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世界料理的戦略ノ奨メ

 ――竜聖母の神殿――


「石鹸ですか…異世界の方には、あの匂いは気になるでしょう。

 別に問題は無いですね、それよりも回良品を使ってみたいですね。

 出来上がったら私にも送っていただけますか。

 金貨への交換は私共の方で行います。

 砂金は巡回の者に渡していただければ金貨として送り返します。

 武器、自然破壊に繋がるものなどの大量生産以外であれば慶司様の望む物をお作り下さい」



 これでよしと、手紙をしたためて慶司に届けてくれるように頼む、マリシェルは竜聖母としてではなく友人のように手紙を寄越し相談してくれるのが楽しいのだ。

 この手紙の遣り取りが終わると水浴びにと衣服を脱いでいく。

 そして神殿内の泉へと体を沈めた。

 竜族は君臨すれども統治せず、だが今の情況では厳しい。

 慶司は君臨統治を頼んだら…嫌がるだろう。


「ふぅ、駄目でしょうね、でも町か村なら…」


 マリシェルは泉につかり物思いに耽けていた


 ――ドレスムント鍛治屋――


「最近あなた元気がないわね」

「わかるか」

「だって何時もの音がしないもの」

「そうか慶司がいると張り合いがでるんだがな。

 つまらない注文ばかりで、唯一といえば慶司の置き土産だけだ」

「トウガラシ弾ね、また注文が入ったわ」

「あれはいい、作ってると子供や親に感謝される。

 武器よりなによりああいう細工物がしたいな」

「無理して武器なんて作らなくてもいいですよ。

 慶司さんのトウガラシ弾以外にも金属の品はいくらでもありますよ」

「そうか…うん、そうだなB&MWの工房みたいに慶司に今度は武器以外の玩具のアイデアでももらおう」

「少しはやる気が出ましたか」

「ああ、ありがとうよ流石俺の女房だ」


 ――繁盛している料理店――

「マスターもうプリン売り切れになりますよ」

「ちくしょう、いつから俺はプリン屋になったんだ」

「売れてるからいいじゃないですか、いっそレシピ売ったら楽になるかもしれませんけど」

「馬鹿野郎、これは俺のレシピじゃねえ、慶司のだ。

 あいつが良いって言うならまだしも俺が売っていいもんじゃねえ」

「マスターこっちはクッキー焼きあがりました」

「くっそお!もう倒れるぞ俺は…」

「マスター…せめて誰か雇って下さい」

「だめだこれは俺の作業だ」

「じゃあ、私が一番古株の私が作ります」

「だから、お前が創業時からの付き合いでも他人には作らせん」

「結婚すれば他人じゃありません、じゃないと…

 マスターが倒れちゃいます」

「ケリー…」

「さあ、作業は私が手伝います」

「ああ、ありがとうケリー」


 10年越しの恋の告白、もしかすると慶司のお蔭なのかもしれない








 ――森人の長老宅――

「ムーサさんのお宅だと聞いて来たのですが」

「うむ、森人の長の館である、してお客人は」

「旅をしている冒険者の慶司、エル、エイミーです」

「長より来られたら案内するよう申し付かっている、参られよ」


 森人の長の家を訪ねようと思ったらもの凄い所だった。

 薬剤ギルドの裏手にありますからと言われて来てみたら草原だった。

 小道を進んでいくと先程の門番がいたのだが長の家と聞いて来ただけあって現物が普通の民家を大きくしただけなのと、鬱蒼うっそうと生い茂る草花にびっくりした。

 これが森人の森人たる住まいなのかもしれないと思いお邪魔する。

 扉を広げた途端に家事か、と思わんばかりの煙が吹き出てきたが案内の人が平然と構えているので収まるまで待ってから入った。収まった煙は以外といい匂いがしたので何かの作業中だったのだろう。


「先生、お客人が参られました」

「あ、シルフィが言ってた子達だね、さあ上がっておくれ」

「お邪魔します」

「びっくりしたか、ちょいと虫払いの薬を試してたのさ」

「いえ、ある程度の事には慣れてしまいました。

 初めまして、冒険者の慶司です」

「まあ、長とは幾度も顔を合わせておるな久しぶりじゃ」

「エイミーですにゃ」

「ハハハ、なんだいエルウィン様その格好は、チンチクリンじゃないか。あの迫力がこのサイズじゃ可愛らし過ぎるね」

「ク…色々あったのじゃ、じゃが今の我は慶司の物ぞ」

「本当に結婚したのかい、ふーん人も変わるとはいうがエルウィン様がねえ、長生きはするもんだ、これであと1000年は生きられるな、アハハハ」

「お主は何歳まで生きるつもりじゃ普通は寿命の年じゃろう」

「寿命なんてものはね、あたしら長命種の場合生きる意味を失ったときに命を失うのさ。だから後1000年アンタの子供を見るまではしなないよ」

「まあ長生きすればよいわ、優れた長がおると話が早い」


 さて、このムーサさん格好が凄くちょっと目のやり場に困るのだ。

 これまで町でみた森人の人達は前情報の通り綺麗だったし着ている物も色は地味でも絹がメインでちゃんとした服装なのだ。

 女性は前を重ねて帯で締めワンピースにしてる人が多かった。

 男性は上を短くしてズボンを履いているのが普通であった。

 そしてムーサさんはなぜか上はさらし、短い男性用の服を羽織って下はパンツさらには煙管をやるようで片手にもっている。どこの町火消しですか…


「お、なんだキセルをやるのかい」

「いえ、こっちではタバコは無いと思ってたので」

「そうか、リヒトサマラの主要な産業の一つなんだがな」

「後は薬と絹と酒、お米ですね」

「うん、シルフィが言うには色々と知りたいらしいじゃないか」

「そうですね、興味がある物と依頼したいものがあったりします」

「まあ出来るだけの事はしてやるよ、結婚祝いだ」

「じゃあ、お願いの方からで、香油はご存知ですよね」

「ああ、なかなか高価な品だがこの都市で作ってる」

「それを大量に生産したいのですが」

「あれは、量が取れるものじゃないよ」

「まあ、そこで探して欲しい木や花があるんです。

 一つ目は赤い花でこう花がポトって落ちるものの木です

 次は乾燥させると赤くなる細かい花びらの花の種」

「その二つともわかるけど一つは切り傷用の木でもう一方は生薬とこの私の口紅になってるよ」

 そうかベニバナは映画で題材に使われてたな。

 金一匁に花一匁目だっけということは厳しいか

「その口紅の花の種はどうなってますか」

「種はどうともしてないね、これは花が大事なのさ」

「じゃあ種を全部買うとしてどれぐらいでしょう」

「100テト買ってもらうとして、40リュートってとこかい」

「問題は量なんですが、これは山で摘んでるからねえ、でも庭で咲いてるのを見る限りは栽培はできそうだ」

「ああ、表の野草園ですね」

「お、わかるかい」

「わかるにゃ、やそうだらけでびっくりしたにゃ」

「あたしは庭をいじくり回してるってのが嫌いでね。

 たまに知らないやつが歩いて池に飛び込んでるよ。

 ほらあの花じゃないかい」

「ええ、あの橙色の花ですね、あれを大量に欲しいんです」

「ふふふ、紅屋でも始めるつもりかい」

「いえ、もっと喜ぶものですよ、それとあそこの木、花がぽとって落ちませんか」

「うん、あれの葉っぱが傷薬なんだ、灰は酒造りにつかってる」

「それの種もください」

「構わないけど、なににするんだい」

「今はまだ秘密です」

「できあがったらもってきておくれよ」

「はい、じゃあ1セト分800リュートで」

「じゃあそろったら置いておけばいいのかい」

「ええ、もしくは聖地からの巡回があれば渡してください」

「竜族にお使いさせるなんたぁ豪気だね」

「それとタバコの葉を100セト分下さい」

「ふむ、それも別に難しくない」

「あとは蚕からとる釣り糸ですがあれを長くできませんか」

「ほう、蚕の事をしってるのか」

「ええ、桑の畑と絹といえば蚕です」

「ふむ、ちょっと耳を近づけてくれ」

「え、はい」

「その話はさすがに竜族もしらないんだが何処で知った」

「自分の知識としてしってるだけで誰にもいってませんよ」

「よし、信用はしよう、があれはあの長さが精一杯だな」

「うーん、じゃあものすごい長い糸を撚ってくれませんか」

「そんなに長い糸がいるのかい」

「ええ、海で魚を釣るのに欲しいんですよ」

「わかった、じゃあ300メルの物を特別に用意させよう」

「次にこれぐらいの葉っぱだけの植物です、両端に棘があるんですが」

「ああ、アロならそこらに生えてるけど高さがないか、火傷なんかに使うんだがこれもいるのか」

「はいできれば株ごと譲って欲しいです、その後は製品としてもらいますので」

「ふむ、長期保存が効かないからな、わかった」

「あとは、この粉末の元になってる葉を栽培してくれませんか」

「ふむ、栽培してどうする」

「新芽がでたら摘み、蒸して揉んで乾燥させ炒ってお茶として売り出します」

「山で摘んで粉にしてるんだがそれじゃ駄目ってことだね」

「ええ、新芽を効率よく摘んでやることでエグミがなくなります。

 さらに発酵させ風味がかわる種類もあるので香りを楽しめます」

「発酵か…どんな風になるのかね」

「工程やら手間で味も香りも変わりますから色々研究しがいがあるとおもうんですよ」

「ふむ、森の植物を使う仕事だから、あたしらに声をかけたってことでいいのかい」

「ええ、この仕事に一番適しているのは森人ですよ」

「ふむやるのはいいが取り分の問題も資金の問題もあるね」

「ええ、こちらで商会をつくってもいいかとは思ってるんですが、

 俺には別口でやらないといけない事があります。

 それが終わるまでは一箇所に留まるわけにもいきません」

「あんたとなら楽しい商売ができそうだから残念だね」

「俺も森人の米は美味しいですから残念ですよ」

「あと、これを舐めてみてくれませんか」

「なんだかしょっぱいな」

「それのスープは美味いぞ」

「なんだスープの材料か」

「まあスープだけでは無いのですがそれは豆からできてるんですよ」

「豆をこんな風にするのか…」

「あとこっちのも豆で作るんですが」

「なんだか黒いな、これもしょっぱい」

「最初のはスープとして、次の液体は魚を焼いてかけたりします」

「うん塩だけよりは面白いな」

「酒をつくってるなら麹があると思って」

「あるよ」

「それで豆を水でふやかして、煮て潰し冷やして麹と塩をいれて混ぜ合わせて発酵させるんですがこれもざっくりとした知識でしかつたえられません。

 もう一つの液体のほうは塩水に茹でた大豆と小麦の炒った物を入れ一年近く壷で寝かせたものを絞って火にかけてできるんですが分量がいま一つわからないんですよ」

「手間をかけてつくるまさに森人の仕事だが…」

「一応サンプルを冷蔵の保存で置いていくので何とかしたいなぁと思っているのですが…」

「よし、一度料理を食べさせてくれ、なんだか無性にたべたい」

「わかりました、今から宿へ戻りますので、そうですね明日の夕食をご用意できるようにして見ます」

「よし、楽しみが出来た」

「フッフッフムーサよ、主に飯を所望するとは目の付け所が違うのぉ」

「ごはんにゃ、焼き魚と、お味噌汁にゃ」

「いやエルウィンいい夫を持ったようだな」

「当たり前じゃろ」

「羨ましいかぎりにゃ」

「それでは、明日の夕方にお伺いしても」

「ああ、待ってるよ」


 慶司達は宿へ向かい、そこから慶司は様々な店や薬品店にまで赴いて材料を揃えていく。

 先ず最初に下準備したのは豆を買ってきて水につけたのである。

 そして山菜をとってきて水につけてアクを取りをする。

 卵の黄身を醤油につけて冷蔵保存。

 お米は買ってきたものを見比べて買った物を魔法で粉末にする

 そして小麦粉であるが当たり前というか種類は一種類だった

 蜂蜜と砂糖を買い足して明日は早朝から海へ行くから早く寝るねと慶司は寝床へとはいった。

 翌朝、翠竜の支配地方面へ飛びさらに進んで行く。

 突き刺さるように入り込んだ海で慶司は釣りを始めた。

 マグロが釣れるとは思ってない

 しかし鯵のように大きくない光物だらけである。

 せめて白身とおもってたら平目とカレイの相の子がつれた。

 早速に絞めて冷蔵保存にして次の獲物を狙う。

 最終的に仕掛けの関係か平目モドキと鯵しか釣れなかった。

 時間もないので沖で海水を汲むと宿へと飛んだ。

 今回のアシスタントはエルとエイミーである。

 美味しいものが食べられるならと二人は材料集めから調理まで慶司の指導について行った。


 この日慶司が作ったのは。

 絹ごし豆腐、鯵のタタキ、平目モドキの刺身、黄身の醤油漬け、白身と山菜のテンプラ、平目モドキの骨で取ったお吸い物、茶碗蒸し、紫蘇の葉で巻いた平目と鯵のお寿司、マーガレットフィッシュの竹酒蒸し、醤油味の団子、蜂蜜の蒸し団子である

 懐石風に全て少量づつ器に盛って出してみた。

 ムーサの分のみ刺身と黄身の醤油漬け、醤油味の団子は増やしておいた。見事に予想どおり日本酒が奥からでてきた。

「これは…どうだやはり留まらんか」

「レシピを置いていくので勘弁してくださいね」

「のう言うたじゃろ目の付け所が良いと」

「はぁ何時もこの料理が食べれる幸せから逃げられないにゃ」

「く…里長やめれば、いいのか」

「いや、まずいでしょ」

「しかし酒の進む物ばかり…魚を生でと聞いたときは疑ったが…」

「いえ、海の物中心ですし、この種類だったら問題はないかと、川魚は稀に虫がいますので冷凍したりして処理すれば食べれると思いますよ」

「やはり次の子に里長の任を…いや若しくは妾をもたぬか」

「ふ、ふぬ、べ、べつに我はき、きき…」

「いえ、残念ながらまた作りにくるので許して下さい」


 どうしてここまでご飯に弱い女性が多いのか…

 そこは慶司にも解らないのである。

 この世界のトップの胃袋を次々と掴む慶司。

 世界をこのまま料理だけで手に入れるかもしれないな、

 などとエルは頼もしい夫を見ながら思った。


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