種がもたらした災い 前編
「ふむ、ではこちらの商品は譲って頂けないと仰るのですね」
「申し訳ないですが、こちらは既に売約済みの物ですので」
「では2倍の額で如何ですか、当方も先方には世話になってましてね、出来ればそちらの種を謙譲したいのですよ」
「いえ、ですから既に販売が終わっていまして此方で保管しているというだけなのですよ。それを私がこれを販売してしまえば私達が今後の商売に響きますし、しかも基本的にこの都市から種の状態ではお売りできません鳥などの餌として販売してるのはそちらの奥の分です」
「なるほど、仰る事はごもっともですね、では契約をお付けしましょう、今後3年の間の独占取引で如何ですか」
「何度仰られても条件の提示をされても売れない物があります」
「では、せめて販売先を教えて下さいませんか」
「いえ、私の方で譲って欲しいという方がいる事はお伝えしましょう。ですが先方の連絡先をお教えする訳にはまいりません。期待は出来ませんが明日もう一度お越しください」
ふう、なんとも頑固な奴だ。あの花の種をロゲリア王へと送らねばならんのに。
どの小売店でも種は既に薬剤としてか、若しくは炒った状態での販売になっていた。
あれでは芽が出ない、あの女狂いの変人がこんな事を言い出さなければ苦労をしないものを
しかし、やはり種の国外持ち出し禁止は徹底されているな。
となれば密輸するしかない…そもそも此方で仕入れをしている事が判明だけで後ろに手が回るというのに密輸まで、これは専売契約を貰っただけでは割りにあわん。
だが、ここまでするのだ連れてきた傭兵に一仕事させよう。
今盗みに入れば種がどれか奴等には判らない。とすれば取引先を調べさせて交渉して、譲らないようならそこで襲う、いや、足がつくな。
交渉をせずに殺すのは商人の矜持に反するが仕方ない、ベロニア草の種を持ってゆく自分自身を恨んでもらうか…男は配下に調べるように言いつけ、ほくそ笑んだ。
「それで、ムーサさんはなんて言ってましたか」
「はあ、『此度の件は慶司とアタシの信頼で成り立ってんだ、他所の商人には種は一切売らないこれが森人の掟だ、その馬鹿にはそう告げな』とさらに『この件は慶司殿にも伝えな、種は判るように渡してしまいなよ』と仰ってましてお伺いした次第です」
「なるほど、それで聖地へ行くはずの種と…
更にはこれは炒ったものですね」
「はい、それも一応渡せと、見た目で判断できんからなと」
「なるほど」
慶司は冒険者ギルドへ到着報告が出来てなかった。
今日こそは、と宿を出るところで薬剤ギルドの人間に捕まった。
そして先程の内容を告げられた訳である。
いかにも裏のあるような話である。
これは好都合とムーサが慶司を使った訳である。
実際に慶司は関係者であるので異存はない、
周りの目につきやすいように袋を受け取り、ウラヌスに括りつけて旅に出るかのごとく都市を出てみる事にした。
さて、こうなると慌てたのは調査を命じられた配下の者である。
一人を追跡させつつ大急ぎで主人の下へと向かった。
「なに、一人で出かけ都市を出る様子だと。報告なんてしなくていいから急いで傭兵を集めて襲ってくるんだ」
「はっはい」
「まったく、そんな事もわからないのか…
だが好都合だ、一人相手だ問題もあるまい。
都市の外へ行くなら盗賊を装って荷物を奪えるしな。
これで方もついたことだのんびりと待つか」
商人は配下達が帰ってくるのを疑いもせず待つことにした。
慶司は急がずゆっくりと門の方向へとウラヌスに進ませる、これ見よがしに進みながら追跡してくる人間が11人増え12人になったのを確認している。なにせ一瞬でもウラヌスが慶司を見ながら止まると後方で立ち止まる一団の気配があるのだ。
これではお里が知れるというものだ。
それ以上増えないことを確認した慶司は少しだけウラヌスの速度を速め門の外へ行き街道へと向かう。
相手は早足レベルだろう。
そのまま慶司は道を曲がり速度を上げて距離をとった。
ウラヌスにこんな争いで怪我をさせたくない。
慶司はウラヌスから降りて餌を与え待てと指示した。
だがウラヌスは賢い。これから慶司が戦う事を判って乗れという。
必要ないぐらい慶司が強くても一緒に戦いたいのである。
「そうか、お前は賢いな、じゃあ一つ懲らしめようか」
「ワフ」
「どうせ犯罪に手を染める人間だからな、手加減の必要はないよ」
「ワフ」
「まあ手をださなくても突っ込んで通り過ぎれば倒れるさ。
じゃあいこう」
慶司は曲がり角を過ぎてきた傭兵たちに向かって突進した。
追ってたはずがものすごい勢いで突入してくる。
騎乗した相手は槍を持ち、獣と共に咆哮をあげて迫って来る。
こうなると一瞬動きが止まってしまう。
ウラヌスのスピードが速すぎて流石に強化魔法を使わなかった慶司は7人しか倒せなかった。
相手からすれば右に左にと勢いのままに切り裂き、叩きつけ通り過ぎる姿は鬼のように写った。
更に反転して、残る傭兵のみ3人を見据えて駆け出した。
手加減はしない、刃ではなく全て反対側の穂先で抉り貫き叩き殺した。
そして残りの配下の男性に告げた
「襲うなら殺される覚悟はあるのだろう」
「わ、私は命じられただけで」
「命じられれば人を殺す、何の違いがあるんだ」
「た…助けて」
「で誰に命じられた」
配下の男はもしかすれば言えば見逃してもらえるのでは、
そう先程の光景で抵抗できないと判じ、彼は主人の名を告げ見逃してくれと懇願した。
「お前は殺さない、その代わりに穴を掘るからそいつらを放り込め、死んでまで獣に食わせるまでもないだろう」
慶司は穴を魔法で掘り男に死体を入れさせた。
その後、男を地面に伏せさせて背後で手を拘束し逃げ出せないように処置をした。
男に前を歩かせながら都市へと帰る。
道中、全てを自分一人で片付けるかとも考えた。
だが荒ぶって勢いで片付けるのは良くない。
ここはムーサに後を任せるのも一つだが…
慶司は門番に事情を話はしたが手出し無用と宿へと向かった。




