シャーリィ達との別れ・人生色々
慶司達一行は無事にグラームに到着した、紅月から炭月に暦も変わって12日となっている。
港では貿易船に新たな食料、そしてウラヌス達のスペース分の荷物が積まれている。
人足達が忙しく荷を担いでは船に乗り込んでいる。
「慶司さん、エルさん、エイミーさん、皆さん本当に有難う御座います、お蔭でここまで無事にこれました」
「慶司殿達、白銀の翼のお蔭をもちまして任務を遂行する事ができそうです。」
「慶司様、必ずや例の商品は私どもがブルトンで広めて参ります」
「もう、ミランダったら」
「では、ルージュさんシャーリィ達を宜しくお願いします」
「おう、任せておきなよ、このルージュさんがいる限り怖いものはないさ」
「そのうちにブルトンへは参るからの」
「元気でにゃ」
「ええ、お待ちしております、皆様もどうか後達者で」
出航の時間、僅か一月ではあるがシャーリィ達にとって掛け替えのない出会いであった。
そしてそれは慶司達にとっても同じである。
必ずブルトンへ行ってシャーリィを助けよう、慶司はエルの手を握りながら心に誓った。
―ドレスムント冒険者ギルド受付―
「ほほう、これが師匠の発明したという魔術道具ですか」
「そうらしいですね、我も聞いただけですが冒険者必須の魔術道具だそうです」
「はいはい、今からサンプルを作るから見ててね」
マリアは熱風乾燥壷に材料を放り込む、蓋をしてロックを掛ける、そうしないと魔術が作動しない工夫がされている、魔力を流し込んで30秒程度で出来上がる。
これでスープの素B、C、F、ジェガ、ニギン、トルネを粉末にして現物と粉末にした量の比較サンプルを置いておく、これは慶司の指示だ。
さらに冷凍乾燥箱も使用してベパやギネなど葉物を乾燥させて、展示していく。
使用料金は一回につき15リュートで設定された。
「『冒険の旅に、重さと量を軽減できます』か、これが全部のギルド支店に置かれるんでしょ」
「ええ、慶司さんから大きさの問題があるから、ギルド設置してはどうかって本部に掛け合ったらしいわよ。
ギルド役員達も最初は疑ったようだけど、作ったスープの味とかが絶品で、しかも利用料の一部が収入になる。冒険者にはこれがあるからと、国外でも他のギルドとの違いを訴えれるじゃない。そこからはとんとん拍子で決まったそうよ」
「師匠は何でもやる人ですね」
ホメロウとカミュは、やはり師匠は偉大だと感激していた。
マリアは討伐金10になった慶司を最初から一押しにしていた、だから慶司の活躍はこんなもので終わらないはずだと考えている。
おそらく歴代最高の冒険者になるはずだ、この二人は弟子とも見られるのだからしっかりといい仕事をさせないといけない、それがギルドで仕事を割り振る自分の役目だと気合を入れなおした。
「さあ二人とも今日のお勧めの依頼はこれよ」
―ドレスムント・グルテンの工房―
「親方、こっちの細工用意できました」
「親方、こっちは駒の仕上げ終わりました」
「ぬぉぉ、今になって弟子を取らねばならぬとは…」
「フフフ、そんな貴方に慶司さんからの依頼書が来たわよ」
「ぐはぁ、慶司め俺を殺すきかぁ、なに、フムフム、フフフ、これは面白い」
「なんですの今度は」
「掃除をするための筒と、温水のでる筒、さらに洗濯するための箱らしい、しかもあやつ研究所を主体としてそこの商品として売り出すらしいぞ」
「あら、掃除の道具なんて作るんですか」
「なんでもゴミを吸い取る魔術道具で吸い取り口と取り出し口に細工がいるようだな、設計図が入ってる
。それに反対にゴミを吹き飛ばす筒だと、それと温水の出る筒には横に穴が大量に空いてるな。洗濯の箱は良く解らんが、排水する穴みたいな物があるな、後は髪を乾かす温風と霧の出る筒か、ハハハこれが売れるかな」
「ゴミを吸い取る魔術道具と洗濯用の魔術道具なんて素晴らしい発想じゃないですか、髪を乾かす筒も私は欲しいですよ」
「ん、そうか、今使ってる物の変わりになるだけだぞ」
「はぁ、男は掃除や洗濯をしないからそんな事が言えるんですよ、髪を乾かす筒だって女心がわかってません、しっかり慶司さんの注文を受け続けてくださいね」
「ああ、うんそうか、頑張るぞ、慶司めB&MWにも仕事を回したいがその取り決めもして欲しいと書いてきてる。こりゃあいつらと工房を一つに纏めるかせんといかんな、今から図面もって行ってくるぞ」
「お酒は程ほどにしてくださいよ」
グルテンは逃げ出したが嬉しそうに図面を抱えて出かけていった。
―ムーサの屋敷―
「こんどは魔術用の布を織って欲しいときたか」
「慶司様からの連絡ですか」
「ああ、なんでも洗濯袋といって旅先で使うための物らしいぞ、これは丈夫な布がいいから綿製らしい、それとこの小さい袋はドレスムントへ送れと書いてあるな。あとは空調符という札を作るためにシルク製の札を作ってくれとさ。」
「石鹸以外でも何かともたらされるのですね」
「うむ、研究所をそのまま母体として商店にして魔術道具を販売するらしいぞ、屋号は竜具屋だそうだ」
「面白い屋号ですね」
「うむ、扱う物が魔術品といっても一般や冒険者が日常で使う物に限定してるな、商人との折衝役として雇われてくれと書いてある。他の商品の一覧を見てみろ」
「これは面白いですね、加工はドレスムントの方でもお願いしてるんですね」
「ああ、あとは魔術の付与だが、単純な物が多いからな、此方で十分できるものばかりさ、これで特許をとって販売するんだ、魔術ギルドの連中は売れたら仰天するだろうよ」
「ではもう一働きして私たちも石鹸からまず販売に向けて作り出しましょう」
―魔術ギルド本部受付―
「ふむ、魔術付与商品の登録ですね」
「ええ、代理で申請に参りました」
「では、此方の書類に御記入下さい」
ミシェルは竜聖母経由の書類を作成していく。慶司からの書類ならと自ら引き受けたのだ。
「それでは此方を」
「はい、確かに受付させて頂きました、書類の方のあて先は本当にこちらで宜しいのですか」
「問題ありません、先方の依頼ですので」
「解りました、では審査が済みましたらエルファストへお送りいたします」
面白い特許ばっかりだ、先日の熱風乾燥壷や冷凍乾燥箱もだが発想が違うみたいね。
ミシェルは微笑みながら受領の書類を仕舞って、魔術ギルドを後にした。
「ふむ、なに、洗濯する袋、洗濯する箱、温水がでる筒、温風がでる筒、霧が出る筒、温風を纏わせる札、冷風を纏わせる札、ゴミを吸う筒にゴミを飛ばす筒、この仕組みと魔術付与に関する特許だと。
まあ、確かにない商品ばかりだし、魔術構成も一工夫されてるものばかりだが、ふん、まあいい受理しておくか、聖地が関わってるし問題もないなら、例え売れない商品でも許可を出すのに問題はない。」
「ほう、えらく大量に申請してきたものですな、ふむ、ケイジワタラセ、先日もなにやら乾燥する壷やら箱で特許申請しておりましたな、あの時は冒険者ギルドでしたが」
「今回は聖地だと」
「まったく売れない商品を登録されてもねえ」
「まあ登録手数料分は儲かるがな」
「そうですね」
「それよりも第三研究所が今度新しい魔術武器を開発したそうですよ」
「ほお、それはすごいな、よしこれで認可の印は終わった、詳しく話してくれ」
一介の冒険者が、どんな伝手で聖地に関係するかは知らん、だが魔術付与とは高尚な物なのだと彼等は信じて疑わない。
数ヶ月後に自分たちの浅墓さを知るがまだその時ではない。
―竜聖母の神殿―
「フフフ、慶司さんからの竜具の魔術道具の頼みも全てすませましたしっと、そうだ海上警備隊の手配もしなくては、それにしてもこのハンドシャワーは気持ちがいいわ」
マリシェルは送られてきた試作品を自ら使って確かめている。
うん、この暖かい温水のシャワーは売れるだろう、他の商品も試さなくては。
「えっと、これはこうして水浴びやシャワーの後で使うのね、わっわ凄い風ねこれで髪の水分を飛ばすのですか、ふむふむ、あら本当にすぐに乾くわね。
さて、海上警備隊の件は了解いたしました、此方から商会との折衝役としてガウェインとフェリエスを派遣します。追加資金も彼女たちに持たせますので御安心ください。っと、これでよし、あそうだ、先日の新しい餡蜜は美味しかったです」
色々と発明してるし、しかも海上の海賊問題も片付けてくれるとは…これは護衛ランクも冒険者ギルド代表にいってレベルを上げさせなくては。
貴方のお父さんは凄い人ですよ、そろそろグラームに着く頃だろうと想像しながら、お腹のなかの慶司とエルの子にマリシェルは語りかけた。
各地で慶司の頼みの影響があったのだが、それを本人は知らない。
慶司一行がギルドへ向かおうとしたところに、街の方から出迎えがやってきた。




