表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界見聞録―黒髪の青年と白銀の少女の物語―  作者: せおはやみ
トラブル・道連れ・世は情け
52/105

デートが大事

 二次予選、二回戦。

 慶司の出番はその日の初戦からであった。

 昨日の虎紋族の男性との対決である。


「フッフッフ、我が拳の封印は解かれたっ、食らえ爆裂……」

「ッセイ」


 ッダァーン


 一本背負いも此処まで決まれば綺麗だと言わざるをえない。

 ともかく勝負は一瞬であった。

 拳には拳などという甘い事は言わない。

 そんな事をするのは格闘マンガの主人公だけでいいのだ。

 それよりも今日はエルとデートをすると昨日の夜に決めた。

 時間は有効に使わなくてはならないのである。

 名も知らぬ対戦相手には申し訳ないが速攻である。

 チーム登録をカミュとホメロウもして内部席で観覧していた、少しは参考になっただろうか…少々不安だが仕方が無い。

 ホメロウ曰く虎紋族の村では有名な剛拳の使い手だったらしい。

 流石にショックだったのかびっくりしてるホメロウはカミュに任せ、帰ったら特訓を開始するように言ってエルと出かける事にした。


「フフン、何だか新鮮な気分じゃの」

「そうだねぇ、二人きりで出かけて買い物って用事があるときしかして無かったからね。夫婦なんだしデートしてもいいだろう」

「うむ、デートはいいもんじゃの」

「せっかくだからエルの洋服を何着か仕立てたいかな」

「今の服じゃ駄目なのか」

「似合ってるよ、でもこれから寒くなるからね、コートとそれにドレスと普段着を作ろう」

「ふむ、では慶司はどうするのじゃ」

「俺はこの特製のコートがあるからなぁ、中のシャツの上に着るジャケットぐらいかな」

「実はの、もう少ししたらマフラーが完成するのじゃ」

「じゃあそのマフラーに合わせて色を選ぼう」

「色は白と白銀の2色を裏と表にした特注なのじゃ」


 そうか、道理で時間が掛かってると思ったらそんな大物に仕上げてたのか。


「妾ともお揃いなのじゃぞ」

「じゃあ、それにあわせて生地の色をきめないとね」

「うむ、そうしよう」

「白と白銀のツートンか、黒より灰色かベージュ、薄い水色とかが似合うかな」

「まずは店に行って見ようぞ」

「うん、試着してみて色のイメージを合わせてみよう」


 お店で既成品のコートや帽子などを次々に試着させてみる。

 白色の毛皮の帽子と、コートを着てきたエルは雪の妖精のような感じだ。

 銀色の髪が非常に良く似合っている。

 ラビの毛皮の製品で値段もそこそこだったしエルも悪くないという。

 ただ、普通の一般品なので耐久度の問題がある為持ち込んだ生地で仕立て直しをお願いする。

 例の蜘蛛の生地で耐久性は折り紙つきである。

 自分の分のジャケットも表生地は既存の物で裏地に蜘蛛の生地を使ってもらった。

 こだわりでサイドベンツにしてもらったりと注文もつけて特注品にしてもらう。

 さらにエルのドレスを見繕ってもらいその品はそのまま購入することになった。

 店主が現れて挨拶に来てくれた、大口の顧客になると判断したのだろう。

 すると此方の顔を見て、不思議そうな顔をする。

 どうしたのかと思ったら、今回の胴着のことでお願いをした商会の1人だったらしい。

 どうやら相当儲かったらしく丁度針子の人達も手が空いてるので直ぐに仕立てると約束してくれた。

 三日後には仕立てあげますから、と言われて驚きつつも感謝をして店を出た。


 そう言えば、こちらの風習で結婚しても指輪を送ってないなと思った。

 しかし、指輪をして変身したら…まずはそれを確かめる事にした。

 お昼ゴハンを食べながら聞いてみるとやはり特殊な物でないと引きちぎれるだろうといっていた。

 ギルドカードの金属が特殊な魔術で形状を変更してるように、同じ山人の魔術を使っても厳しいだろうと言っていた。

 ならば、魔力に反応して形状を変えてしまう逆の指輪を作ればいいのか。

 発想の逆転である。

 指の周囲のサイズだけを測っておいてマーガレットに依頼すれば良いのだ。


 食事を終えてウラヌスとアルテに乗って遠乗りに出かけてのんびりと過ごす。


「のう、主様、妾が思うに…ウラヌス達じゃが変異しとるかもしれぬな」

「うーん、でも変異というより固体進化というか、賢くなってる気がするんだよね。

 なあウラヌス、お前賢く為ってるよな」

「わふん」

「変異だと思うか」

「わふわふ」

「ほら、首振ってるし」

「む、賢いとは思っていたが意思疎通の段階を超えておるな…」

「だろ、3匹とも最近毛並みもいいし、こやって寝っ転がってると気持ちいいんだけどさ、足も速くなってるし。外見もなんだか他のピレードより凛々しい感じがするだろ」

「「わふぅ」」

「照れとるな」

「そうなんだよなぁ、その内に喋るんじゃないかと秘かに期待してたんだ」

「もしかすると、念話ぐらいは覚えるかもしれんな」

「やってみたら喋れるかな」

「ふむ試してみよう」

(ウラヌス、アルテ、聞こえるか)

「「わふん」」

(流石に喋る事は出来ぬか)

「「ワフッ」」

「「わふうぅ」」

「ふむどうやら無理なようじゃな」

「うーん、竜族の下位種ってどうなの」

「あやつらは竜種には数えておるが魔力から生まれてるわけじゃないからの、喋れぬな、知性はあるぞ」

「違いはなんだろうね」

「うーむ、知性というより言葉という物を獲得してるかどうかじゃないかの、それと魔力の有無じゃな」

「言葉か、そういやこの世界に送られるときに言霊があるっていってたしな」

「うむ、我等が念話と呼んでおる物も魔力を利用した魔法じゃと思う」

「ってことは魔法を使えることが念話の必要条件か」

「かも知れぬな」

「残念だなぁウラヌス、アルテ」

「「わっふぅ」」


 だが余りにも自然に念話に受け答えしていた事に二人は気がついていない。

 返事が「わふん」で済まされたからだ、まあ後に驚く事になるが今はまだウラヌス達が念話を使えないのは事実である。


 さて一日二人きりでデートを楽しみ学校へと戻ると、頑張って稽古に打ち込んでいるカミュとホメロウがいた。

 基礎の動きのほかに動体視力を向上させる目的で先手後手で交互に訓練をさせている。板を挟み穴を開けて押すと飛び出すように棒を入れて押しだされた棒を押し返す。1セルも浮き上がらないがそれを素早く行うのが目的である。

 棒の先には言葉が書かれていて、押す側から何かの言葉になるようにさせている。

 押す側も不規則な配置に対応してる為に全体を見て観察する力がつくといった工夫である。

 次に用意したのは不規則に落ちてくる雫を寝転がって、身動きをとらないで全て受け止めるといった地味なものだ。魔術で微妙な水滴を落す板から落ちてくるのは20滴の水滴なのだ。お蔭で今の二人はずぶぬれである。ハンドシャワーを渡してやり風呂に放り込んで風邪を引かないようにした。


 夕食を5人で食べた後は瞑想での修業を行い、二人の為の訓練道具を作っていく。

 次の道具は風の噴出す球体を天井からぶら下げて発動すると不規則に動く装置を作る。

 複数同時に動かしてさらに軌道を確定させない攻撃をかわす。

 二つが一つの紐で結ばれていて、逸らした力の加減で次に飛んでくる高さも変わる

 これを動かないで受け続ける。

 常に払いのける動きを意識して受け止めない事が重要だ。

 後日さらにこの訓練施設は充実する事になる。

 重心の取りかたを訓練するために油と球体の小さな玉に入れた床。

 円運動を理解させるために棒を手手首に固定して動かずに押し合いをする道具。

 極めつけはシルフィを中に入れて発動させる対人訓練装置だった。

 シルフィもこれは面白いと絶賛したので今後改良しようと思ってる。

 魔術も複合利用すれば自律動人形オートマタとして訓練用の獣型に発展させられるかもと考えた。


 新たな訓練道具の設計図を書きながら机に向かっていると、後ろからエルが悪戯をしてくる。

 擽られたら、やり返さねばならない。


「主様、明日も試合じゃぞ」

「心配してくれたんだね」

「心配はしとらんぞ、心配するのは賭けていいかどうかじゃ」

「フフフ、よし、今日はもう寝よう」


 設計図をしまって、エルの気遣いに感謝しつつ慶司は寝床についた。



 大会四日目、二次予選、最終日。

 この日、慶司の出番は13組目である。

 試合場所も中央のみ、16試合が行われる。

 此処までの試合でみても勝負になりそうなのは7名といったところ。

 このまま行けば思っていた通りの人達が本選で当たる事になる。

 残りの人達はそれに一歩、二歩及ばない感じだろう。


 試合を見ていれば戦い方の癖も覚えられてしまう。

 今のところ慶司は自ら攻撃を仕掛けていない。

 唯一見せたのは昨日エルとのデートの為に投げを使ったぐらいである。


 今日も出来れば見せないで進むつもりである。

 そうすれば返し技専門と見てくれる選手も居るかも知れない。

 闘技場へ上がって相手選手と対峙する。

 さすがに此処まで勝ち上がってるだけあっていずれかの銀の高位クラスの冒険者ぐらいの実力はある。

 実際のところこの対戦者は冒険者崩れの傭兵である。

 冒険者よりも対人戦になれている。

 慶司のことも前日から試合で確認しており迂闊な攻撃はせずに間合いを取っている。

 既に慶司の間合いに入っているのだが慶司はあからさまに攻撃をする気がないので飛び込まない。

 ゆっくりと、左右に徐々に動いて間合いを狭める。

 さらに相手が下がる。

 下手に慶司の力量を知ってしまった相手は、自分でも気がつかずに場外ギリギリまで引いてしまった。

 彼が一瞬そちらに目をやった瞬間、慶司は見逃さずに間合いを一気に狭めて押し出した。

 見る者がみればその動きからも色々と掴めるかもしれないが、あまりにも一瞬に押し出されて終わった試合内容の方に注目がいって、しまった。

 流石にこの試合運びでは非難の嵐も仕方ないと思っていたが不思議なすべで相手を倒す慶司は既に有名になっており不可侵領域を持つ男(アンタッチャブル)と歓声が起こった。

 ある意味慶司にとっては非難を受けたほうが気楽なぐらいの展開である。



 そした全試合が終了して予選通過者の発表とトーナメントの組み合わせ抽選が行われた。


 一回戦 組み合わせ


 フェデリコ  :人族     :男性:チェーザ傭兵団

 カレル    :虎紋族    :男性:赤竜の牙


 オービス   :人族     :男性:オービス傭兵団

 マイク    :人族     :男性:聖教会第一騎士団


 レオン    :森人     :男性:守人

 ヤーレン   :虎紋族    :男性:フリア傭兵団


 ディクソン  :虎紋族    :男性:黒犬傭兵団

 ジャック   :人族     :男性:神殿聖騎士団


 ロバート   :人族     :男性:白竜騎士団

 ブリトニー  :犬狼族    :女性:冒険者


 マキシマム  :犬狼族ハーフ :男性:マルテア騎士団

 チャーリー  :犬狼族    :男性:冒険者


 アンソニー  :人族     :男性:冒険者

 キャサリン  :虎紋族    :女性:赤竜の牙


 慶司     :人族     :男性:白銀の翼  

 ノルマン   :猫又族ハーフ :男性:無所属


 間違いなくグラディスさんの仕業じゃないかと疑いたくなる組み合わせになった。

 慶司が実力者と見た人物に確実に総当りする。

 一回戦の対戦相手、ノルマンという猫又族ハーフの男性は動きが素早く、近接戦を得意とするタイプだが動きが変則的なのである。しかも打撃に拘らず絞め技や指折りを仕掛けて、相手を怯ませるなど実戦タイプである。

 他に注目してるのが、

 赤竜の牙の団長、キャサリン。

 打撃系でルージュさんよりも技が鋭い、背が低いのだがスピードもあって対戦相手を圧倒していた。

 赤竜の牙の副団長、カレル。

 ルージュさんに比べると技が微妙だが体格をいかした防御と一撃で仕留める戦法。戦いにくい相手である。

 白竜騎士団の団長、ロバート。

 なぜか判らないが危険な感じがする。打撃も強く、レスリングスタイルもこなす。オールラウンダータイプ。打撃と身体能力ならキャサリンさんの方が強そうなのだが、手加減して戦ってる気がする。

 神殿聖騎士団、ジャック・ド・ビアン。

 戦い方が華麗、表現するならこの一言で勝ち抜いて来た。組技と打撃を駆使している。人の事は言えないがかなり遠慮の無い一撃を放っているのが印象に残る。観客は見た目に誤魔化されてるけれど、一つ一つが殺人技に近い。

 オービス傭兵団、オービス・ヴァレンタイン。

 ジャックに似ているスタイルだが、どこか泥臭い戦い方だが年齢からくる経験で勝ち抜いてきていて一種の擬態に見える。

 マルテア騎士団、マキシマム。

 組み付いたら投げる、払う、極めると柔道のようなスタイルで戦っている。時折肘なども使ったり打撃も繰り出すので戦場格闘技の使い手と言っていいと思う。

 守人、レオン。

 物凄く避けるのが上手い、拳法のように打撃中心なのだが攻撃が当たったのをまだ見ていない。

 さらに組討までされたら苦労しそうな相手である。

 この8名は強い。肉体的なものよりも戦い慣れている人が多い。

 勝ち進めば少なくとも4人とは戦う事になる。

 気合を入れないといけない。


 慶司は戻ると4人に棒や道具を渡して攻撃をしてもらって受け流す訓練をした。

竜撃八識無我りゅうげきはっしきむが】の状態を引き出せているかの最終訓練であり、確認作業である。

 突きを払い、引き込み、掴んだ棒でさらに頭上からの一撃を防ぐ、

 さらに突きが来るのを払い上げて、最後の一撃は横に動いて避ける。


「うーん、だめだな動いちゃった」

「主様よ、今ので駄目と言うのか」

「3発目の突きを払い上げて体制が崩れたからね、もう少し認識が早かったら重心が上に上がらないで、そのまま最後の突きも前面に手を捻りだして払えたと思う」

「師匠の目指す地点が我輩達には思いも及ばぬ地点な気がします」

「あの特訓を積めば私たちもこの動きができるようになるんでしょうか」

「そうだね、一応そのつもりの特訓はしてるよ。最後に認識、意識の加速については走馬灯が走るっていう状況に置かれるのがいいんだけど、疑似体験する方法を考えてるところだね、さすがに俺が使ってる魔法は人体に影響がありそうだし」

「なんだか今でも倒れているのに、死亡寸前の疑似体験など大丈夫だろうか…」

「死亡体験じゃなくて死んじゃう予感がします」

「うーんこの世界のゴムに信頼性があれば40メルぐらいの谷をみつけて飛び降りるとかすれば良いんだけどな…蜘蛛の紐をつかって引っ張った上体でブランコみたいにすれば…」

「「死にますよ」」

「大丈夫さそれぐらいじゃ死なないよ」

「さりげなく恐ろしい発言をしてるにゃ」

「ふむ、そのような方法で意識の加速を図るとは…さすが主様よな」

「いや、奥方様止めて下さい」

「何故じゃ」

「さすがに死ぬかもしれません」

「どうしてじゃ」

「大丈夫だよ、そうだな、ピレードやホルスで最高速度20テル/hとするとほんの6、70テル/hぐらいの速度だから3倍ぐらいの速度の体感訓練だよ」

「ホルスの3倍ですか…」

……(ガクガク)…ルージュ姉貴より怖い人が居たでござるよ」


 まあ、俺が確かめてからやらせればいいか、と単純に思っている慶司。

 カミュとホメロウに明日は有るのか。

 この訓練の話はまた別の機会である。ただ想像を絶する恐怖が二人を襲ったのは間違いない。


 そして明日からの戦いに向けて準備のできた慶司は風呂に入ってのんびりとする。

 筋肉の緊張をほぐしてるとエルが入ってきた。

「主様一緒にはいるぞ」

「いや、もう入ってるよね」

「フフフ、グラディスにな夫婦の営みとは何かと話が盛り上がって教えてもらったのじゃ」

「ふむ、なかなか面白い事を…」

「お風呂でイチャイチャは最高のご褒美だとフラム殿が申しておったそうだ」


 只のM男(変態)と侮っていたが……

 良い仕事してくれたなオッサン(フラムさん)


 すこし嬉しい気分で眠りについて、気力が充実した慶司であった。

 慶司とエルの仲はさらに深まったようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ