」

「よし、フルトリアの規模の確認の件は慶司殿に一任しよう。私とヘンドリックはここで待機し軍の編成を行う、皆、準備をいたせ」

「「「ハハッ」」」




 貴族達や各部隊の責任者が慌てて会議室を飛び出していった。

 事態は一刻をあらそう。


「だ…大丈夫だっただろうか、ミランダ、ヘンドリック」

「御立派で御座いました」

「問題ございませんでしたわ、全員がシャーリィ様へ忠誠の眼差しを向けておりました」

「そう、よかったわ、ほっとしたら腰が抜けてもう立てないわ」

「フフフ、大丈夫です、私達が影からお支えします」

「ところで慶司殿いいのか、フルトリア軍の事だが」

「乗りかかった船ですからね、自分に出来る事でしたら協力させてもらいます。

 ちょっと調べてきますから後ほど伺いますね」


 慶司はそう告げると会議室を後にした。


「はあ、何だか一寸其処まで行って来るぐらいの気軽さですな、ワッハッハ」

「ええ、何というかここまで一緒に旅をさせて頂き慣れたつもりでしたが気が抜けるほどですわね」

「でも慶司様が鷹揚に構えてるとこっちの気が落ち着いて、なんだ大丈夫だと思ってしまうわ」


 三人が慶司の態度で緊張感が解れた。

 慶司なら何とかしてくれるのだろうと信じているからである。



 エルとエイミーに事情を説明して、ルージュには護衛を継続してもらって慶司は一人郊外へと向かってから飛び立った。

 2時間ほどの経ってケルン砦と思わしき上空に到達した慶司はさらにフルトリア方面に進み上空から軍勢を見下ろした。

 おおよそ2万人程の軍勢である。

 先日大会で見た聖教会の旗が棚引いていた。

 という事はこれは聖教会の軍勢なのかも知れない。

 砦に到着するのに一日の距離で停止し陣を張っている。

 さらにフルトリアの中心へ向けて飛び近くの村で情報収集を行う事にした。

 今回ブルトン方面に迫っているのはフルトリア聖教会騎士団と西部にいる聖教会に熱心な貴族達が集めた軍らしい、しかも突然神の啓示により軍を進めると言い出してかなりの住民が徴兵されていったそうだ。

 まともな武器も無い為戦える兵などいないらしいが人数だけ集めるようにと言われたそうだ。


 教会が虚兵を仕立ててまで迫ったと言う事はデブルが間違いなく関係している。

 調査を終えた慶司はそのまま王宮へともどり報告に赴いた。




「調べてきたよ」


 暢気な感じで会議室へ入る慶司である。

 流石に調べるといって一日たっても居ないのだ。

 何をだろうとシャーリィ達にも理解が出来なかった。


「慶司様、調べたというのは何でしょうか」

「例のフルトリアの軍勢」

「ハッハッハ、えっ」

「あの、流石に慶司様と言えど…と思いたいのは私の未熟なところでしょうか」

「いえ、ミランダ流石にそれはないわ」

「ちょっと奥の手を使ってね」

「はあ…良く考えたらエルウィン様と一緒におられて旦那様だったわ」

「ちなみに人間ですよ」

「ええ、それはわかっているのですが、何が起きてももう驚か無いと思っていたのに驚いたということに驚かされてしまったと言ったらいいのでしょうか…」

「すいません、ちょっと今回は急ぐと思ったので」

「いえ、助かるのは事実ですので心構えをもっとしっかりします」

「それで慶司様、どうでしたでしょうか」

「軍勢の規模はおよそ2万程、聖教会の軍勢です、旗が聖教会の印でしたか間違いないかと。

 さらに村で聞いたら殆どが虚兵の軍勢ですね、急遽集められて数をそろえてるだけらしいです。

 砦に隙がなければ簡単には動かないでしょう、陣も砦から約一日の距離を取っていました」

「これで確定ですな、デブルの策でしょう、どの様な餌で聖教会を動かしたか判りやすそうですが…」

「下手をすれば領土を切り売る心算でしょうね」

「一日も掛けずにこの情報を得られたのは大きいです、早急にデブルを倒して聖教会軍を引かせましょう」


 三日で軍を編成し食料を調達までして見せた裏には慶司の助力があった。

 リヒトサマラから食料を運び込んだのだ。

 今現在慶司が悩んでいるのは軍勢を相手にするかどうかである。

 それ以外であれば自分に出来る限りの事は手助けすると決めていた。


「ふむ、なるほど確かに主様であれば5千の兵だろうが10万の兵だろうが一瞬で蹴散らせるからの」

「でもそれっていいのかと考えると微妙だよね、竜族が手出ししてこなければ手を出さないの同じ態度を取らないといけない気もするし、人的被害を最小に止めるならさくっとデブルたちを仕留めた方が誰にとってもいい気もするんだ。」

「うむ、竜族は強大な力を持つ故に軍を持たぬ。そして攻めて来ぬのならば此方から攻めることも無い。

 しかし今回は主様にしろ我にしろ竜体で戦うわけじゃないからの。気にするなとは言わんが主様の心のままに振舞えば良いんじゃ」

「うーん暫く悩みそうだよ」

「うむ、妾は主様が決めたことに従うと決めたからの、悩む間はずっとこうして一緒にいるのじゃ」

「流石にずっと抱き合ってると悩みが煩悩に変わりそうだよ」

「ある意味それが狙いやもしれぬぞ」

「なんだとっ、策略かっ」

「フッフッフ、妾はこうしてくっ付いてるだけじゃ」

「フッフッフではこうしてくれる」


 そして翌日の朝になり、慶司は自分のすべき事をすると決めた。


「決めたよエル、戦うことにした、けど竜族の力は使わない、これを使うのは殺す相手が確実に滅ぼす必要がある変異魔素の関係と暗殺者達のような集団と一部の討伐だったり必要な時だけだ。

 といってもエルのコートに武器も普通の物じゃないからどう違うのかと言われると困るんだけどね」

「うーんどうせだったらあの腕の生えた姿が素敵なのじゃが」

「あの格好で戦場にでたら味方まで驚くでしょ」

「いや、ルージュみたいな反応で済むかもしれぬぞ、なんならいっその事【竜人】と名乗るとかどうじゃ」

「それもありかもと思った自分が危ないきがする」

「どうしてじゃ、格好良いと思うぞ」


 それってどうなのだろう、いいのかな。

 いや駄目だ…


「それって竜族に迷惑が掛かると思うから駄目じゃないか」

「そうかの」

「だって一部には竜族が人の形態を取る事は知られてるし、【竜人】なんて名乗っても竜が人の姿で戦ってると思われるよ」

「ふむ、その可能性はあるか、だが構わんのじゃないか主様は主様じゃ」

「そうなのかなぁ」

「そうじゃとも、そもそも主様の強さを見れば腕を四本にしようが八本にしようが関係ないレベルじゃ」

「気にしたら負けなのかな」

「うむ、人に向けて咆哮級の魔法さえ使わなければ竜族の加護の品で誤魔化せるじゃろ、なにせ事実じゃ」

「なんか大丈夫な気がしてきた」

「問題ないのじゃ、エイミーにも聞いてみるが良い」


 なるほど、驚くかどうか実際にみた人に聞けばいいのか。

 そんな理由で出発前に慶司は数人の下を尋ねてみた。

 この人選が今後の慶司の活躍を決めたと言って良いだろう。


 まず一番最初にエイミー。

「そんなの慶司が強くて当たり前にゃ、多分腕が10本までなら吃驚しないにゃ」

 ルージュ。

「ああ、その魔法竜族の加護の品を使ってたのか、すげーな、アタシも使いたいぐらいだぜ」

 ミランダ。

「ウフフ、流石の慶司様でも気になさるのですね、問題ありませんわ、何しろ竜王格闘杯(D・L・F・C)の優勝者ではありませんか、しかもエルウィン様の旦那様で竜族の加護の品を使ってなんの不思議があります」

 ヘンドリック。

「そうですか竜族の加護の品が変形を…最初見たときはまさに軍神といった強さでしたからな、世の中には不思議な魔法を使える方がいるのだと思っておりましたが納得がいきましたわ」

 シャーリィ。

「元々武器を持たずとも悪漢を一撃でお倒しになられるのです、そのお姿でしたら100万の軍とでも渡り合えるのでしょう。驚きですか、いえむしろそれぐらいの魔術道具をもたれてたほうが納得というものですわ」

 セリーヌと偶々一緒にいたミレーヌ司祭も。

「前回の四十名からなる暗殺者を倒された時のお姿はまさに闘神の如く神々しかったですね、はい別段驚くこともないかと」

「まあ、そのお姿が竜族からの加護の品ですか、素晴らしいです、我々国教会でしたらそのような神からの使者のようなお姿はまさに崇める程のもの、気にされる必要がどこにありますか」

 おかしい、よし子供の反応を…アレクスまともな反応を頼むぞ

「慶司様!素晴らしい格好ですね、私にも使えるでしょうか、そうですか魔力の量が必要なのですか残念です、ですがまさしく竜族の加護による品と誰が見てもわかりますよ!流石ですね」

 むしろキラキラとした瞳で見つめられてしまった慶司。

 段々と自分の考えが間違っていたのではないかと思って来たようである。

 完全に自信もなくしたところで最後に誰に聞こうかと思っていたところに普通に近衛の兵隊がやってきて告げてくれた。

「これが例の竜族の加護のお姿ですかっ、是非握手を」


 所々で発動して歩いていた慶司の姿は話題になり竜族の加護の品を持つ冒険者が味方にいる、シャーリィ様の味方に竜の手を持つ男がいるぞ、この戦は負けるはずが無い、などと知らない間に噂が場内に広まっていた。

 そして慶司は「どうにでもなれ」と割り切ったのであった。




 慶司達はその日にデブル公爵領へと向けて進軍する事になった。

 軍でも既に竜の加護をうけし勇者だ、冒険者だ、いや竜碗の男だと噂が広まっていた。

 クスクスと微笑むエル達、一番噂を広めたであろうミランダは目があったら凄い笑顔を見せてくれた。

 そう、そのうちなんとかなるものだ。

 というか本当に悩んでた事がばからしくなって気持ちも落ち着いてきた。

 慶司は戦う覚悟を決めて戦場へと向かう。

 少ない犠牲で済むように、そう決めた決意の目が遥か先の戦場を見据えていた。


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