ドヌル討伐隊結成
アルザスを経由してオビス村へとやってきた慶司とエル。
二人は村へ入ると、一番大きな屋敷へと赴いた。
「頼もう!」
元気一杯に胸を張っての一声である。
「失礼します…エル…それじゃ道場破りみたいになってる」
「む、間違いではなかろ?」
「間違いじゃないけどイメージが道場やぶりとか若干高圧的なイメージになってる」
「この場合はなんと言うのが正しいのじゃ」
「そうだねぇ…お邪魔するとか、ごめん下さいだけど…エルが言うと、どうも時代劇風になるな」
昨夜、寝物語に漫遊記とか大岡裁きとか米将軍の話をしたせいで現在のエルはこの調子である。
「ふむ、御免!誰かおられるか」
「あれ、あってるのかな?」
「はい、どちら様でしょうか?」
「ああ、すいません、えっと村長のお宅はこちらでよろしいですか?」
「はい、祖父が村長をやっております」
「少々調べ事がありまして尋ねてまいりました慶司とエルと申しますが、お取次ぎをおねがいできますでしょうか」
「では、中でお待ち下さい、ただいま呼んで参ります」
「失礼するのじゃ」
「お邪魔します」
「お待たせしました、オビス村の村長と務めておりますカルネと申します」
「慶司とエルです、早速ですが以前霊峰アルザスの方へ魔物の報告をされたとお伺いしましてこちらに来たのですが」
「ああ、あの件ですか、確かに霊峰アルザスにご相談させていただいて即日のうちに解決して頂きました」
「ブレーメの森まで少しここから離れていますが、発見者は何方だったのでしょう?」
「そうですね、実は魔物の事を我らに伝えてくれたのは旅の商人でして」
「ブレーメの森の方から商人が来たんですか?」
「はい、まあいつも商隊だとエリノだったりアルザス経由でやってくるのですが」
「あっちは山道で次の村までも距離があるけど来れないことはない…」
「まあ実際あの一帯は森と草原が入り組んでまして、村の者では危なくて近寄れません、出た魔物がバジリスクのような化け物で森を破壊してるから注意しろと言われまして」
「その商人とは連絡はとれますか」
「いえ、初めて商売にきた旅の行商で、4日程滞在して退治されたのを見届けて戻っていきました」
「うーん名前とか特徴はわかりますか?」
「はい、トマスと名乗っておりました人族の男性で背は5ネルと7セル程の長身でがっしりした体格でしたな」
「人相は…」
「フム…なにぶん前のことできちんとは覚えていませんが…魔術道具の販売と仕入れとして皮などを持っていきました」
「そうですか。ありがとう御座います…ところでミシェルさんから村長と友人達へ伝言がありまして」
「ほう、ミシェルですか…元気にやっておりましたか?」
「はい、冒険者ギルド本部で受付の代表者をされていて、皆さんが元気にしてるか気にされていましたよ」
「そうですか、あの子の年代の者はみな活発でしてね、あの子と仲のよかった子も別の町へとやりたいことがあるといって出掛けましてな」
「そういえば友が残っていると気にしておったな」
「マーガレットと言って細工の得意な子で…」
「マーガレットさんてドレスムントの?」
「ええ、マーガレットもご存知なのですか?」
「ドレスムントで引越しの手伝いをしましたよ、あの町で一番腕のいい細工職人に弟子入りしてました」
「そうですか…マーガレットも」
「あと一つお伺いしたいのですが…村長は3500年前の事件について何かご存知ですか?」
「やはりご存知ですか…マーガレットにミシェルをご存知ということはもしやと思いましたが」
「ではやはり」
「はい、この村はマギノから逃げ出して来た者を受け入れてくれた村人との間に出来た子孫がほとんどです、ハーフやクウォーターが多く魔術にも詳しい者がおり小さな村ですが目立たず暮らそうとやってきたそうです。私もその一人ですが第一研究所は爆破されてご先祖様はこの村へ来たと」
「爆破された?」
「ええ、魔素第一研究所の責任者の子孫、マーガレットの祖先ですが、その方がおっしゃるには魔素第一研究所が研究していたのは先代の白銀竜様からのご指示で魔素によって変異する魔物について調べていて、魔術の大規模な複合爆発など起こる環境ではなかったと…
訴えたが調査しても記録自体が爆発の火災でなくなり聞き入れてもらえず、身の危険を感じたその方は仲間とともに逃げてきたと」
「その話をもっと詳しく知ってる人や手記なんかはありませんか?」
「いえ、おらんでしょうな、可能性があるとしたらマーガレットぐらいですがこの話は村長のみが何かあったときに身の証をたてれるようにと口伝で伝えられてきたものです」
「そうですか、ありがとうございます」
「私もこの話を伝え聞いたときには何のためかと思ったものですが初めて話すことになるとは思いませんでした」
「他の村の方はでは一切知らないのですね」
「はい、薄れ行くようにと願ったのが最初に受け入れてくれた村への感謝だと伝えられていますので」
「わかりました、この件はマーガレットさんにはそれとなく伝承がないか確認はしますが、それ以外で他言することはないと誓います」
村長の家を辞して他の村人へ商人の特徴などを聞いて回ったが時間の経過で判るものはいなかった、屈強な体格が第一印象の商人とは怪しいにも程がある。
この商人を名乗っていたトマスという男を捜すため近隣の村へと立ち寄ったが、やはり同じような情報しかえられない、完全に姿を消していれば確定できるのだが中途半端に商人のような事をしている。慶司とエルはその日は移動を諦め村の宿に一泊しドレスムントへ向かう事にした
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一方その頃ドレスムントでは…
「にゃ~今日の稼ぎも中々だったにゃ」
「うむ、我輩の剣の冴え、もはや我が剣に切れぬ物なし!」
「武者修行にはちょうど良い相手で御座った」
などと賑やかな冒険者達が今日の戦果を称えあっていた…だが相手はドルドやラビである
「はいはい、みなさん、確認をしますからカードと牙と採取品をお願いします、エイミーさんはせっかくなんですからもっと狩猟をしていいと思います、カミュは採取もしっかりねそれに調子に乗ってると剣が欠けるわよ、ホメロウはそのまま鍛錬ねといいたいけどそろそろ一人で任務受けるの辞めなさい」
ワイワイガヤガヤとギルドは盛況である…
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「こんにちはマリアさん、チーム白銀の翼の登録お願いします」
「いらっしゃい! ウフフちゃんとチーム名を登録したのね」
「ええ…マリアさんの申し送りで…」
「今回は何日ぐらいいるの?」
「うーんまだ未定です」
「エイミーには会った?」
「いや、まだなのじゃ」
「じゃあ一件だけ討伐依頼があって、ドヌルなのだけど時間があったらお願いできないかしら」
「うーん、判りました、とりあえず内容を先に確認させてもらっていいですか」
「流石にしっかりしてるわね」
「何を押し付けられるか怖いですからね」
「フフフ、変な物は押し付けないわよ、こちらが依頼の内容よ」
「討伐対象、ドヌル黒の2頭、出現したのは昨日の夜、北側の廃坑付近で確認報酬は討伐1000リュート/一匹、牙、皮は冒険者の自由」
「ね? そんな変な依頼じゃないでしょ、別件で鋼の高位の人達は今いなくて困ってたのよ」
「でも、これ、ドヌルなのに2匹ってのは確認されてる数だけで実際はもっといるでしょ?」
「そうなのよ、だから討伐依頼内容は一匹につきってなってるの」
「うーん、受けるとしたら確実に後一人、余裕をもって二人か三人増やしていきたいですね」
「わかったわ、じゃあちょっと今日来る冒険者の中から一緒に行ってくれそうな人を待機させておくから」
「じゃあ、とりあえず昼の2時頃に伺いますよ」
宜しくねーと送り出されて、まずはマーガレットの所へ向かう
B&Mまでいくのだからグルテンのところにも行くことになるお酒を買って持っていく。
「こんにちは」
「お邪魔するぞ」
「いらっしゃいませ、慶司さんじゃないですか主人達は今グルテンさんの所ですわ」
「えーっとマーガレットさんはいますか?」
「ええ、今彫金してるから呼んできますね」
「お久しぶりです!」
「久しぶりだね、ちょっと伝言があってよったんだ、ミシェルさんが元気にしてるか?って」
「懐かしい!ミシェルと会ったんですか?」
「うん、魔術都市のマギノでギルドの受付代表になってるよ」
「そうですかマギノに…」
「うん、それで小耳に挟んだんだけどマーガレットさんもあの村の出身だってきいて言い伝えとか知ってたらなと」
「母から聞いた事なら…」
「やっぱり何か伝えられてるんだね?」
「はい」
「聞いても?」
「ええ、私の祖先の話ですし、この話は信用の出来る人間にといわれてます、慶司さんなら問題はないでしょう、魔素第一研究所に勤めていたのリッターは魔物に取り付く魔素の研究の第一人者でした、そして先代の白銀竜様から直接命令を受けて下位の竜族の変貌について調べるように言われたそうです。魔素に侵されるのは通常の獣かもしくは魔物のみで過去の歴史を紐解いても竜族が魔素で変異するものは無いとされていました。
ところがその問題が発生した為至急研究するようにと言われたリッターは下位の竜族の肉片や角に魔素を集めるように実験などを繰り返し、一瞬ですが魔素が肉片を侵す様子が確認し、研究を進めるべく準備していたところに事故が起こり死亡。
リッターの妻は研究者で実験内容をリッターから聞いていた為にリッターの無実を訴えましたが事故の内容などを聞いてなんらかの事故を装った爆破で死亡したと判断し子供をつれて仲間とともに逃げ延びたそうです」
「手記なんかは残ってない?」
「ええ、残念ながら逃げたときは着の身着のままという状態でその後も平和な生活の為に魔術に関する事を全て捨て去って生活したそうです、ただ当時の事を子孫は知るべきだと、口頭のみでつたえられました」
「ありがとう、そうか、これで当時になにがあったかだいぶ推察できるようになったよ」
「いえ、お役に立てたならそれで」
「あと、そうだこんなものを作ってほしいのだけど、素材はこのウォーロックの角なんだ。これを楕円状の筒にして中を空洞にしてもらって両側をちょっと厚みをのこして3分の1が蓋になるように加工、それで両端の厚みのある部分に穴を開けてそこから紐を通して蓋の上の部分でこんな丸の玉をつけて蓋を押さえて、こう紐をのばして吊り下げれるように、先端にはこれと同じ封蝋ができる判子をつけてほしい、あとはこの角の色との兼ね合いだからだけどこの封蝋のデザインを銀で細工して表面にはめ込んで欲しいんだ」
「面白い依頼ですね、師匠達に相談しながら進めたいと思います、実際の金属使用は少ないですし、素材も提供していただくので銀貨3枚をお預かりできたら問題ないかと」
それじゃあ師匠達にお土産をと材料と銀貨に合わせて蒸留酒をわたして宿を取るためにアドニスの店に向かった。
「よう! いらっしゃい!久しぶりだな」
「お久しぶりです、アドニスさん部屋あいてますか?」
「おう、あいてるぜ、何日止まっていくんだ?定住でも構わんが」
「そうですねとりあえず急ぎの用事はないので10日程度は…」
「そうかそうか、で飯は食ったか?」
「いえ、まだです」
「じゃあ是非食っていってくれ、ブルトの肉が手に入っててなちょうど食べごろだ、それに教えてもらったデザートを出せる」
「なんじゃと!」
「では2人分宜しくお願いします」
「おう、じゃあ座って待っててくれ」
さらに驚いたのは店員さんが持ってきた飲み物がお茶だった…アドニスの方を見ると笑ってる。
ふむ…このまま行けばお茶の文化が広まって美味しいお茶や紅茶の楽しみがふえるかも、とお茶をのんでいるとステーキがドン!っと出てきた。肉の熟成ができたものをステーキでワインと塩、胡椒で味付けしてある。シンプルだが厚みのある肉の旨みがたまらない、ミディアムで焼かれた 肉はきちんと筋に刃が細かく入っていて噛み応えもあるし千切れないこともない…さすが料理人だなぁと感心しつつお米が食べたくなるのは日本人だからだろう、パンとソースを絡めて食べて満足したところにプリンが出てきた…
「ほっほーやるではないか!」
「プリンを出すようになったんですね」
「うん、契約を農家としてな、数量限定だがこれを目当てに女性客が多くなって男性客も芋づる式ってやつだ」
ッハッハッハと豪快に笑っている、レシピよりやはり生の牛乳からのほうが数倍美味しいなぁとプリンを堪能した…
では、出掛けてきますが討伐の依頼だと思うのでと一部の要らない荷物以外を部屋に置き、まず商人ギルドへいってトマスという商人の行方を追ってみた、予想通りというか特徴に当てはまる人物はいなかったためお礼を言って冒険者ギルドに入っていった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「慶司にゃ!」
「やあエイミー久しぶりだね」
「にゃ!ほんと久しぶりにゃ!」
「久しいの! 元気にしてたかエイミー」
「元気だったにゃ!」
「そう言えばマリアさんにも言ってなかったんだけど俺とエル結婚したんだ」
「「エエエエエエエエ!」」
絶叫がギルドホールを駆け抜けた…あのカード記載は何かのミスだと思っていたのに…とか見た目にだまされてたにゃ! でもまだ諦めるのは早いにゃ! とか聞こえる、申し訳ないが諦めて欲しい。
「そ、それはおめでとうございます、で第二婦人はどうするんですか?」
「うん、めでたいにゃ男はやっぱり甲斐性にゃ」
と言われても答えは決まってるのだが
「ッフッフッフ慶司は我が魂の半身となったのじゃ」
エルが惚気てくれて何とかなった…と思いたい慶司である、まあそんな感じで結婚報告をすませた慶司は仕事の話を開始する。
「で、今回の討伐任務で一緒に組むのはエイミーでいいのかな?」
「そうにゃ、ついでにチームにもいれてほしいにゃ」
「それは構わないよ、ねエル」
「うむ、エイミーは我が友じゃ」
「後、二人来る予定ではあるのだけど、全員銅の9なのよ、だから白銀の翼の仕事ぶりを観察すれば後輩育成にもなるんじゃないかなぁなんて!」
「えーっとドヌルって鋼3クラスですよね?」
「ええ」
「流石にキツイのでは?」
「まあ、その怖さを知るのも一つ成長するには必要だと思うのよ」
「一理はありますが腕を見てからでいいですか?」
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「マリア殿!今日のお勧めはありますか!出来れば切る仕事がいいのですが」
「いらっしゃいホメロウ、今日は討伐を受けて欲しいのだけど、その前に試験があるの」
「ほう!何を切れば良いのだろうか…」
「なんだか切る切る言ってるこの人?」
「そう、ホメロウ君、虎紋族の若手」
「頼もう! 本日の修行に参りました!」
「もしかして…」
「おおお! 頼まれよう!」
「ええ、彼女が犬狼族のカミュ聞いての通り修行中」
「で、銅9でか…獲物は何を使ってるの?」
「我輩はこの斬岩剣!」
「ふむふむ大きめのツーハンデッド、グレートソードの分類っと、かなり太さはあるけど鋼じゃないのか…折れるよ?」
「グッフ」
「拙者はこの剣と弓です」
「うーん、体格に比べて剣のサイズが大きすぎるな、弓もだけど家宝かなにかかな?」
「いえ、いずれこのサイズの剣を振るいますゆえ! 弓も修行なれば!」
「よし…突然武器を変えるのも危ないしね…本当は槍か杖を持たせたいけど二人とも使った事は?」
「我輩は剣のみに生きてきた…ゆえに長物は扱っておりませぬ」
「拙者は少しですが槍術をやっておりましたがふらつきますゆえ」
「まず、ホメロウ君、武器一つで冒険はできないよ、周りのサポートがあろうと視野は広げる、そのために今回は7ネルの棒をもって予備としてそのツーハンドも持っていこう。なにそのツーハンドを持てるなら棒でドヌルを殺せるよ。次にカミュさん先ず弓は連射ができるかな?」
「弓は連射はまだきついでござります」
「ふむ、じゃあやっぱり先ずは無理をしないで5ネルの棒にしておこう、それで予備の武器はうーん体型からして両手で使う剣にこだわりがあったりするなら別としてサーベルぐらいでいいと思う。それにナイフだね」
「こだわりは無いのですがお金がないでござる」
「じゃあ、うーん、せめて棒だけでも作ろうかなぁ、まあせっかくだから二人が剣を振ってる型を見ておきたいかな。裏の訓練所つかいますね、エルはグルテンさんのところで1.5セルの槍の柄を7ネルと5ネルの長さに調整してもらって鉄を両端に巻き込みしてもらってきて」
「うむ、任されよう」
「でえええええい! フンスゥ!(ブウウン)」
「せい! ッ、せい!」
「ホメロウ君は力は力任せすぎるかなぁ今ので攻撃を避けられたら攻撃を返せないぐらいに体が流れてる、カミュさんの攻撃も一撃から次の攻撃への連続が厳しそうだね、ちょっと剣を貸してみて、こう…勢いで確かに振る剣だけど使い方によって、ハッセイッフン! 突いていくこともできるなんていったって刀身がこれだけ長いのだからもったいない、あとは剣の重さと振り回したときに生じる遠心力も利用する、最後のはまあ近づいてこられたら蹴りなんかもありだよってことで…」
「ぬうぉぉぉぉ! 師匠!と呼ばせて下さい」
「わ…わ、拙者の刀でも見せて下さい」
「し、師匠はちょっと恥かしいな、両手でみせたほうがいいかな…例えばだけど、こう構えるここからだと剣が見えないから飛び出してくるように見える、これをこう繋いでハッハッハッ! と、あとはこの剣でも突きは有効だと思うよ」
「剣がクルクルと回ってたでござるのに体が揺れてないでござる」
「剣の重さを利用してかなりの手首の力はいるけど西洋剣だったら叩ききるイメージだからこれでいいと思う、でもどちらも敵が人間で防具をつけてたりするとまぁ戦い方も変わるしね、どちらにしろ近接武器は自分も攻撃をもらうから片手で盾のほうがいい、ホメロウ君の場合は体力で全身フルプレートに近くすればいいかもしれない」
「「師匠!」」
このままでは師匠にされてしまう、年齢変わらないのに…そしてそれを見守るエイミーとマリアである…
「よし、それじゃ後は雑貨屋へ行ってその後武器を調達、今日一日は作業をしながら討伐対象を待つよ」
「「はい!」」




