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異世界見聞録―黒髪の青年と白銀の少女の物語―  作者: せおはやみ
トラブル・道連れ・世は情け
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お節介と心遣い

 慶司達一行を出迎えたのは赤銅の髪の女性、グラディスの人間の姿であった。


「ようこそ、炎竜の治める地へ。

 そろそろ来る頃だと聞いていたんで迎えに来たよ」

「有難う御座います、やっぱり例の件でですよね」

「ああ、準備は殆ど出来てるよ」

「そう言えば武勇伝を聞きましたよ…」

「なんの武勇伝だろう」


 そんなに考える程に武勇伝が有るんだな…


「とりあえず、旦那さんと結婚した理…」

「ばっかやろう恥ずかしいじゃねえか」


 バンバンッ

 照れるのはいいが全力で叩かないで欲しい、俺じゃなきゃ骨折してる。


「後は赤竜の牙、作られましたね」

「ああ、あれか、いやアレはそっちの爺さんの真似だぞ」

「まさか」

「ああ、白竜騎士団ってあるだろ、あれだ、若き日の爺さんが作ったそうだぞ」

執事神パーフェクトバトラーだけでは収まらなかったか…」

「ちなみに二代目やってたのはエルの親父さんな」

「なんと、知らなかったぞ」


 驚いちゃだめだ…

 何、想定内の出来事さ、それに4000年前のお話だろ。

 凄い歴史だよ良く考えたら。

 慶司も頭が混乱しているようである。


「まあ此処で立ち話もなんだ、宿とったら飯でも食べに行こう」


 さすがは元冒険者である。

 炎竜の支配者なのになんとも人間のようだ。

 もしかして今でもこの格好が普通で行動してるんじゃないか…

 宿についてウラヌス達と荷車を預け、料理店に入ったところで聞いてみた。


「そうだなぁ、良く温泉にも入りに来るからな。

 それに旦那もこの格好で見つけたからな、旦那もこの格好が好きらしい」


 詳しく聞くと不味いのか…だが聞いてみる勇気が必要だ。


「あれじゃろ、フラム殿はお主に叩きのめされたのを喜んでたらしいからの、思い出してるんじゃろ」


 ………


「そ、そうなんだなんだか嬉しいらしくてな、ドキドキするらしい」


 フラムさん、危険です、その感情は危険ですよ!

 流石に他人事だけど、心配になるぞおい。


「すごいのぉ、主様よ我等もグラディスのとこのように長く愛し合わねばな」


 そうか、凄く昔の話だもんな…3000年間愛し合ってるのは凄いな


「お手本にさせてもらいますね(いいところだけ)」

「フフフ、いやなに、てれるじゃねえか」


 バンバンバンッ、

 どうして此処まで豪快に照れる事が出来るのだろう。

 絶対にフルパワーだと思う。


「まあ、ウチの旦那のことは放って置いてさ、大会の準備は殆ど出来た。後は告知するだけだな」

「色々手配してもらってすいません」

「いや、楽しみだからね、ところでさ、出場してもいいかな」

「駄目でしょ流石に、と言いたいところですが俺も似たような者ですからね」

「そうか、そう言ってくれると助かるぜ、なにせうちの若い衆全員が本当は手合わせ願いたいなんて言ってたからな、アッハッハッハ」

「流石に炎竜の一族総出で来られたら体力が持ちませんよ」

「いや、竜族百人組み手ぐらいなら行けるだろうが」

「で、最後の方でグラディスさんとか来るんでしょ、嫌ですよ」

「なかなか鋭いなぁ、しかしいいのかい、完全無手のみ、魔法の禁止、胴着着用ってのは」

「ええ、色々制限はされますけどね」

「一流の医療班と特級の回復薬は用意はしてる」

「じゃあ、大会を告知してから3週間後に開始としましょう」


 グラームからブルトンまでの旅は、潮の関係などでおおよそ30日以上は必要だと言っていた。

 距離が同じでも船旅では潮流の関係や風の向きで速度が変わる。

 グラディスさんにも一応は大会直後にはブルトンへ向かうと伝えた。


「いやあ楽しみだね、グラニエスの宮殿に泊まるかい」

「いえ、せっかくですからこちらの町で温泉に浸かってますよ、あとは学校の件は聞いてますか」

「ああ、面白いね、この近辺は獣人の里があるからね、お嬢ちゃんもこっちの出身かい」

「そうにゃ、キーファ村の出身にゃ」

「そうかそうか、まあそう云う訳でこっちに学校を作るのは構わないさ、マリシェル様は聖地の近くに作って欲しそうだったけどね」

「流石に都市も何も無い所に街を作って行くのは時間も掛かりますよ、冒険者の問題は急務ですからね。都市の近辺で何処か学校を建てる土地は在りますか。できれば森なんかも近ければ良いんですけど」

「そうなると…いっその事森を切り開いてか、森の真横に作ったほうが早いだろうね」

「出来るだけ森は残したいな、訓練にも使えるし」

「農地も交渉は可能だから、まずはどれほどの大きさの土地がいるか見てきなさいよ」

「じゃあ出かけてきますので、大会の告知お願いしますね」

「大会の名称はどうするんだ」

竜王格闘杯(D・L・F・C)で」



 グラディスさんとの打ち合わせを終えて、いつものギルドへの挨拶である。

 少々護衛終了の証書を渡すのが嫌だ。

 よりによって王族の警護だったのだ。

 結末は見えているだろう…

 人間諦めが肝心だ、よし入ろう。


「こんにちは、本日はどのような御用件でしょうか」

「ギルド長がいれば対応をお願いしたいんだが」

「生憎ですが打ち合わせがある為に出かけております」


 そうだった、グラディスさんの方に行ってるんだった。


「そうですか、では此方の仕事が終了しましたので確認をお願いします」

「では少々おま…お待ち下さいませ」


 止まったな、噛んだんじゃなく止まった。

 どっちを見て止まったのかな、俺の名前、それとも依頼者の方か、いや案外仕事内容で…

 あ、また動きが止まった。

 悪い事した訳じゃないのに居た堪れない。


「確認させて頂きました。お支払いは先方が、帰られてから、支払い確認後、となります」

「大丈夫かな」

「はい、大丈夫です、カードの更新なのですがっ」

「そうか、お願いします」

「はいっ、では此方が新しいランクとなります」


 慶司・  採取銀7 狩猟銀10討伐金10護衛金8

 エル・  採取銀7 狩猟銀7 討伐銀7 護衛金4

 エイミー・採取銀10狩猟銀6 討伐銀6 護衛金4


 ちょっと待て、あれ、目がおかしくなったか。


「それで慶司様が到着したら此方をお渡しするようにと預かっております」


 そんなに一気に喋るほど緊張する物ってなんだ。


『慶司さん、護衛任務成功おめでとう御座います。そしてお疲れ様でした。

 海上警備隊の件とならびにブルトン王族警護の大役を果たされた事を考慮して、慶司さん達には護衛試験無しで金のランクの手配が行くようにギルド長と相談の上決定しました。

 御褒美だと思って受け取って下さい。マリシェル』


 っておい、気軽に手紙をギルドに預けちゃだめだよマリシェルさん。

 竜聖母って立場を最近忘れてるんじゃなかろうか。

 というかご褒美の内容が嫌がらせに為ってるんだがどうしてだろう。


『追伸、なにがご褒美としていいのか悩みました、そこでお金を欲しがらない慶司さんには名誉だと閃き、歴代最高ランクの名誉を目指す一助となればと思い、このご褒美にしました。喜んで下さる事を願います』


 ぐっ……なんて純粋な目的の嫌がらせなのだろうかっ。


「成る程、解りました、大丈夫ですよ大した手紙じゃありません」

「そうですか、流石に生まれてこの方、そのような手紙をお渡しする事になると思わなかったので」


 俺も此処で手紙を受け取るとは思わなかったよ。

 表情を苦虫を噛み潰した様にしないだけで精一杯だったからね。


「それで、任務のほうで、慶司様の狩りとエイミー様の採取で、金ランクの試験を受けれますが」

「そうですね、時間を作って受けたいのですが期間などの制限はありますか」

「制限は有りません、今日お受け頂いて、採取も狩猟も対応の物をお持ち頂ければ合格となります」

「では手続きをさせて頂きますので、もう少々お待ち下さい」


 ふむ、受けて時間指定無しなら楽ができるな。

 ん、また固まってるんだけど…また何か手紙でもあったかな。

 誰から手紙が来ようがこれ以上は驚かないぞ。


「あの、この試験受領と同時に終了の合図が出たんですけど…」

「えっ」

「いえ試験の対象となるランクの獲物を過去に狩ってる場合や採取してる場合があれば時期不問の条件で満たされるのですが、ロック鳥の巣とマシュ苔それにウォーロックも討伐してると判定がでまして」

「あ、うん取ったことあるし、何度か倒したね」

「ですので試験受験と同時に合格でして、そのもう一度カードを…」


 慶司・  採取銀7 狩猟金2 討伐金10護衛金8

 エル・  採取銀7 狩猟銀7 討伐銀7 護衛金4

 エイミー・採取金2 狩猟銀6 討伐銀6 護衛金4


 あれ、此処までくると採取を除いて最強になってた。




 俺はギルド会館を後に…したかった。

 予想よりも早かった、本気で今度は偽造のカードがいる。

 ブルトン行きには必要なのだから。

 早速任務用としてミシェルさんあたりに依頼してみよう。

「それでは慶司様、何かあったときはお願いしますね」

「出来るだけ無い事を望むよ…」


 そうしてようやくギルドを出て郊外へと出る為ウラヌスを迎えに行く。

 港とは違う都市の出口から出た、目の前には大陸一番の穀倉地帯が収穫を急いで行っているところだった。

 殆どの畑が既に刈り取りされている、藁や干した麦などの光景は田園風景とはこれだと言わんばかりである。

 そんな北側の出口から出発し、真っ直ぐ北へとウラヌスを走らせる。

 小さな集落が点在していて、殆どの家は畑を耕す者達の住居である。

 所々に薪を拾うための里山が点在しているが大きな森は見当たらない。

 進路を西へと向けていく、すると山脈が現れ麓には森もある、しかし薄い森でどちらかと言えば林である。というのもグラニエス火山の岩石が木の生長しにくいほど硬いらしい。そして平地は開拓を精力的に行ったのである。山脈自体はほぼ岩肌で、山側も適してない、となると都市の南側に向かうしかない。

 

 このグラームは不思議な都市である、北側は完全な穀倉地帯。

 そして、南側は完全な酪農地帯だった。

 北側に比べると広がりはないが都市を支える以上の放牧地である。

 そして西側の山肌に確かに森はある。あるのだが、


 そこってグラニエスへの山道がある場所ですよね。

 グラディスさんに後で聞いたらそうそう、とあっさり返された。


 さらに聖地方面に行けば未開の森はあるそうだが、それなりの距離が開いてしまう。

 ここまでくれば一つ発想を転換する必要がある。

 北部は穀倉地帯が直ぐに広がる為に学校建設には適さない。

 南部は牧草地帯であり作物を育てているわけでは無い。

 西に進めば森は少なくともあるが演習用としては規模が小さい。

 ならば、学校の機能を分ければいいのである。

 発想の転換で候補地は決まった。

 基礎課程の校舎を南側に作ろうと決めた瞬間である。




 慶司が作った冒険者学校の概要だが、

 まず南側の土地に学校校舎と宿舎、訓練用の施設や運動場を建設した。

 ここで基礎課程を学ばせる。

 冒険者を目指してくるからと言って体力が必ずあるとは限らない。

 入学者には基礎体力を作らせる、走りこみと格闘訓練である。

 次に武器の扱い、剣、棒、槍、弓、短剣、盾、投擲具と7種目を平均して使えるようにする。

 移動方法として必要な馬術、泳法を一通り教える。

 座学として、魔法、魔術、地理、薬草、一般教養などの授業を受ける。

 冒険者を育てる為の学校だから年数を通えば卒業という制度は採らない。

 それぞれの科目で合格とされると、二次課程を受ける事が可能になる。


 

 二次課程は場所を移し、聖地の西の大森林地帯で行う。

 二次課程の多くは実技と実際の情況での訓練である。

 習得するのは、生存訓練、罠設置、料理、追跡術、護衛訓練。

 そして総合演習が行われる。

 実技訓練で科目毎に合格を貰う事が出来て初めて卒業可能となる。



 卒業したものは鋼5の実力を保障し、冒険者ギルドからカードの支給がある。

 さらに卒業者には、証書と共に名前の浮き出る魔術付与のナイフが与えられた。

 後に一般にも知られ、一流冒険者の証として認められる事になる。

 護衛依頼にはこのナイフ所持が求められるなど信頼の証とされた。



 慶司は当初学校の入学費や授業料を無料にしようかとも考えた。

 そのためにも事業を拡大していく方針で竜具の販売を考えたのだ。

 だが只で物を学ぶ姿勢は持てないと考え、冒険者となり返済してもらう事にした。

 生徒は入学と同時に契約を結ぶ、一日に付き500リュート、これが宿舎代や食事代と維持費として算出され学生に負担させる金額である。

 途中で退学する場合も返済義務はあり期限は10年以内、ただし冒険者として働いている場合は一部免除とされる。

 卒業者の場合は返済期限は変わらないが冒険者の場合は半額免除とされた。

 冒険者としての免除は設立の理念もあるが、傭兵として流れないようにする為と、卒業者が死亡するような仕事に着くのを防ぐ意味合いもあった。

 授業の中で慶司がもっとも大切にしたのは、生存技術、座学であり生き残る事を重視した。

 後に箔だけを求めてやってくる者なども無碍に退学処分にせず、訓練で叩き直したと言われる。

 教員はというと、戦闘に関してはグラディスの支配下の竜が人化して行い、時折本人も姿をみせた。

 幻の鬼の美女教官として生徒に憧れと恐怖を叩き込んでいた。

 座学や生存訓練といった冒険者知識の必要な分野では元冒険者の教師が大半を占めた。

 怪我などで冒険者を引退した優秀な金クラスの人員を紹介してもらい教師として雇い入れたのだ。

 冒険者としての経験だけでもありがたい上に、彼等は多くが獣人族で片手片足であろうと、駆け出しの生徒にとっては鬼より怖いと言わせる実力者であった。

 他にも特別講師として各ギルドなどからも教員を派遣してもらい交流を図った

 資金は慶司の資本で設立されたが、冒険者ギルドからの支援金や竜族からの助成金、他のギルドなどからも寄付が寄せられた。

 卒業者からも寄付が寄せられるようになり、一流冒険者の登竜門の学園として有名になる。

 この学校の逸話はまた語る事となるのだが…




 

 慶司は建設予定地を決めてグラディスの元へと赴いた。

 驚いたのは庁舎に部屋を持っていて酒を飲んでいたのである。

 ギルド長と思わしき人物も酔いつぶれている。

 会議と銘うっての宴会だったようだ。



 報告後に慶司は宿に戻り、地震の可能性も考えて校舎の設計をしていく。

 問題は鉄筋コンクリートの無い世界でどうするかである。

 グラディスに山人の職人を紹介してもらい相談もした、だがファーレンでは頑丈な石作りの家をつくるぐらいしか方法が無い。

 慶司もさすがに建築技術など全くしらない。


 次の日、早朝に竜王格闘杯(D・L・F・C)の告知が始まっても慶司は悩み続けていた。

 竜王格闘杯(D・L・F・C)告知がもたらす熱狂の渦がどれほどになるか、

 慶司も予測不可能な騒ぎが巻き起こっていく。

 悩む慶司が熱狂に気付くのは気分転換にとギルドへ向かったその日の昼前である。


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