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匿名希望!

 慶司は戦闘狂ではない、できれば戦いは最小限に、ただし必要があれば全力で片付けるに限ると考えている。だから一度戦闘になると手を抜かない。【竜撃の参(りゅうげきのさん)】【流水無常ノ型りゅうすいむじょうのかた】これで死なない獣がいたらびっくりするぐらいの手加減の無さである。まずは相手が驚いて立ち上がろうとしているので槍杖(そうじょう)を手にとり魔術で片側の先端を開放、身体強化の力で一旦左足で踏み込み、次に右足を踏ん張り体重を後方へ移動左手を添えて右手を体をひねりながら後ろへと引く、右手を繰り出す瞬間に全体重を前方へ押し出しながら体の軸を回転させて頭に打ち込まれた。正に跡形をのこさない一撃。でちょっと槍の穂先が耐え切れなかった。

「ああ…んーショウガナイよね? グルテンさんに謝ろう」

 そもそも慶司が倒した獣が問題である、ドルムスという体長2mクラスの熊である、まあ今さっきの攻撃をうければガレルという4mクラスでも一撃だろう。ドルムスは銀の中位でも3人は必要な獣である。ガレルは現れたら死を覚悟しなくてはいけない、せめて倒したのがベレルヌだったらこの後でマリアに騒がれずに済んだのだろう。だが慶司はそんなことは知らない。

 そもそも討伐にすら赴いてなかったのにたまたま出会った、只それだけである。これはドルムスが不幸だったとしか述べようがない。この日の慶司はこの先の計画が立ってないしとギルドへ行ったが討伐も無い状況、朝の早い時間なら野生のブルトやホルス、ムシモンを狩る依頼もあったのかもなと考えつつ釣りに来ただけなのだ。

 以前聞いていたドレスムントの北西側にある湖でゆっくりと釣りをしようと道具を広げていたらの遭遇である。

 流石に図鑑も持ってきていないし討伐部位がわからない、獣だから牙で良いとは思うがなあなどと推測はするが判らないそこで慶司はその日の釣りを諦めた…それに熊肉ってたべたよな?などと思いつつ、とりあえず血抜きだけして運ぶ事に決めた。町の近くまでは身体強化を使って飛んでいきそのまま都市の内部にはいるわけにも行かないので門番を捕まえて見張っててくれとびっくりさせ、薬剤ギルドへまずいってこんな感じの獣の買取はしてるかと聞くと臓器の一部を買い取っているといったので肉屋で待たせ、肉屋に買取の件を伝えて台車を借り受け門番のところへ戻って積み込んでガラガラと引きながら肉屋まで持っていった。

 さすがにめったに見ないのだろう大物で賑わう周囲にやってしまったとは思ったが殺生をしたからには無駄にしていいわけも無いと諦め肉屋に皮を剥いでもらって肉を引き取ってもらい内蔵の一部を薬剤ギルドがありがたそうに引き取った。肉だけで38セト(約152kg)で7600リュート胆嚢が15テト(60g)60000リュート。皮は牙が証明になるよと教えられたのでギルドでオークションにかけさせることにし冒険者ギルドへと向かった。



「慶司さん!?」

「今朝ぶりですね」

「その…持ってる皮はなんですか?」

「ドルムス?」

「今日は釣りに行かれたんですよね?」

「そうだね」

「で、たしか誰も一緒じゃなく?」

「うん」

「で、そのドルムスを倒した?」

「急に現れてびっくりしたよ」

「怪我なかったですか」

「ああ、うん大丈夫」

「えーと、はい討伐報酬は依頼書がありませんが牙で確認できましたのでこちらをお支払いできます、15000リュートです、そしてその皮ですがオークションでよろしいですか?」

「うん、よろしく」

「あの」

「うん?」

「ドルムス一人で倒すなんて何してるんですか? 危ないですよ!? 怪我したり死んだらどうするんです?」

「えーっとっほら出会った瞬間やらなきゃやられる距離だったというね? 2メルなかったから」

「はあ…なんだか信じられません…この皮見てないと…・これまた見事ですけど即頭部を、あー流石に穴があいてますね、慶司さんの持ってきた皮では初めてですが…ドルムスですもんね、無いほうがおかしいんだ…そう、うん穴があって当たり前!」

「じゃあ、オークション宜しくお願いします、出来れば匿名で!」

「絶対に! ランクは上がりますからね?」

「まあ…そうだよねぇ、控えめにお願いするね」









「で、慶司…何をぶっ刺したらこの合金製の槍の穂先が欠けるんだ?」

「ドルムスなんですよ」

「はぁ?」

「ちょっと突然だったので使った技が悪かったんですけどドルムスの頭蓋骨を…」

「おまえ…ドルムスっていやあ出会ったら死亡だぞ、ある意味この先端が欠けただけで運がいいのか」

「そうですね…普通に向こうが先に動いてたらどうなったか判らないぐらいの大きさですから」

「うーんところで何をやったらこんな風に刃がボロボロになるんだ…確かにドルムスの毛も肉も骨も硬いがその場合は折れるんだ、これは折れては無い、がりがりっと両方が削られてる。ちょっとどういう使い方したか教えてみろ次も同じになったらもったいない」

「えっとですねまずこう、体の体重を移動させて捻りと一緒に全体重を穂先に乗せれるように抉って打ち込むんですけど…ついついデカイのが相手で刃を使っちゃったってのが…ホントは刃のある武器用の動きじゃないんですよ、一応砕くための技で」

「うーんそうなるとどんな刃にしてもその技じゃ耐え切れんか」

「いや正直その刃が残ってるのがすごいのでリーマーのようにしてもらおうかと…」

「リーマーとはなんだ…」

「本来は武器でもなんでもないのですがドリルがありますよね?」

「うむ、旋盤するのに使う」

「その空けた穴を更に大きくする道具なんですよ」

 三角錐で8本の溝のようになっている絵を書いて説明する

「これに刃をつけるのか」

「いえ流石にこれに刃はいらないです、強度と芯の柔軟性と先端の鋭さですね」

「ふむ、よかろう、4日待て、代金は5000リュート貰うぞ」

「それじゃまた来ますね」

「うむ気をつけて狩りするんじゃぞ」

「いえ釣りに行ってきます」


 そうだ、俺は釣りでのんびりしたいんだ! どうしてこなった…

 さらに出掛けようとしたところで竜聖母からの返答がやってきて考える事になる。4日、それだけは確実にこの都市でいい、その後はどうする…まずリヒトサマラにはいってみたいな、それ以外に王国にもいってみよう何か手がかりがあるかもしれない、となると商人ギルドと冒険者ギルドに情報を貰わないと。

 結局またもや釣りに行かないで商人ギルドにいくとちょうどメルクが出てくるところだった。



「おお、慶司様いやあ、今オークションが開かれるというので冒険者ギルドへ向かうところだったのですよ」

「そうだったのですか、もし構わなければギルドへの道すがらで王国についてお聞きしたいのですが」

「ええ、構いませんとも」



 どうぞこちらへ、と馬車に乗せてもらった。前々から馬車も存在するのねと思っていた。この世界の乗り物は数種類、牛、馬、鳥、犬、の4種類だ、牛はブルーノと言われてる種類、馬も野生の物を飼いならしたホルスとういう種類ホルトというポニーのようなのもいる、そしてファンタジーたる鳥だが体長1メルダチョウの首を短く足を太くしたようなちょっと足の筋肉のつき具合がすごいエルピー。最後に野犬であるドルド達と違い数種類いる犬のなかで最大の大きさを誇るピレード体長1.2メル、雑食だし人間に懐くしと慶司はこのピレードを購入したくて堪らない。とまあ色々と種類はいる。さすが一流の商会の馬車だけあって内装も豪華だ、牛にひかせるのは荷物ぐらいだし、エルピーとピレードは商隊が使うぐらい、ちなみに知性もあって乗り物になりそうなワイバーンだが人間には懐かなかった、卵から育てようと今でも狙われるらしいが冒険者が死亡するのが殆どだし調教を行っても逃げられるらしい。



「王国の事といいますと…情勢とかで宜しいのでしょうか?」

「そうですね、この竜族支配地以外を私は知らないのですがそれ以外の土地へ巡る機会もありますので、そちらへ行った際の注意点などありましたら」

「そうですか、まずこの大陸に存在する王国は4つ、ブルトン王国、フルトア王国、エリミアド王国、ロゲリア王国は知って置いていただいたいいでしょうまず比較的穏やかな国としてブルトン王国です北西に位置しているこの国ですが初代は覇王として近隣を統合していったらしいですが数代前より女王制となり侵略という形での行動は起こしておりません。竜族との関係も何代か前の女王との恋の話があるとかでホントかどうかわかりませんが良好です。次は北東にあるフルトリア王国とエリミアド王国です、元は同じ国だったのですが後継者争いで3代前から常に戦争をしています、正直輸出先ではありますが支払いの悪さも目立ちます、長年の戦争で国民は疲弊していますし何故未だに戦争しているのか不思議でならないくらいですな。そして南西にあるロゲリア王国、こちらの王国の王は竜嫌いだそうです…まあ商売は可能ですしこれといって問題を起こすような事もありません。王国はこの4つですがそれ以外に南東にあるマレド通商連合国家、こちらは重要でしょう、王ではなく民が代表を選び統治している国の集まりです。まあ残念に思うのは王国と同じで人間思想といいますか獣人や山人などを2等市民として扱い参政権は与えてません。あとは小国が点在して同盟を組んでいたりするのと通商連合とは組めないとして自立をしている都市国家などがありますね。さらに変り種として領土をひろげつつあるのは南にあるマルテア騎士国という国です冒険者から出発して騎士になりその後独立した国ですね。

 そしてファーレンにはあとひとつ大陸があってそちらに進出していってるのはどの国も同じなのですが一番の進出頭はマレドですな、そしてロゲリア、ブルトンと続きあとの2国は戦争でそれどころではないのでしょう、この大陸開発は1000年前からですが大陸の獣はこちらの数倍は強く広大な砂漠の土地が大部分で沿岸部のみの開発に留まっています。内部はまだ不明でどうなっているのかわかりません。

 そして注意点ですがこの竜族の支配地では人であろうと獣人であろうと、山人森人であろうと差別はありませんし奴隷は存在しません。ですが王国では差別が存在します、そして同じ人族であろうと奴隷も存在します。山人と森人の奴隷は存在しませんが獣人の奴隷は存在します。商売ですからその手の方々がこちらにやってきて態度の悪い人などいますからね。あちらでそれが当たり前といっても商売で王国などにいくのは気が滅入ることもあります。」

「そう聞くと竜族の支配地は恵まれているようですね」

「ええ、実際恵まれていると思いますよ、本当に危険な魔物はほぼ竜族が倒していますから村や町など都市の周辺の方でも比較的安全です、この都市にしたって警邏の人員などもこれほど少なく済むのは竜族が守護してくれているからです。王国など竜族に敵対しているところですから守護をうけていません、関係の良いと思われるブリガン王国でさえ竜族が君臨するのを良しとはしていませんからね、兵を多くもち統治してますが獣はまだしも魔獣や魔物は人間で討伐するのは大変です。幾らかは竜族が回って倒しているのではないかと言われてるぐらいですよ。」

「たしかに、時折飛んでる竜族がいますからね」

「そうなんです、それを向こうでは竜は魔物である、飛んできてるのは侵略にきたと怯えるのですから」

「まあ、あの巨体が飛んできて森に入ったらびっくりしますけどね」

「そうなんですが事実の確認もせず攻撃していたのではそのうち王国など魔物で崩壊しますよ」

「魔物は強いですか?」

「冒険者でもトップクラスの獣人族が数名がかりで倒したとか聞きますからね、優れた冒険者は騎士や兵隊の数倍の強さでしょう、なにせ魔物は魔法を使いますから普通の兵隊など蹴散らされて終わりますよ」



「さて、つきましたな」

「色々教えて頂きありがとうございました、落札されることをお祈りしてます」

「まあどんな毛皮か見てみないと判りませんがな、ドルムスは珍しいですから高値がつくでしょう」

「それでは」

「ええ、またお尋ねくださいお待ちしております、いつでも歓迎ですからな」



 フフフと意味ありげに微笑まれたのは…今回のドルムスの毛皮の件も知ってるかもなぁ商人は情報が命だもんな…街中あるいたし、こりゃバレテル、うんまあ、いいか!と割り切った。

「マリアさんオークションまで時間はある?」

「ええ、もうしばらくは、まだ全員集まってませんからね、それでオークション見に?」

「いやいや、ちょっと王国とかの資料はないかと思って」

「慶司さん王国に行くんですか?」

「そのうちね、とりあえず先ずはリヒトサマラに行ってからぐるっと回ろうかと」

「お勧めはしませんが…何かあるんですよね?」

「うん、まあ放浪してみたいってのが大きいんだけど王国ってそんなに良くないの?」

「ギルド職員ではない立場で言わせて頂くと絶対王国とか住みたくないですよ」

「そこまで?」

「まず人と獣人と山人の差別がありますもの、それに竜族を嫌ってるし、それにギルドとしてはどこの王国とも付き合いはあるんです、支店を置く必要がありますからね。であちらに着いた冒険者が何故か徴兵されていって亡くなることが多いんです。規定として冒険者の身分はギルドが保証しています。よって税金も個人が負担するんじゃなくてギルドが払っているのが冒険者分の税なわけで冒険者が国に指図される言われはないんですよ、特定の国を持たないから冒険者なんです。それがどの国でもなんだかの形で冒険者を徴兵するわけで、まあ一部逃げてくる人もいるんですが、依頼を受けたらなぜか戦場だったとか何故か兵隊と一緒に討伐隊にいたとか…ギルドの方でも問題にはしていますし調査はしてるんですがすり抜けてくるらしいのと王国では冒険者ギルドと敵対する傭兵ギルド連盟が存在します。ですからギルドでも撤退すれば信頼を失う関係があるだけに強い手段に出れないんですよ…」

「だまして徴兵は酷いな…それにそんなに死亡率が高いなんて…しかし傭兵ギルドってないよね?」

「ええ、この竜族の支配地にあった傭兵ギルドは冒険者ギルドが吸収合併しましたから、傭兵ギルド連盟は王国にあったほかの系列のギルドで何度か竜族を倒そうと目論んだことからこちらでは出入り禁止で冒険者ギルドの一人がちです」

「うーん竜族の事をどうしてそこまで受け入れないのか判らないなあ」

「私も向こうに行ってませんからねえ、でも、絶対慶司さんみたいな冒険者がきたら放って置かない情況に追い込まれます…絶対どこかの専属とかもうすこし強い保障を受けるべきです」

「例えば?」

「本部直轄とか聖地直轄としてもらうとか…どこかのギルド長になっちゃうとか?」

「ギルド長になったら冒険者じゃなくなっちゃうんじゃない?」

「いえ、この都市周辺の町や村でちょっと大きめのところならギルド支店がありますそこのギルド長はけっこう狩りしまくってます、というか銀の高位をそうやって固定してるんです」

「うーん微妙だなあ動きが取りづらくなるな…」

「聖地直轄とかしたら敵対者扱いでもっと怖いしねえ」

「うーんでも本当に気をつけてくださいよ。どうも慶司さんはトラブルにむかって無自覚で突っ込んでいく人に思えます」

「うん、なんとなく言われてる内容を理解できるから気をつけるよ」

「それじゃ、私もオークションの用意に戻ります、高値で売りに出しますから期待してて下さいね」






 まあ予想通りオークションの結果ドルムスの皮としては歴代一番の取引金額でで売り捌かれた。

 煽り文句を記述すると「仕留めたのは匿名の冒険者ですがこの一撃で屠られた傷を見ればわかります、その冒険者の凄まじい強さを、そして一撃でしとめたドルムスの毛皮が次に出てくるかどうかわかりませんそれこそ彼のみぞ知るところでしょう、この機会をのがしたら二度と手に入らないかもしれませんね、竜族でもここまでの傷の無い毛皮を出す事は不可能です、今買わないでどうするんです?今しかありませんよ?え?そんな値段で売れと? 私が買いたいぐらいの値段ですね、はい、では最低落札価格を1万リュートから始めましょうか、えっとはい、そちらの男性…おっとやっと交渉の価値のある値段ですね1万1千リュートはい1万2千……そちらのお嬢様、1万8千! これは決まり…おっと1万9千…2万これでよろしいでしょうか? ありませんね、ではこちらの男性に2万リュートで(カツン)!」

 酷い話である


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