狩漁の終わりと教育方針
「師匠~これは必要なのでござるか?」
「我輩はこのような物を作った事がないので上手くいかないのですが」
現在ドヌル討伐を目的とした即席パーティーは町の北側にある鉱山詰め所にいる。
「うん、必要だからやってるんだよ、実際俺も追加で大きくしてるところさ」
「まあ、ほれ我らもやっておるのじゃから諦めて作るがよい」
「私も前に作ったのを大きくしてるのにゃ」
一生懸命にホメロウとカミュが作っているのは網である。俊敏なドネル相手に使うので小細工はいくらしても足りない。一足先に編み上げた慶司は石を括りつけた紐を中央でさらに一個追加して投げつける武器を作った。こういう原始的な武器が使いやすくまたどこでも入手できる利点がある。
慶司はアメリカンクラッカーのようにして遊びながら次は鉄で作ろうなどと考えている。これは好きだった漫画の主人公がよく作っていたから調べた事があるし、作るのも簡単だった。
網を完成させたら投げて広がるように隅に重石を付けていく。
ボーラも各自で作らせて投擲と投網の練習を行って交代で見張りを立てて次の日になった。ラビを一匹しとめて切り分けた肉を餌にしてドヌルが現れるのを全員で静かにまつ。
主な役割は後方エル、魔法と弓の担当としてコンパウンドボウで援護、側面をカミュとエイミー、ボーラで敵の足止めをさせるその後はエルの警護という役割、前衛は慶司とホメロウ、ボーラを投げた後、投網はこの二人で担当する山の岩肌を背後にして数時間待つと8匹のドヌルが現れた。近づいてくるまでにエルと慶司が弓で3匹を仕留めて残りの五匹が走ってくる。
「投げて!」
一斉にボーラを投げていくボーラに絡まったドヌルに網をかけて仕留めるのはエルとカミュ、エイミーに任せる慶司とホメロウは残った2匹と対峙してホメロウが棒で殴りつけている間に慶司が一匹を仕留めて助太刀をし、ドヌルを全滅させた。
「こんな方法で倒せるとは我輩も驚きました」
「拙者もでござる、ドルドとかと戦うときはいつも傷だらけになりながらでござった」
この世界にはまだトラバサミが無いし狩や事故も考えると宜しくないので作らなかったが今回の網は大成功といっていいボーラももっと効率が上がるだろう。昔の人はこれで鳥も捕まえたらしいからブーメランのようなものだろう…慶司は一瞬ブーメランがもどってきて頭に当たる想像をして考えるのを止めた。
「じゃあ後は解体して皮を剥いでいこう」
「帰ったら網の修理もせぬとな」
今回の討伐で準備の大切さや武器の種類の選び方なんかを判ってくれればいいなと慶司は思いつつ帰路についた。
「お帰りなさい!」
「ただいま、全部で8匹でしたよ」
「予想より多かったですが怪我はないですか?」
「うむ、全員怪我は一つもないぞ」
「これ、牙にゃ!慶司が毛皮もオークションに出してもらえって言ってたにゃ」
「ただいまもどりました」
「こちらが皮で御座る」
「えーと、はい、今回も綺麗な皮ですね、慶司さん達が討伐や狩猟をすると傷が少ないものが手に入るので喜ばれますからオークションの手配のするのも楽しみです」
「それじゃ、後は討伐の報酬をもらって後日皮の代金はマリアさんから各自受け取るようにしよう。割り切れない金額はギルドへ寄付でいいかな?」
「「はい! 師匠!」」
「完全に懐かれましたね、えーとでは牙と討伐代とで一人頭3040リュートお支払いします」
「ああ、そうだマリアさん、俺とエルの分はギルドで保管プール処理して下さい、エイミーは受け取りでいい?。」
「うん、まだ必要な物もあるから貰っておくにゃ」
「判りました個人名での預かりで宜しいでしょうか」
「はい、お願いします」
ホメロウとカミュはこれにさらに皮代が追加されると聞き、しかも皮代も普通より高いと聞くと更に喜んだ!後ろでカミュなんて嬉し泣きしてる…修行中だっていってたしお金ないとも行ってたからなあ
「師匠! 明日はどうされるのでしょうか!」
「せっせ拙者もできればご同行仕りたい!」
「明日か…考えてなかったなぁ手がかりも一旦途絶えたし、しばらくは町にいるのは決定してるけど、予定は決まってないかな。明日また朝にここには来るから一緒に出来る依頼があればやろう」
こうしてマリアの罠に陥った慶司…というわけではないが後輩とPTを組む事に? なるのだろうか。それはさておき、実質的に手がかりは無くなったので一旦竜聖母とブリガンさんに相談の手紙とこれまでの調査結果を書き添えて送る手配をした。聖地から巡回しているドラゴンを見つけ手紙を託して返事を待った。
慶司の見解としては変異魔素を使った竜族に対してのバイオテロの可能性を示唆し、恐らく犯人として考えられるのは人族、組織的な犯行を行ったことや今回の隠蔽などを考えて国が関与していると結論づけた。下手をすれば竜族だけでなくこの世界そのものを破壊する可能性のある行為であることから狂人や狂信者などの可能性もあると補足し、今後竜種に対する竜族の出動を禁じてもらうとともに駆けつけて対応する事を約束した。またギルドからその手の情報が入り次第周辺の村の閉鎖と討伐に手を回してもらえるよう手を回してほしいと依頼した。
一日後で返事がくるのだが、これに対してマリシェルは情報を竜族と冒険者ギルド上層部にのみ一部開示をする事で協力を取り付けてくれる事を確約してくれた、敵対勢力が国なのか宗教なのか個人なのかはっきりしないが竜種のみを対象にした行為でそれだけは防がねばならないので協力感謝しますと括っていた。
さて、マリアの罠でまたギルドへ顔を出す慶司だが、その前にどうしても食べたい物があった、ウナギである、前回は皆でわけたのでちょっと物足りなかったのだ。よって朝寝ているエルを起こしてしまいつつも一緒に罠をつくった、よくあるシンプルな竹のつつを使った罠で4つ程を川に仕掛けておいた。
「なあ主様これで魚がとれるのかの?」
「もっと大きなのをセットすれば魚以外にカニやハンマーレブも入るかもしれないけど狙いはスニーフィッシュのみだからね」
「ふむ、あの美味しかったゴハンじゃな」
「そうそう、あれはやっぱり美味しいからねえ」
「今から晩御飯がたのしみじゃな」
釣れてます様にといない神様へ祈るぐらいなら竜聖母様どうぞよろしくと祈りつつギルドへと向かった。
エイミーも後からやってきた、ホメロウとカミュは裏で訓練してるらしい。裏へ回って稽古をみてると直す点などは無いですかと質問されたので答えていき、とりあえず依頼を受けたかの確認をしたら待っていたというので全員で依頼書を眺めた…採取15件、狩猟7件、討伐0、護衛1である、以外と護衛はいつでもどこでもある事から冒険者のいい働き口のようだ。そして狩猟が7件あるのだが…内容としては楽なものが多い、まず、ラビに関する依頼が3枚、ハンマーレブが2枚、ホルホル鳥1枚、キョッキョ鳥1枚、と同じ物で頼んでくる店が違うという状況だ。採取も同じようなもので同じ依頼が数種類重なっている。すでに何枚かはもっていかれているので残ったのはちょうど下のレベルのものばかりである。慶司としては新しい武器でも依頼をしに行きたい気持ちが強い、がそうも行かないので、まずマリアに各人の評価を聞いた。
「というわけでエイミーはホメロウと一緒に採取へ4枚依頼書をもって行って、エルはカミュを連れてラビとハンマーレブとホルホル鳥」
「慶司さんは?」
「グルテンさんのところへ出掛けるから狩猟と採取は任せるよ」
「内容が内容なので致し方なし」
「うん、それにエイミーは採取の技術がしっかりしてるから教えてもらいつつ覚えてね、カミュはラビとハンマーレブの取り方を習ってきて、ドルドまでなら対処できるだろうけど想定外の事があったらなにがあろうと帰ってきてね」
流石にあの仕事内容で全員で行動するにはちとつらいものがある。しかも苦手な事があるなら克服しておいて貰いたい。慶司はまずエイミーとホメロウを組ませることで薬草の採取を、カミュは誰かと組む事自体が少ないので引っ張りまわすエルと組ませ罠や仕掛けでも狩猟が成り立つ事を覚えてもらうように考えた。
さて、そんな慶司であるがまず鉄球とリングを作ってボーラを完全な武器へとするべくグルテンの元を訪れた、もちろんお酒をもっている。
「こんにちは!」
「おお、慶司、マーガレットから聞いたぞ変な薬容れを作るとか」
「はい、ちょっと使用する用途が違うんですけどね」
「それで今日はこっちに来たということは武器か?」
「はい、先ず直径が1.5セルのミスリル球が3個、そのうち一つは魔石入りです、それと0.2セルの太さの鉄で1セルの直径のリングが1個、あと0.001セルの金属の紐って可能ですか?」
「ぬう、流石にそこまで細いものはむりかのお」
「では、えーと12セット作りたいんですが、ミスリル球の形状をこう穴が開いてるようにしてもらって、そこにロープを通してリングに繋ぐと完成です」
「これはどう使うんじゃ?」
「これは投げて獣の足を狙って絡めるんですけど球を重くしたことで足じゃなくてもダメージが行きますから」
「なるほどの、ミスリルにしたのはなにか付与を考え取るんじゃな?」
「ええ、何を付与するかはまだ確定じゃないんですが」
「ふむ、ではそうじゃなミスリル球が一つ加工までして200リュートとリングで50リュート、魔石代で300リュートクラスでいいじゃろ、一組950リュートでいいか?」
「ええ、ありがとう御座います、後前回作っていただいたエル用のフレイルを2本と1ネル足したものを1本お願いします。」
「わかった、じゃあ合計で14000リュートでいいぞ」
これでエイミーとホメロウとカミュにお土産ができた、次にB&Mへ足を伸ばしてマーガレットと話をする、接触発動するような魔術が可能かどうかを知りたかったのである。答えはおそらく可能であった、条件として魔石に込めた魔力で仕掛けが発動するように準備するため工程が2重になること、複雑な組み込みになるのでもし実現できても高価になると言われた。
「多分これができたら一流魔術師と名乗っても良いかもしれません」
「それほど大変?」
「ええ、発動しない状態の魔術を魔力を込めた状態で保存して、それを発動させる条件をつける、この工程が可能なら凄い事になりそうですが」
「うーん、予想外に大変か…先にマーガレットに相談するべきだった…」
「どうしたんです?」
「ボーラって投げる武器を考えてたんだけど、持ったまま発動する雷撃魔術じゃ自分が感電するから敵にぶつかった後に発動するようにしたかったんだ…魔術文字がぶつかったら発動とかそんな事が可能かとおもってた」
「残念ながら魔術文字が不完全なものを完全にするといった方法では厳しいですね」
「そうかぁ」
と慶司の目論見は露と消えてしまった、さて、どうしたものか…で慶司はひらめく
「ちょっと思いついたかも!」
「え?」
「いや魔術の仕組みに拘りすぎてたかもしれない! 魔力が電池そのものなんだから魔力で魔素を他の術式に与えたらどうなる?」
「えーと単純な接触のみであれば複合することなく誘発で魔術発動されるとは思いますが、ただし接触している間のみとなりますよ?」
「うん、それで十分だよ、電撃は一瞬でいいんだ、電池の代わりの球を一つでそれが他の二つに接触したら発動なんだからスイッチのオンオフがそこで出来る、ありがとうマーガレット!」
「え、はい?」
問題の解決に光明が見えて上機嫌のまま慶司は薬剤ギルドへと向かった。森人の情報を貰おうとおもったのである。この世界にきていまだに姿を見た事がないのも興味の対象としては十分だった。
「こんにちは、今日は何がご入用ですか?」
「ああ、えーっと森人の事をちょっと知りたくて」
「はあ、どのようなことでしょう?」
「未だ彼らには出会ったことが無く、仮に彼らの都市であるリヒトサマラに行って問題はないのだろうかと」
「そうですねえ、森の奥深くや山の谷間などリヒトサマラでなくても一部の森人はそこで暮らしていると言われています、まあ大概の森人はリヒトサマラから出てきません、それで誤解はされるのですが大好きな森から出てこないだけで外の世界を嫌ってるというほどではないらしいです、ただ山人とは少々仲が悪いですけどね、ハハハ」
「薬の殆どは彼らの技術なんですか?」
「ええ、多くは彼らのものですよ、人族なども経験学で研究を進めたりしますが薬草の知識に関しては私たちより遥かに博識です、そうですねえ、あと特徴といえば絹を名産としていたり米を食べていたり、あとは精霊が好きらしいです。」
そういえばアドニスが米を仕入れがどうと言ってたな、さらに絹を名産としてて、お茶を飲んでて…あれ?でもさすがになぁでもエルフなんだよね?
「あの、見た目って…」
「そうですね、うーん何か特徴ですか…山人程ではありませんが背はそんなに高くありませんねぇ」
「え?」
「それと…うーんとても綺麗な人達ではあると聞いてますが人族の子供から青年の中間ぐらいで見た目が固定されるというぐらいですか…あとは最長の方は寿命が無いといわれていますね」
「ありがとうございます、あとこの、いい匂いの草、これと、これ、それにこの黄色のも下さい」
「はい、えっとラベルと、ケモル、ミリト、ロールですね…どれぐらいご入用ですか?」
「じゃあ10テトづつ、それと蜂蜜を1瓶」
「はいじゃあ、全部で820リュートになります」
これで帰ってきたメンバーにハーブティーを入れるために購入してから、罠を確認に行った。
2匹捕まえて満足して一旦罠は引き上げておいた。上機嫌でギルドへと入っていく。
マリアさんに断ってキッチンを使わせてもらい、ハーブティーの練習をた。悪くない出来なので差し入れにカウンターへもっていって自分はテーブルで皆の帰りを待つ事にした。
依頼を成功させているだろうか…まあ問題はないと思うけど、カウンターで忙しく事務処理と受領処理をしているマリアさんを見ながらこれ以上は押し付けられないように! と心に決めつつぼーっとしていた。




